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24話 王たちの覚醒
しおりを挟むたくさんの猫たちがご飯の余韻から復活する頃、その時は訪れる。
「む、レクス、貴様身体が透けてきているぞ?」
アビスにそう言われて自分の身体を見てみると、確かに透けている。
「えっ、ホントだ! って、アビスもルナもナーガも!」
「ぬおっ」
「これは……」
「ま、眩しい……」
周りの猫や人間たちもボクたちを見てパニックになっている。
ボクたちはみんな身体が透けてきたかと思うと、全身が強い光に包まれた。
みんな咄嗟に目を閉じる。
⸺⸺⸺
⸺⸺
⸺
「ん……収まったかな」
光が収まりボクが目を開けると、そこには腰を抜かした猫や人間たちがいた。
ん? そう言えばなんか視線が高いような……。
「レ、レクス様、皆様、お姿が……!」
そうアンナが声を絞り出す。
「ん? 姿?」
ボクが首を傾げていると、フェリクスが慌てて姿見を持ってきた。
その鏡に写し出されていたのは……。
「えっ、人間!?」
そう、人間の姿になったボクだった。
「ど、どどどどういうこと!?」
ハチワレ猫だったボクは黒の髪に白いメッシュが入った短髪に。
顔は凛々しく、元猫であったボクから見てもわかる、イケメンだ。
耳は猫耳が頭についていて、尻尾も生えている。
王のローブはちゃんと人間サイズに拡大されており、恥ずかしいことにはなっていなかった。
ボクは自分の手のひらを見つめてグーパーを繰り返す。
これが人間の手。すごい細かく動かせる。すごいや。
「あっ、みんなは!?」
ボクはハッとしてみんなを見てみる。すると、ボクと同じように人間の姿になったみんながそこにいた。
アビスは元々白猫で尻尾だけ黒かったため、銀髪に黒のメッシュ。ボクと丁度逆だ。
ルナは三毛猫だったから、白とオレンジ色と茶髪のトリプルカラーのストレートロングに。スタイルはぼんきゅっぼん。
ナーガは茶トラだったため栗色と茶髪のツートーン。1番年配で大人の威厳がある。
「これが俺様の、人としての姿……」
「やはりこの時が来たか……」
「ワシ、カッコイイ……」
みんなまだ自分を受け入れるのに必死だ。
⸺⸺
そしてみんなでそれぞれお披露目会が終わったところで、仕切り直す。
「何で急に人の姿になったんだろう?」
と、ボク。それに対しフェリクスが答えてくれる。
「考えられるのは、皆たくさんの配下ができたからだろうね。このたくさんの猫たちが、君らの覚醒を促したんだ」
「おぉ、これは覚醒なのか……!」
と、アビス。嬉しそうだ。
「ちょっと猫耳残っちゃってるし、角や翼も残ってるけど、これならぱっと見人間だから自由に町を歩けそうだよね」
「うむ、そうじゃな」
ボクの提案にルナが賛同してくれる。
「あっ、戻ろうと思えば戻れる」
ナーガはそう言ってしゅるしゅると小さくなり、猫の姿へと戻った。
「おお、どっちの姿にもなれるのか!」
ボクがワクワクして猫になったり人間になったりしていると、他の3匹も同じように猫と人間を行ったり来たりしていた。
そんなボクたちを見ていた猫や人間たちも「わぁ、すごい!」と歓声を上げる。
そんなみんなへボクは感謝の言葉を述べた。
「みんなのお陰でボクたちは人間の姿へと覚醒することができた! ボクたちはずっとこの姿に憧れていたんだ。ありがとう!」
みんなは拍手喝采で返事をしてくれた。
「ところで、ボクのこの姿、どう?」
ボクは1番感想を聞いてみたかったアンナへ問いかける。
するとアンナは真っ赤な顔を手で覆った。
「と、ととととてもカッコイイですぅ……! ふぇぇ……」
アンナはそのまま沸騰してその場に倒れた。
「アンナ!?」
「フェリクス、どうじゃ、人としての妾は」
と、ルナ。
「あぁ、とても美しいよ……」
フェリクスはそう言ってルナを抱きしめた。
あれ!? ここもうデキてる!?
⸺⸺
それから配下の猫たちには2、3階で自由に寛いでもらって、ボクたち4人とフェリクス、ウォルト、アンナ、そして『猫吸い』のメンバーで宴を行った。
「ボクたちの人間としての覚醒を祝して、かんぱーい!」
「かんぱーい!」
キンッとグラスが重なり合い、みんな恐る恐る酒を口にする。
「え、苦いっ!?」
忘れていた。
猫は、苦いのが苦手だった……。
元猫たちが慌てて吹き出す仕草に、人間たちはみんな大笑いだった。
「はっはっは、まだまだおこちゃまだな!」
ウォルトはそう言って自分の持っていた酒を豪快に飲み干す。
うわぁ、ちょっとカッコイイ。
「レクス様、こちらの果実樹は甘くて美味しいですよ」
と、アンナ。
「え、本当……?」
ボクは半信半疑でアンナから差し出されたグラスを受け取り一口飲む。
すると、甘い果実の香りが口いっぱいに広がっていった。
「お、美味しい! これなら飲めるぞ!」
ようやくボクにもお酒の美味しさが分かった瞬間だった。
⸺⸺
そして初めて味の付いた料理や食べたことのない野菜を口にして、これはこれで美味しくてほっぺが落ちそうだった。
たらふく食べて飲んで朝までワイワイ過ごし、猫に毒なものを食べて異常がなかったかどうか、獣医と医者の両方に診てもらった。
すると、猫の姿でも人の姿でも特に異常は無く健康そのもので、人の姿の時なら人が食べるものを食べられるのだと知った。
そんなこんなでボクたちは、人の上に立つべき王として成長したのである。
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