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20話 王都の現状

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⸺⸺オアシスの町⸺⸺

「おい、何があった!?」
 ウォルトが人混みに向かって尋ねる。

「あ、あなたは……ウォルト将軍! それにフェリクス将軍も!」
 そう言って人混みの中から一人のヒュナム族のオスがい出て来る。
 将軍? 2人って将軍だったの!?

「お前は、アラン大佐か! ちょっとこっち来い、話を聞かせてくれ」
「はい、勿論もちろんです!」

 ウォルトがアランを抱え、ボクたち一同は話を聞くためパラディリア城へと帰還した。



⸺⸺パラディリア城⸺⸺

「レクス様、皆様もおかえりなさい!」
 アンナがとびきりの笑顔で出迎えてくれる。

「ただいまアンナ、お客さんに紅茶をお出しして」
「は、はい! 何やら緊急事態なのですね、すぐにご用意します」
 アンナはバタバタとキッチンへ向かった。


 アランを応接間へと案内し、ボクたちの存在と、島の西側の現状を彼へと伝える。

 そしてみんなの紅茶をれてくれたアンナを輪に加えて、アランの話を聞くこととなった。

 ちなみにアンナがクラフトをしてくれて、ボクたちには猫でも飲める紅茶“キャットティー”を出してくれている。


 アランが口を開く。
「今朝の出来事です。北の鉱山から、突如魔物の大群が王都へと押し寄せてきました」

「なるほど、あれは国側にも行ってたのか……」
 と、ウォルト。

「アラン、王都の結界はどうなってる?」
 フェリクスが問う。

「はい、最近の王都は圧倒的な職人不足で、結界技師もちゃんとした人がおらず、メンテナンスをおこたっていたせいか、あっという間に突破されてしまいました」

「わぁ、ここへきて暴君ぼうくんの付けが回ってきてるね……」
 ボクはそうならないように、と隣国の暴君を反面教師にすることにした。

「その愚王ぐおうはどうなった? まさかこっちに逃げてきているのではあるまいな?」
 と、アビス。

「それが……ネロ国王は、誰かが城を守ってくれると思っていたみたいで、いつも通り城で朝食を取ろうとしていたようです……」
 アランは苦い顔でそう答えた。

「誰かが守ってくれたのか?」
 ウォルトが尋ねる。それに対しアランは首を横に振った。

「いえ、今までの平和な状態であれば、我々も我慢して仕えていたのですが、こう緊急事態となると、城の者も皆一目散に王都から逃げ出しました……ですので、正直ネロ王がどこでどうしているのか誰にも分からないのが現状です……」

「ふん、ざまあ!」
 アビスはご機嫌でフレーメンの顔になる。
 ちょっと不謹慎ふきんしんだけど、アビスの暴君をあおるようなその表情にボクは軽く吹き出してしまった。


「そのネロとやらは置いておくとして、こうなった以上、王都の様子を見に行った方が良いのではないか?」
 と、ルナ。

「そうだね、誰か逃げ遅れた人が建物に隠れて取り残されたりしているかもしれないしね」
 ボクがそう言うと、みんなうんうんとうなずいて賛同してくれた。


⸺⸺

 ボクは急遽きゅうきょ王都救出部隊を編成する。

 自警団は未だに北の山脈から湧き出る魔物の討伐にあたってもらっていたため、ウォルトを自警団に戻し、その指揮にあたってもらった。

 王都救出部隊のメンバーは猫組4匹にフェリクス率いる魔道隊、それから辺境出身のプラム族で構成されたプラム隊。
 そして、力自慢のオーガ隊。

 このメンバーで王都へと出撃した。


 ボクたち猫組がプラム隊を率いて上空から先行する。

 高い城壁を越えると北の方に大きな王都が見えてくる。
 かなりの大きさだ。これはきっと先代の王が築き上げてきたもの。
 それをネロ王とか言うのがたったの5年でダメにしてしまったということだ。


⸺⸺王都跡⸺⸺

 その広大な王都は、あちこちに魔物が蔓延はびこっていた。

 ここまで築くのはかなりの年月が必要だったはずなのに、崩れるのは一瞬なんだなとボクは思った。

 建物の中に人がいるかもしれないので、建物を破壊しないよう慎重に魔物を討伐していく。

 プラム隊が建物へ呼びかけながら王都中を飛び回っていると、やがてポツポツと助けを求める声が上がり始めた。

「た、助けてくれー!」
 建物の2階のベランダから顔をのぞかせる人。

「うちの子が瓦礫がれきの下敷きになって動けないの!」
 なんとか我が子を救わんとする人。

「ひぃぃぃ……」
 今にも魔物に襲われそうになっていて腰を抜かす人。

 ボクたち猫組はプラム隊のサポートに回り、なんとか見つけた人々は全員助け出すことができた。

 後から追いついた魔道隊とオーガ隊によって人々の傷の回復や国境までの護衛が行われた。
 そして念の為、オーガ隊のみんなで瓦礫がれきの下も全部見てみようかと相談していた⸺⸺


⸺⸺その時だった。


「レクス! 貴様今すぐにありったけの白の領域を展開しろ!」
 アビスの今までにないほどの緊迫した叫び。

 ボクは咄嗟とっさに周りにいた人を全員囲めるほどの大きな白の領域を張った。

⸺⸺白の領域⸺⸺


⸺⸺ゴゴゴゴゴゴ……⸺⸺

 ボクが白の領域を張った瞬間、王都周辺に突然大きな地震が起こる。

 そして、王都の地面から大量の真っ黒な霧が噴き上がった。




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