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11話 町の名前を考えよう
しおりを挟む職人さんたちの素晴らしいクラフト技術と、オーガたちのパワフルな労働力のお陰で、集落は周りの柵から一変していった。
作業開始から1か月ほどで前の集落の面影は完全に消えていく。
周りは柵ではなく塀になり、今後のことも考えて面積もめちゃくちゃ広げた。
地面もフェイトタイルが一面に敷き詰められ、都市感が出てきた。
建物も次々に丈夫になって、一軒家ではなくアパートのような集合住宅も増え、高さも増していった。
それから歩く人たちの外見にも変化があり、みんな色味のない布を着ているだけの状態だったのが、色とりどりの服になり、素材も高級感あふれるものになっていた。
ボクたち猫組の衣装も更にグレードアップしてボクのマントもモコモコになった。
また、武器の普及により戦える人たちも増えてきて、ウォルトを団長として自警団も結成された。
⸺⸺
いよいよ国境の街道整備に取り掛かれるといったところで、ボクは猫組とフェリクス、ウォルト、そしてボクたちのお世話係代表のヒュナム族のアンナに城に集まってもらった。
「今日みんなに集まってもらったのは、この集落の名前や、森、それからダンジョンのような地名を考えるために集まってもらった」
ボクはそう話を切り出す。
「おぉ、俺様たくさん候補があるぞ!」
アビスはそう言ってフレーメンになる。
君のはなんか地獄の国のような名前になりそうだからどうかな……。
「まず、集落なのか、村なのか、町なのか、それとも国なのか……ですね」
と、フェリクス。
「国はまだ早い気がするなぁ。町とかの定義ってどんなの?」
ボクの問に対し、フェリクスが答えてくれる。
「人口の数だろうけど、自由にやってきてるんだし、この際それは気にしないでいいんじゃないかな。将来ここが王都になるような、そんなイメージで考えたらいいよ」
「自由に……!」
ボクはその言葉に心がワクワクした。
最近何をしなきゃいけないかを考えてばかりで、何をしたいかを考えることが少なくなっていたからかもしれない。
そしてボクは決断する。
「じゃぁ、この集落は今日から町にする。みんな、この町に相応しいような言葉をどんどん上げていって。ボクがそれを拾って古代語を参考に付けるから」
ボクがそう言った瞬間、次々に言葉が上がっていく。
「深淵」
「竜」
「月」
「猫」
「希望」
「自由」
「夢」
「幸せ」
「絆」
「協力」
「崇拝」
「逞しさ」
「楽園」
⸺⸺
他にもたくさん上がってたけどこの辺にして……。
最初の方は個人のただの欲求が強かったような気がするけど、希望とか自由とか、素敵な言葉がたくさん出てきてくれたことにボクは感動した。
その中でもボクが惹かれたのは……。
「楽園。他にもたくさんいい言葉があったけど、ボクは、この町を楽園と思えるような自由で楽しい町にしていきたい」
そんなボクの言葉に対し、みんなうんうんと頷いてくれる。
「だから、そうだな……。楽園の古代語を文字って“パラディリア”。
“自由の楽園パラディリア”だ」
「おぉ……!」
ボクの発表に対し、みんな賛同の拍手をくれた。
そして北西の森は、白い地脈“アルバウス”とルナのイチオシの“月”の古代語を合わせて……。
“アルナウスの森”
その森にあるダンジョンは、アビスが深淵深淵うるさいので、“最初”と“深淵”を合わせて……。
“始まりの地下迷宮プリムスアビス”
そのダンジョンへの街道は“プリムス街道”。
最後にプラム族たちが住んでいた高原は、ナーガの推す“竜”とプラム族の共通点が“翼”だということから、翼の古代語をそのまま当てはめて……。
“プテリュクス高原”
以上で決まった。
⸺⸺
城前の掲示板の隣には大きな地図が設置されていて、魔具職人のカリータさんの技術で開拓されると自然に地図が埋まっていくような仕組みにしてもらっていた。
その地図は最初この町だけだったけど、それをプテリュクス高原にまで広げてもらって、それぞれ町の名前や地名を魔法文字で記してもらった。
「ふむ、実際に地図にしてみると感慨深いものがあるにゃ」
と、ルナ。
「うん……本当に……」
ボクが感動しながら地図を眺めていると、今もパラディリアの町はどんどんと面積を広げていっている。
ちょっと前までただの野良猫だったのに……今ではこの大きな町のリーダーをやっている。
毎日美味しいお魚や鶏肉をお腹いっぱい食べて、カッコイイお洋服を来て、暖かいお城の窓際で昼寝をして、お世話係のアンナにゴロゴロ甘えて……。
いくらチートな能力を持っていても、1匹ではここまで来れなかった。
最初はクセが強いと思っていた仲間もすっかり見慣れて今では頼もしい盟友だし、人間の職人さんたちや人々の労働力は目を見張るものがある。
これは、みんなの力の結晶だ!
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