29 / 44
29話 使い魔の契約
しおりを挟む俺様は深淵の覇者、魔王アビス。
100の下僕と共にこの漆黒の領域“カオスキングダム”へ移住をしてもうすぐで2か月となる。
先月は竹猫の友レクスが2人のメスと結婚をした。
魔王である俺様に結婚など不要。俺様には下僕がいれば十分だからな。
そんな100の下僕共へ俺様の力を分け与えるため、全員と使い魔の契約を行った。
俺様の魔力で生み出す使い魔とは違い実体はあるが、これで下僕らも俺様の漆黒の闇の中を自由に行き来できるようになった。
つまり地中を行き来できるということだぞ。付いてきているかそこのお前。
今日も一通りパトロールを終えるとカオスキングダムの中心地へと行き、噴水の縁へどかっと腰掛ける。
ふと噴水の水辺に写る俺様の人としての姿を見るが……やはりイケているな。
俺様自分で言うのもなんだけどイケメンだと思うんだ。
そんな自分に見惚れていると、下僕の1匹である小悪魔のコモリィが俺様の目の前の地面からうにょーんと顔を出した。
「魔王アビス様! ご報告があります!」
「何だ、申せ」
「深淵の世界にいる魔物たちがアビス様の使い魔になりたいと申しております!」
何、ちょっと待って深淵の世界って何?
俺様、深淵深淵っていつも言ってるけど、本当にそんなものがあるなんて思ってないからね?
「……とりあえずその魔物とやらをここへ連れてこい」
「それが……深淵の魔物は地上界には出られないようなのです」
えぇ……どゆこと……?
「何故、出られない?」
「はい、漆黒の気配が薄過ぎるからです。このカオスキングダムでもまだ薄いようです」
「つまり、俺様がその深淵の世界へ出向けば良いと言うことか?」
「はい、もし宜しければですが……。1度使い魔の契約をしてしまえば、その者たちも地上と深淵を自由に行き来ができるようになるはずです」
「ならば、とりあえず俺様をそいつの元へと案内しろ」
「はい、こちらからどうぞ」
そう言ってコモリィは再び地面の黒いドロドロの中へと消えていった。
こちらからどうぞだって?
この黒いドロドロって何なんだろうってずっと思ってたけど、この下に深淵の世界っていうのが広がってるの?
え……俺様ここ入るの?
やだぁ、ちょっと怖い……。
はっ、いかんいかんこんなことでは。レクスに笑われてしまう。
俺様は意を決してそのドロドロへ足を踏み入れた。
⸺⸺トプンッ⸺⸺
⸺⸺魔王アビスの深淵⸺⸺
ちょ、脳内に勝手にここの名前が……。アビスの深淵って何だよ。つまり“深淵の深淵”、または“アビスのアビス”ってことじゃないか。
それにしてもここは一体何なのだ。黒いモヤモヤした石のレンガで作られた通路が広がっている。
まるで暗い城のようだ。
俺様の少し前を歩くコモリィを追いかけてその通路を進むと、少し広めの部屋へと辿り着いた。
そこには、他の下僕共や魔物のような奴らがたくさんいた。
その魔物は地上で見る魔物とは違い、どうやらちゃんと実体があるようだ。
「アビス様、この者たちです」
コモリィがそう言ってその魔物共を指差す。
「アビス様初めまして」
「アビス様お邪魔してます」
それは狼のような見た目であったり、スライムのような見た目のものもいる。
本当に地上にいる魔物共が実体化しているような感じであった。
「お前らは……一体何者だ?」
俺様はとりあえず尋ねてみる。
「僕たちは魔界に住むはぐれ魔族です。どの魔王様の使い魔にもなることができず、地上へ押し出されてしまいそうになったところ、こちらの深淵へと迷い込みました」
スライムの魔物がそう答えた。
「ど、どの魔王様って何!? 他にも魔王がいんの!? 魔界って何!?」
はっ、俺様としたことがついうっかり取り乱してしまった。
「え……あなた様は、魔界の出身ではないのですか?」
と、スライムの魔物。
ここでコモリィが口を挟む。
「アビス様や僕たちは、普段は地上界に住んでいるんだよ」
「ええ、地上界でも姿形が保てて呼吸ができるのですか!? す、すごいです……やっぱりアビス様の使い魔になりたいです~!」
「なりたぁい!」
魔物共は勝手に盛り上がり始める。
「で、魔界って?」
俺様はウズウズしながら話を戻す。
するとスライムの魔物がすぐに答えてくれた。
「は、すみません僕たちだけで盛り上がってしまって……。魔界は地上界の裏にある世界です。僕たちのような見た目の“魔族”と、あなた様のような人型の種族“デーモン族”が住んでいます。魔王様とは、そのデーモン族の中でもたくさんの使い魔と契約をした方々のことを言います」
「マジでそんなのいるのか……」
はっ、いかんいかん。魔王キャラを忘れてマジな反応をしてしまった。
ってか、待てよ。つまりこいつらと契約していけば俺様は本当の魔王になれるということか……!
「まぁ、お前ら契約できなくて困っているのであろう? ならば全員まとめて俺様が契約してやる」
俺様がそう言うとその場にいた魔物らは皆一様に喜んでいた。
⸺⸺
「我が血の刻印をその身に刻み、汝、我が使い魔としての契を此処に交わさん……」
俺様が指先から血を一滴魔物へ垂らすと、魔物の首元によく分からない刻印が刻まれる。
猫共にも同じ刻印が刻まれたが、俺様はイマイチなんでその形なのかは分かっていない。
どうやら契約は全員上手く行ったようで、魔物らは皆喜んでカオスキングダムへと進出していた。
俺様はこの時確かに、俺様の中の冥属性の魔力が膨れ上がるのを感じた。
確かにこの契約をもっともっと結んでいけば、俺様の力をもっと高めることができそうだ。
そのため俺様はこのよく分からない空間、“魔王アビスの深淵”でコツコツと使い魔の数を増やしていくことにした。
10
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説

俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
HEAD.HUNTER
佐々木鴻
ファンタジー
科学と魔導と超常能力が混在する世界。巨大な結界に覆われた都市〝ドラゴンズ・ヘッド〟――通称〝結界都市〟。
其処で生きる〝ハンター〟の物語。
残酷な描写やグロいと思われる表現が多々ある様です(私はそうは思わないけど)。
※英文は訳さなくても問題ありません。むしろ訳さないで下さい。
大したことは言っていません。然も間違っている可能性大です。。。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる