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43話 猫諸国連合
しおりを挟む⸺⸺パラディリア城 応接間⸺⸺
「やー、みんなすごかった……」
ボクは頭がいっぱいいっぱいで机に突っ伏す。
思ったよりも情報量や衝撃が多すぎて、1日ずつに分ければ良かったとさえ思う。
「レクス以外、皆子沢山であったな」
ルナはそう言ってクスクスと笑っている。
「お、おい、貴様ら結局、30人一気のやつ見たのか……!?」
アビスは情報が処理しきれないくせに気にはなるようでまだその話題を引きずっている。
「見たと言ったらどうする?」
ルナが意地悪な顔でそう問い返す。
「な、何!? みみみみ見たのか!?」
アビスは顔を真っ赤にして震えていた。
「それはもうすんごかったぞ? ぼんきゅっぼんのおなごが一斉にナーガにのう……」
「あああああああっ……!」
アビスは再び倒れた。
「あぁ、もう……ルナったら……」
ボクはアビスを応接間のソファへ寝かせる。
「ワシ、見せてないよ?」
と、ナーガ。
「うむ、少々アビスをからかっただけじゃ」
ルナは満足そうに笑っていた。
「見せると、からかいになるの? もしかして、ワシが知らない間にからかったせいで、さっきもアビス、倒れちゃったの?」
ナーガは少しだけ驚いている。
「まぁ、そんな感じだね……」
と、ボク。
「そっか、アビス、さっきはごめん……」
⸺⸺
アビスが意識を取り戻したところで、ボクたちはようやく本題に入ろうとしていた。
「えっと、ボクたちは、このパラディース島と、魔界、天空の島ルフトインゼル、そしてアメノカク諸島。この4つの島を治める長となった」
みんなはうんうんと頷く。
「まだこれから発展させていきたいところもたくさんあって大変だと思うけど、だからこそボクはここで提案したい」
ボクはここで一息つく。
「ボクたち猫王の4人で、“猫諸国連合”を締結しない? 常にお互いに助け合って、譲り合って、発展させていくための連合にする予定」
「……」
みんなは沈黙する。
あれ!? ボクの提案間違ってた!?
「あ、あれ……あ、ごめん、みんな大変で、それどころじゃないかな……」
ボクがそう言ってシュンと俯くと、みんなは一斉に笑いだした。
「え? なになに?」
戸惑うボク。
それに対しアビスが口を開いた。
「ふはははは、貴様、何を言い出すかと思えば……」
「レクスよ、それは……」
と、ルナ。ナーガが続く。
「もうとっくにワシらそういう関係……」
「あ、そうなんだけど……ちゃんと正式に形にしたくて」
ボクがそう言うと、みんなは揃って微笑んだ。
「そういうことなら、結んでやらんこともないな!」
と、アビス。
「うむ。形として残すのも大事なことじゃな」
と、ルナ。
「じゃ、締結しよう」
と、ナーガ。
「な、なんだ、いいのかぁ。みんな嫌なのかと思ってビックリしちゃったよ……」
ボクがそう言うと、またみんなは大笑いをした。
「そんな訳がなかろう!」
「妾は何を今更水臭いことを、と考えておったのじゃ」
「ワシも……」
「なんだよもう……。じゃぁ、ここに“猫諸国連合”を締結します!」
みんなで順番に魔法紙に肉球の印を押していく。
そしてみんなでグータッチをして、ここに晴れて“猫諸国連合”が締結されたのであった。
⸺⸺⸺
⸺⸺
⸺
それから半年に1回のペースで猫諸国連合会議が開かれ、その度にみんなはパラディリア城へと集まって、お互いの近況を報告し合った。
そしてボクがちょっと不安だった、ボクたちやその子孫の寿命は、普通の猫の寿命を遥かに飛び越えて、むしろヒュナム族よりも長生きするくらいだった。
特にボクたち猫王の4人はスキルの影響なのかは分からないけど、何百年と生きている。
国の経営は子孫たちに任せて、今はのんびりと猫としての生活を満喫している。
勿論、半年に1回の会議は必ず開き、パラディリア城のバルコニーでみんなで日向ぼっこをしている。
勿論、猫の姿で。そして、何百年経っても変わらない美味しさの高級カリカリ御膳を頬張りながら。
今もその会議という名の日向ぼっこ中で、半年分の色んな話をたくさんして、それが楽しくておかしくて、ボクは泣きながらたくさん笑った。
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