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8話 地下迷宮を攻略しよう
しおりを挟む⸺⸺集落から北西の森⸺⸺
ボクたちの4匹の猫とフェリクスは森の北の方にある大きな岩の塊の前まで来ていた。
その岩には人が通れるほどの穴が空いており、その穴を覗くと下へと続く階段が見えた。
「これが地下迷宮とやらか……うむ、漆黒の気配もこれまでとは比べ物にならんようだ。くくくっ、魔王の血がたぎるぞ……!」
アビスは安定のフレーメンになる。あと、魔王はスキルであって、血は多分猫の血だよ。
ダンジョンの中は地面は石のタイル張りになっていて、壁は石のブロックで整えてあるところもあれば、岩壁がむき出しになっているところもあった。
「この感じ……多分フェイト鉱石だ」
むき出しの壁を見てフェリクスがそう呟く。
「どんな鉱石?」
「これと言って何の特徴もないけど、1か所採掘場所を見つければ広い範囲で取れるから、大量に使うような道とかがいいんじゃないかな」
「なるほど。入口付近の石は道に使えるっと」
ボクはそう呟きながら頭にインプットした。
「まずは、このフロアの魔物を全滅させよう。そうすると、次のフロアへの階段が出現する。一番下の階に待ってるのが、ボスだ」
と、フェリクス。
「ふむ、ボスとやらは地下何階におるのじゃ?」
ルナが尋ねる。
「それはダンジョンごとに違う。レベルの高いダンジョンほどボスは下の方になるよ。そして、下の階がボスかどうかの目印は、階段が赤色になっているんだ」
「ふむ、承知した」
ボクたちはポツポツ出る魔物を倒しながら進んでいく。
すると、ある広い部屋へと到達した。
「おお! 漆黒の気配がこんなにも!」
アビスが興奮して見つめる先は、広い部屋を埋め尽くすほどの魔物で溢れかえっていた。
「モンスターハウスだ。行き止まりだからこれを倒せば階段が出るね」
フェリクスが解説する。
「よし、みんな思いっきりやろう!」
「おう!」
みんなは勢い良く返事をすると、部屋のあちこちへと散っていった。
まず先手必勝素早いルナのターン。
「我が舞に酔いしれよ、猫艶乱舞!」
彼女は目にも止まらぬ速さの舞で魔物を次々に切り裂き、蹴り飛ばしていく。
彼女の周りの魔物はあっという間に黒い霧となって消えていった。
「ふん、相変わらず肉球応えのにゃい奴らじゃ」
勝利の決め台詞ご馳走様です。
次にナーガのターン。
「竜の咆哮」
彼は空中から魔物たちへ向かって思いっきり吠え叫ぶ。すると地鳴りと共に彼の口から光の音波が飛んでいき、広い範囲の魔物を一掃した。
ねぇ、その竜みたいな声どっから出してる? ナーガってご機嫌なとき、ちゃんと猫のゴロゴロ音出せるのかな。
そしてアビスの番。
「いでよ、混沌なる黒き刃」
アビスはそう言って黒いドロドロの地中から大きな鎌を取り出す。
「魔王の気まぐれ」
彼がお手手をくるくるっと回転させると、鎌も勢い良く回転をしながら魔物を切り裂いていった。
残るは中央付近にいる魔物の塊のみ。
ボクはお手手を地面へ向け、足元に魔法陣を描く。
「上級光魔法、ルーセントレイ!」
ボクがお手手を上げると同時に、魔物の塊の上へ無数の光線が降り注いだ。
「みんな、お見事……」
あれだけいた魔物が一瞬でいなくなると、フェリクスは半ば引き気味に拍手をしていた。
「ごめん、フェリクスの分いなくなった」
ボクはてへっと舌を出す。
「うん、君たちの桁外れの技でもうお腹いっぱいだからいいよ」
フェリクスは諦めたようにそう返した。
「あ、出た……」
ナーガの声に反応して彼の方を見ると、彼の真下に階段が出現していた。
⸺⸺
そうしてボクらは各階にどんな素材があるのかを確認しながらどんどんと下の階へと足を進めた。
途中、何故か天井から光が差し込み、湖があって休憩場所のようなフロアを通ったけど、そこに牛さんと豚さんが居たときは笑った。
いつからいるのか知らないけど、ダンジョンという響きに似合わずのほほんと草をむしっていた。
⸺⸺地下6階、ボス部屋⸺⸺
『キシャァァァァァッ!』
巨大な大蛇の魔物が待ち構えており、他の魔物と違って黒いモヤモヤの他に赤いモヤモヤもまとっていた。
「赤色オーラは亜種の証。普通の魔物よりもステータスが格段にアップして……」
フェリクスがそう言い終わらないうちに、ボクたちは技を放った。
「月空刃!」
「竜の波動」
「いでよ、混沌の死神」
「上級炎魔法、エルフレイム!」
どっかーん。
大蛇は、一瞬で塵になっていった。
「ごめんフェリクス、なんか言った?」
「ううん、大丈夫、何でもない……」
ボクの謝罪に対し、彼は白い目でそう返事をした。
ボスを攻略すると、床一面が白く光っていった。
「わぁ、なんだこの光」
「これは結界だよ。ボスを倒すとダンジョンクリアとなり、約1か月の間、全フロアで魔物が出現しなくなり、素材を確保し放題になる」
フェリクスの説明に対しみんな「おぉ」と歓喜の声を上げる。
「そしてその期間の後、ダンジョンの入り口が消え、数日経つとダンジョン内がリセットされてまた入り口が現れる……っていう仕組みだよ。ちなみに中にいる人は強制転送で外に出される」
「ふむ、それにゃらば人間共の手も借りることができるのう。流石に鉱石のようにゃ重い物は妾の魔力も持たぬ故」
と、ルナ。確かにそうだ、でも……。
「集落の外からこのダンジョンまでは普通に魔物が出るから、まずはここまでの道を整備しないといけないね」
ボクがそう言うとフェリクスは大きく頷いた。
「む、何だあれは」
アビスの視線の先には白く光る魔法陣が出現していた。
「あれは地上までの転送陣だよ。帰りは一瞬で地上まで戻れる」
「それ便利……いいね……」
ナーガはそう呟いてパタパタと魔法陣へ入っていった。
ボクたちもみんなで魔法陣に入ると、地上のダンジョン横へと瞬間移動した。
「あ、牛さんと豚さん連れて来ようと思ってたのに忘れてた……」
ボクは思い出したようにそう呟く。
「あのくらいなら妾が浮遊で運ぼうぞ。お主らは先に帰って職人らへ成果を報告してやるがよい」
ルナはそう言って再びダンジョンへと潜っていった。
「あ、ありがとうルナー! アビス、念の為一緒に行って上げて」
「承知した」
アビスもダンジョンへ潜るのを確認すると、残りのボクたちは集落へと帰還した。
⸺⸺名もなき集落⸺⸺
「あぁレクス様! お帰りをお待ちしておりました!」
ボクたちが集落へ入ると、鉱石職人代表のベルトランが待ち構えていた。
「やぁベルトランただいま。そんなに待ち切れなかったの?」
「あの、それもあるのですが……急ぎ報告したいことがありまして、こちらに同行願えますか?」
「ん? いいけど……」
ボクたちは顔を合わせて首を傾げると、そのままベルトランについていった。
するとそこには……大勢のオーガ族がいた。
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