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3 洞窟のポワロウ
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「それで今日はいったい、なんの獲物を探しているっていうんだ?」
ポーマスは続けて、乗り気になって言った。
しかし、その問いに、すぐには答えたくなかったスーバは、すこし間を空けてから、
「人間だ」と、道をあけようとしないポーマスを見ながら、諦めたようにそう言った。
「なあ、もういいだろう、いい加減そこをどけ」
痺れを切らしたように、スーバが言うと、
「そうか、人間か」と、なにかを企んでいるような顔をしながら、ポーマスが言った。
「面白そうだ。なら、俺も連れていってくれよ、兄貴」
体を小刻みに、上下に動かしつつ、腕を振りふりさせながら、ポーマスが言った。
「お前を? 誰が」
スーバは、一瞬ぎょっとしたあと、外方を向いて言った。
「いやだって言っても、俺はついていくぜ」
そう言うとポーマスは、スーバの背中に回り込むと、背中の上に、勝手に、ぴょんと、飛び乗り出した。
「さあ、進め! すぐにだ!」
前方を前足でさしながら、まるで馬に乗っているように、後ろ足で、スーバの背中を蹴りつつ、人間のいそうな場所まで行くように、促した。
「お前、ふざけるなよ。本当だったら、お前もすぐに食べていたところなんだからな。それを食べないのは、俺が、俺が本当は……」
スーバは途中で、声のトーンを落としながら下を見て、言葉に詰まった。
「世界一気の弱いくまだから」
ポーマスが、スーバのあとを受けた。
「はっはー! 本当はお前、人間も動物も、一度も殺したことがない臆病者なんだよな。道で出会った獲物は、とりあえず追いかけ回すだけ追いかけ回す。たのしいからな。でも絶対に殺しはしない。いいや、できないんだ。知ってるぜ、俺は。それなのに、見た目だけはいつもこわそうに装ってる。まったく本当に、変わったくまだよ、お前は」
お腹を抱えて大笑いしつつ、冗談めかして、スーバの背中を叩きながら、ポーマスが言った。
すると、これまで強そうに見えたスーバだったのに、急に、頼りないような、弱々しい見た目に変わると、
「はあ、それを言うなって……」と、がっかりしながら言った。
ポーマスは続けて、乗り気になって言った。
しかし、その問いに、すぐには答えたくなかったスーバは、すこし間を空けてから、
「人間だ」と、道をあけようとしないポーマスを見ながら、諦めたようにそう言った。
「なあ、もういいだろう、いい加減そこをどけ」
痺れを切らしたように、スーバが言うと、
「そうか、人間か」と、なにかを企んでいるような顔をしながら、ポーマスが言った。
「面白そうだ。なら、俺も連れていってくれよ、兄貴」
体を小刻みに、上下に動かしつつ、腕を振りふりさせながら、ポーマスが言った。
「お前を? 誰が」
スーバは、一瞬ぎょっとしたあと、外方を向いて言った。
「いやだって言っても、俺はついていくぜ」
そう言うとポーマスは、スーバの背中に回り込むと、背中の上に、勝手に、ぴょんと、飛び乗り出した。
「さあ、進め! すぐにだ!」
前方を前足でさしながら、まるで馬に乗っているように、後ろ足で、スーバの背中を蹴りつつ、人間のいそうな場所まで行くように、促した。
「お前、ふざけるなよ。本当だったら、お前もすぐに食べていたところなんだからな。それを食べないのは、俺が、俺が本当は……」
スーバは途中で、声のトーンを落としながら下を見て、言葉に詰まった。
「世界一気の弱いくまだから」
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「はっはー! 本当はお前、人間も動物も、一度も殺したことがない臆病者なんだよな。道で出会った獲物は、とりあえず追いかけ回すだけ追いかけ回す。たのしいからな。でも絶対に殺しはしない。いいや、できないんだ。知ってるぜ、俺は。それなのに、見た目だけはいつもこわそうに装ってる。まったく本当に、変わったくまだよ、お前は」
お腹を抱えて大笑いしつつ、冗談めかして、スーバの背中を叩きながら、ポーマスが言った。
すると、これまで強そうに見えたスーバだったのに、急に、頼りないような、弱々しい見た目に変わると、
「はあ、それを言うなって……」と、がっかりしながら言った。
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