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14話 深淵の覇者
しおりを挟む国境までの街道『オアシス街道』が整備されると、早速嬉しい来客があった。
それは、魔具の作成や結界の整備を得意とするドワーフ族と、魔導の扱いが得意なマキナ族の総勢1000人を超える小人たちであった。
そんなにもたくさんの住民が一気に増えたのに、みんなすぐに住居を確保でき、職人ギルドにも入ることができた。
これは色んなギルドがこういう日を想定して準備を進めてくれていた結果であり、ボクは町のみんなに感謝した。
この日を堺に町は勿論のこと、他の猫達に任せていた土地の開拓も更に急加速していった。
みんなの「一度見に来てほしい」という言葉を聞きワクワクしてしまったボクは、フェリクスとアンナを連れて、順番に回ることにした。
ちなみにアンナは魔導具の“ホバーウィングス”という翼を背中につけているため、ボクたちと一緒に飛んでついてくることができた。
⸺⸺アビスのギルド『深淵の覇者』⸺⸺
アビスに案内されたのは、始まりの迷宮プリムスアビスではなく、
『最強の迷宮フォルティアビス』
だった。
プリムスアビスはもうアビスがいなくてもギルドのメンバーだけで攻略可能なため、人間たちに任せているとのことであった。
そして、このフォルティアビスは森と高原の境目に出現し、アビスが使い魔を召喚しつつ1匹で攻略したとのことであったが……。
もう攻略済だからか、たくさんのギルドメンバーが素材を持ってダンジョンから出てくる。
魔導圧縮という技術が導入されて、素材を小さく圧縮する袋や箱に入れているため、何が運び出されているのかはよく分からなかった。
「驚け竹猫の友よ!」
えっと、竹馬の友ね。それ久々に聞いたなぁ。
「お二方はタケノコが好きなんですか?」
と、アンナ。ほらね、聞き間違える人がいる。
「ううん、違うよ」
「?」
アンナは頭上にハテナが飛び交っていたので、後で説明してあげることにした。
「この地下迷宮は50階を超える最強の“S級ダンジョン”であった!」
と、アビスがフレーメンで言う。
「S級?」
ボクが首を傾げると、フェリクスが解説してくれる。
「ダンジョンにはボスまでの階層によってランクが決まっているんだ。プリムスアビスは6階層であったため、おそらく下から2番目のE級ダンジョン。S級は1番上のランクで、ランクが高ければ高いほど良い素材が手に入るよ。その分ボスも手強いけど……」
「相変わらず物知りだな貴様は! その通りであるぞ! まぁ、ボスなどワンパンであったがな。はーっはっはっは!」
アビスはそう言って高笑いをしていた。
「すごいねすごいね! どんな素材があったの?」
ボクは気になって前のめりで聞く。
「貴様、知りたいか……?」
アビスはフレーメンになる。
「し、知りたい!」
「どうしても知りたいか?」
「どうしても知りたい!」
「ふっふーん、どうしよっかな~」
「えええええ」
アビスは最近“からかう”ということを覚えてしまったために、ボクは彼に弄ばれることとなる。
でもこれは猫組にしかしないことで、アビス曰く“竹猫の友”へのスキンシップなんだなと思うとちょっと嬉しく、楽しくもあった。
「ふん、仕方がない。貴様にだけは特別に教えてやるぞ」
「やったー」
ボクだけって、ギルドメンバーはもうみんな知ってそうじゃないか。
「1番の成果は、結界に使う“白光魔石”だな!」
アビスがそう自信満々に言うと、ボクはハッとした。
「あっ、そう言えば……最近結界触ってなかったのに、どんどん町の結界が広くなっていった気がする……!」
「ふふん、俺様が白光魔石を手に入れたお陰だぞ。これぞ、迷宮の下の力持ちだ」
と、アビス。えっと、縁の下の力持ちだね。
「ありがとう! 今までボクひとりで結界の水晶に魔力を送ってたから、めちゃくちゃ助かるよ!」
「そうであろう、そうであろう。そしてもう1つ、職人共も皆知らない未知の鉱石を手に入れたのだ」
「ええ!? すごいね!」
「ふふん、この鉱石は、俺様が“ニャンハルコン”と名前を付けた」
「え、アビスにしてはネーミングが可愛いんだけど……」
「もちろんそれは読み方であって、書きは“深淵猫金剛石”と書く!」
「……あっそう」
いつも通りであったことにちょっと安心すらしてしまうボクであった。
ちなみにこういうことね……。
“深淵猫金剛石”
そのニャンハルコンはかなり希少らしく少ししか取れなかったが、魔伝導効率というのが馬鹿にならないほどいいらしく、魔法を扱う剣士に持ってこいとの事であった。
そのため、ニャンハルコンでボクの剣を作ってもらった。
“ニャンハルコンの剣”
この剣を装備したことでボクはより聖王っぽく、勇者っぽくもなった。
⸺⸺
また、アビスはいつの間にかあちこちでダンジョンを攻略しているらしく、白光魔石だけではなく他の魔石もたくさん手に入れていて、その魔石があればより高度な魔具や魔導具が作れるとのことであった。
まさに迷宮の下の力持ち。アビスはボクの知らない間に町の発展にめちゃくちゃ貢献してくれていた。
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