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9話 追放者について考えよう

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「どうしたの、この人たち!?」
 ザッと見るだけでも500人以上はいるであろうオーガの大群に、ボクは目をぱちくりとさせた。

 すると、プラムの長のウォルトが目の前まで秒で飛んできて、状況を説明してくれた。


 ボクたちがダンジョン攻略をしている間、ウォルト率いるプラム隊が大草原をパトロールしてくれていたそうだ。

 すると国の外れに築かれている巨大な城壁から、たくさんのオーガが次々に押し出されている現場を目撃したそう。

 その城壁は国の領土の最西端さいせいたんで、そこからこちら側が未開拓の地となる。
 プラムやエルフ、職人たちが追放されたときも、同じようにそこから押し出されたそうだ。

 ウォルトがオーガたちの元へ行き話を聞くと、パワーがありすぎるため反乱を企んでいるとして、国王に追放されたとのこと。
 そのためプラム隊が護衛をしながら、ここまで連れてきたということであった。

 オーガ族の人々は追い出されて死んだと思っていた知り合いとまた会えた喜びと、自分たちも死なずに済んだ安心とで、あっちこっちで抱き合い泣きじゃくっていた。 

「そもそも、その国王はいつからそんなことしてんの?」
 ボクは目の前にいるフェリクスとウォルトへと問う。

 先に口を開いたのはフェリクスの方だった。
「俺らエルフが追放される2か月前に前国王が亡くなって、現国王になったんだ。現国王は王子の時からだらしなく自己中で、皆将来を不安がっていた。そして王が交代するとすぐに奴はやりたい放題し始めて、俺らエルフを追放した。多分自分よりも優れているところがあるのが気に入らないんだろうね。それが5年くらい前の話」

「なるほど、世代交代か……それで5年前から急に……」


 次にウォルトが口を開く。
「んで、俺らが追放されるまでの間にも種族全員はないにしても、国王の気に入らない奴らがポツポツ追放されてはいたんだ。で、俺らの番って訳だな。だからもしかしたら今までに追放された奴がどっかで助けを求めてるかもしんねぇって思ってパトロールをしてたんだけど、まぁ見つかんねぇな」

「そっかぁ……1人だけだと生き残るのは厳しいかもね。でもそのパトロールのお陰で、今こうしてオーガの人たちを助けることができた。今はそれを喜ぼう」
 ボクがそう言うと、ウォルトは「だな」と言って笑った。 

 そしてボクは更なる疑問をぶつける。
「そんなに追放してばかりだと、国の人たち誰もいなくなっちゃうよね。だって、もうその国にはエルフもプラムもオーガもいないんでしょ?」

 それに対しフェリクスが答える。
「追放されるのは王都に住んでる人ばかりなんだけど、俺らは少数種族なんだよ。エルフは当時500人ほど、プラムなんて100人ほどしかいない超少数種族だった。国民のほとんどがヒュナム族で当時は3万人くらいだったかな。王もヒュナム。だから余計、王からしたら異物がいて目障めざわりなんだろうね」
 
 ウォルトが続く。
「だからよ、王都から遠い辺境の村とかならまだプラムもエルフもいるかもだぜ。ちょっと数は分かんねぇけどな」

「そういうことかぁ。じゃぁ何で辺境に逃げないでみんな王都にいたの?」
「前国王はめちゃくちゃ良い奴だったし、俺もフェリクスも王国軍に所属していたから、国のためを思うと出ていけなかったんだ。他の奴らは知んねぇけど、それなりの理由はあるはずだぜ」
 と、ウォルト。
「そっか……王国軍、カッコイイね」
「だろ? それなりにやりがいはあったんだぜ」

⸺⸺

 話題は追放者への対応についてに移る。さっきの話を聞く限りでは、これからもっともっと追放者は現れるはずだ。
 できれば1人でも見捨てたくはない。

「とりあえず今いるオーガの人たちには、自分の家は自分で建ててもらいたい。これからボクたちは鉱石の採掘場までの導線を確保しなきゃいけないからね」
 ボクはフェリクスとウォルトにそう提言する。
「大丈夫、今回はあまりにも人数が多かったから、そうなるだろうってオーガの奴らには最初に言ってある。オーガはみんな力があるから得意分野だってよ」
 と、ウォルト。流石、プラムをまとめる兄貴。頼りになるなぁ。

「ありがとう、助かるよ。家ができたら、次は鉱石運びと街道の整備を同時進行でやるからって言っておいて」

「「街道の整備?」」
 フェリクスとウォルトが同時に尋ねる。

「国境の城壁からここまで街道を敷く。そうすれば追放者も安全にここまで来れるでしょ? 途中休憩場所なんかも作ってもいいね」
「お前……できる猫じゃねぇか!」
 ウォルトがそう言ってボクの頭をガシガシと撫でた。フェリクスもうんうんとうなずいている。

「ボクが考えてるのはね、国境を越えて向こうに進出してまで国民たちをこっちへ誘導するのは泥棒だと思うし、かと言って侵略したり、国王を殺したりするのもなんか違うと思う。だから、追放者を1人も死なせない。隣国に対してはこれを当面の目標にしていきたい」

「俺ぁどこまでもお前に着いていくぜ」
「今いる皆にも周知する必要があるね」
 ウォルトとフェリクスがそれぞれ意見を述べる。

「そうだね。もしかしたら国に恨みを持ってて国王を殺してほしいって思ってる人はいっぱいいると思うけど、ボクはそれはしたくないから、そのこともちゃんと伝えないと。それよりも今ここに住んでいる環境をもっともっとよくしていきたいんだ」

「うん、じゃぁ明日の朝イチにでも集会を開こう。人数増えてから朝の集会はしなくなっちゃったしね」
 フェリクスの提案に、ボクもウォルトも賛同した。

⸺⸺

 翌朝、みんなに集まってもらうと、ボクは城の屋根に登り、昨日決めたことを大声で皆に伝えた。
 途中ざわつくこともあったけど、追放者を死なせない、今住んでいる環境を良くしていきたい、この2つの方針にはみんな大きな拍手をくれた。
 これならなんとかやっていけそうだ。

 そして今後のこういった方針は城の前に掲示板を設置して、そこに記していくことにした。
 更にその隣に国民の要望を書いて入れる箱……目安箱めやすばこも設置して、今回の鉱石がほしい等の要望を書いて入れてもらうことにした。

 よぉし、今日からはもっともっと忙しくなるぞ。
 ボクはそれでも何故なぜか楽しくなって、猫組みんなで円陣を組んで気合を入れた。





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