妖精たちと出会った日

大森かおり

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1 ほかほかのパンプキンパイはいかが?

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 すると、キコリにそう尋ねられた木の妖精は、きょとんとしながら、
「え? 君、ひょっとして、僕に聞いているのかい?」と言った。
「そうよ。ほかに誰がいるっていうの?」
 腰に手を当てながら、キコリが言った。
「おっと、それもそうだね」
 うっかりしていたというように、口に手を当てながら、木の妖精が言った。
「僕は、カポックと言うんだ」
 木の妖精、カポックは、今度は胸に手を当てながら、自己紹介した。
「普段は暇だからこうやって、パイを作って売り歩いているんだけど、ちょっと迷ってしまったみたいでね」
 そう言うとカポックは、照れたように、頬をぽりぽりとかいた。
「あら、びっくり。ひょっとしてあなた、迷子だったの?」
 まさかと思いながら、キコリが言った。
「恥ずかしい話、そうなんだ」
 顔を真っ赤にしたカポックが、キコリたちから、目を逸らしながら言った。
「ああ、やっぱり、そうじゃないかと思ったんだ」
 おばあちゃんが、同情しながら言った。
 カポックは、おばあちゃんの言うことを聞いて、目を泳がせた。
「でも、私たちよりも森に詳しいはずの木の妖精が、森で迷子なんて、なんだかおかしな話だわ」
 あきれてキコリが言うと、カポックは、ますます照れて、バツが悪そうに下を向き、ついに黙り込んでしまった。
「かわいそうだねえ。なんとかしてあげたいけど……あたしじゃなにもねえ」
 誰にでも親切なおばあちゃんはそう言いながら、カポックを、心底あわれみを込めた目で見つめた。
 すると、これまでひたすら、照れるだけだったカポックは、急に、立ち直ったかのように、堂々と胸を張りながら、前を向くと、
「別に、おばあさんたちに助けてもらわなくても、大丈夫さ。自分でどうにかするから」と言った。
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