ルーカスと呪われた遊園地(中)

大森かおり

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1 絶対絶命ゴーカート

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 朝食後は、洗濯や掃除といった、家事を分担して行うことになり、皆、それぞれの持ち場で家事をしていた。
 京一と久遠の二人はというと、小屋の掃除担当になったため、もくもくと床を、雑巾で磨いていた。
 その時、久遠は床を磨きながらも、朝食前、ルーカスに待ち受け画面を見られたことについて、一人で思い悩んでいた。朝食を食べている間は、なんとか気にしないように、平常心を保つことだけを心がけていたが、いまになって、見られたという恥ずかしさと動揺が、心の中で、ドッと押し寄せてくるようだった。
 なぜ、たかだか待ち受け画面で、こんなにも頭を悩ませているのかというと、その待ち受け画面にしていた写真が、乙葉が一人で写っている、顔の写真だったからだ。
 久遠は心の底から後悔していた。それは、誰かに見られる危険性があることをわかっていながら、待ち受け画面にしてしまったことをだ。
 待ち受け画面を誰かに見られる前に、すぐに変えようとは思っていた。思ってはいたけれど、以前に、乙葉と一緒に撮った写真を見るたびに、嬉しくなって、つい、待ち受け画面のままにしてしまったのだ。いつもは家にいるから、人にその画面を見られる心配はなかった。学校にいても、話す人は乙葉しかいないため、スマホを出さなければ、見られることはなかった。
 つまり、この遊園地にきてから、つい油断をしてしまったというわけだ。しかし、この待ち受け画面がバレない努力を、まったくしていなかったわけではない。
 いつもスマホを裏向きにしたり、人に見られないところでスマホを開いたり、ここにきてからいろいろ努力はしていたつもりだった。
 だけど、詰めが甘かった。まさか、スマホをテーブルに置いて、目を離したほんの一瞬の隙に、ルーカスに盗られてしまうなんて、思いもしなかったからだ。
 まったく、どうしてスマホを、テーブルになんて置いてしまったんだろう。あの時、テーブルになんて置かずに、肌身離さず持っているべきだったのに。いや、それより最もいい方法は、ここにきた時点で、待ち受けを変えるべきだった。
 久遠類、十七歳、一生の不覚。
 でも、見られたのがルーカスでよかった。もしそれが、ほかの三人だったらと考えたら、きっとひどく気持ち悪がられた上に、軽蔑もされていたにちがいない。そうなったら、その日はおそろしくて、夜も眠れないだろう。
 幸いにも、ルーカスはいまのいままで、皆になにも言わないでいてくれている。そのことに感謝をしつつも、自分の警戒心のなさに、久遠はどうしても、悔やまずにはいられなかった。
 久遠が、一人でそんなことを考えていると、
「おい、久遠。手が止まってるぞ」と、京一が注意した。
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