【完結】野良猫無双〜異世界転移したチートスキル所持のクセ強の野良猫✕職人タッグの開拓ライフで猫が一国の王となる〜

るあか

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29話 使い魔の契約

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 俺様は深淵しんえん覇者はしゃ、魔王アビス。

 100の下僕しもべと共にこの漆黒しっこくの領域“カオスキングダム”へ移住をしてもうすぐで2か月となる。

 先月は竹猫たけねこの友レクスが2人のメスと結婚をした。

 魔王である俺様に結婚など不要。俺様には下僕しもべがいれば十分だからな。

 そんな100の下僕しもべ共へ俺様の力を分け与えるため、全員と使い魔の契約を行った。
 俺様の魔力で生み出す使い魔とは違い実体はあるが、これで下僕らも俺様の漆黒の闇の中を自由に行き来できるようになった。

 つまり地中を行き来できるということだぞ。付いてきているかそこのお前。


 今日も一通りパトロールを終えるとカオスキングダムの中心地へと行き、噴水のふちへどかっと腰掛ける。
 ふと噴水の水辺に写る俺様の人としての姿を見るが……やはりイケているな。
 俺様自分で言うのもなんだけどイケメンだと思うんだ。


 そんな自分に見惚みとれていると、下僕の1匹である小悪魔のコモリィが俺様の目の前の地面からうにょーんと顔を出した。

「魔王アビス様! ご報告があります!」

「何だ、申せ」

深淵しんえんの世界にいる魔物たちがアビス様の使い魔になりたいと申しております!」

 何、ちょっと待って深淵の世界って何?
 俺様、深淵深淵っていつも言ってるけど、本当にそんなものがあるなんて思ってないからね?

「……とりあえずその魔物とやらをここへ連れてこい」

「それが……深淵の魔物は地上界には出られないようなのです」

 えぇ……どゆこと……?

何故なぜ、出られない?」

「はい、漆黒の気配が薄過ぎるからです。このカオスキングダムでもまだ薄いようです」

「つまり、俺様がその深淵の世界へ出向けば良いと言うことか?」

「はい、もし宜しければですが……。1度使い魔の契約をしてしまえば、その者たちも地上と深淵を自由に行き来ができるようになるはずです」

「ならば、とりあえず俺様をそいつの元へと案内しろ」

「はい、こちらからどうぞ」
 そう言ってコモリィは再び地面の黒いドロドロの中へと消えていった。


 こちらからどうぞだって?


 この黒いドロドロって何なんだろうってずっと思ってたけど、この下に深淵の世界っていうのが広がってるの?

 え……俺様ここ入るの?

 やだぁ、ちょっと怖い……。


 はっ、いかんいかんこんなことでは。レクスに笑われてしまう。

 俺様は意を決してそのドロドロへ足を踏み入れた。


⸺⸺トプンッ⸺⸺



⸺⸺魔王アビスの深淵⸺⸺

 ちょ、脳内に勝手にここの名前が……。アビスの深淵って何だよ。つまり“深淵の深淵”、または“アビスのアビス”ってことじゃないか。

 それにしてもここは一体何なのだ。黒いモヤモヤした石のレンガで作られた通路が広がっている。

 まるで暗い城のようだ。

 俺様の少し前を歩くコモリィを追いかけてその通路を進むと、少し広めの部屋へと辿たどり着いた。


 そこには、他の下僕共や魔物のような奴らがたくさんいた。

 その魔物は地上で見る魔物とは違い、どうやらちゃんと実体があるようだ。

「アビス様、この者たちです」
 コモリィがそう言ってその魔物共を指差す。

「アビス様初めまして」
「アビス様お邪魔してます」

 それは狼のような見た目であったり、スライムのような見た目のものもいる。
 本当に地上にいる魔物共が実体化しているような感じであった。

「お前らは……一体何者だ?」
 俺様はとりあえず尋ねてみる。

「僕たちは魔界に住むはぐれ魔族です。どの魔王様の使い魔にもなることができず、地上へ押し出されてしまいそうになったところ、こちらの深淵へと迷い込みました」
 スライムの魔物がそう答えた。

「ど、どの魔王様って何!? 他にも魔王がいんの!? 魔界って何!?」

 はっ、俺様としたことがついうっかり取り乱してしまった。

「え……あなた様は、魔界の出身ではないのですか?」
 と、スライムの魔物。
 
 ここでコモリィが口を挟む。
「アビス様や僕たちは、普段は地上界に住んでいるんだよ」

「ええ、地上界でも姿形すがたかたちが保てて呼吸ができるのですか!? す、すごいです……やっぱりアビス様の使い魔になりたいです~!」
「なりたぁい!」

 魔物共は勝手に盛り上がり始める。

「で、魔界って?」
 俺様はウズウズしながら話を戻す。

 するとスライムの魔物がすぐに答えてくれた。
「は、すみません僕たちだけで盛り上がってしまって……。魔界は地上界の裏にある世界です。僕たちのような見た目の“魔族”と、あなた様のような人型の種族“デーモン族”が住んでいます。魔王様とは、そのデーモン族の中でもたくさんの使い魔と契約をした方々のことを言います」

「マジでそんなのいるのか……」

 はっ、いかんいかん。魔王キャラを忘れてマジな反応をしてしまった。

 ってか、待てよ。つまりこいつらと契約していけば俺様は本当の魔王になれるということか……!

「まぁ、お前ら契約できなくて困っているのであろう? ならば全員まとめて俺様が契約してやる」

 俺様がそう言うとその場にいた魔物らは皆一様に喜んでいた。


⸺⸺

「我が血の刻印をその身に刻み、なんじ、我が使い魔としてのちぎり此処ここに交わさん……」

 俺様が指先から血を一滴魔物へ垂らすと、魔物の首元によく分からない刻印が刻まれる。
 猫共にも同じ刻印が刻まれたが、俺様はイマイチなんでその形なのかは分かっていない。

 どうやら契約は全員上手く行ったようで、魔物らは皆喜んでカオスキングダムへと進出していた。


 俺様はこの時確かに、俺様の中の冥属性の魔力が膨れ上がるのを感じた。
 確かにこの契約をもっともっと結んでいけば、俺様の力をもっと高めることができそうだ。

 そのため俺様はこのよく分からない空間、“魔王アビスの深淵”でコツコツと使い魔の数を増やしていくことにした。





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