【完結】野良猫無双〜異世界転移したチートスキル所持のクセ強の野良猫✕職人タッグの開拓ライフで猫が一国の王となる〜

るあか

文字の大きさ
上 下
6 / 44

6話 もっと人口を増やそう

しおりを挟む

 ボクは遂に、魔力を使って空に浮けるようになった。
 これは特別な能力ではなくて、たくさん魔法を使ったり、魔法以外にも魔力を送って植物を育てたり、結界を整備したりしたから魔道士として成長したんだね。

 フェリクスは元々偉大な魔道士で、彼曰くこれは“魔道浮遊まどうふゆう”という技らしい。エルフの中ではフェリクスだけが習得しているそう。

⸺⸺

「じゃぁ今日は、プラム族の生き残りがいないか探してくるよ。ここの守りは頼んだよ」
 ボクがエルフの人たちへそう言うと、みんな「はい、聖王レクス様!」と気持ち良く返事をしてくれた。

 フェリクスだけは飛べるし、プラム族に知り合いがいるそうなので、ボクたち猫組についてきてもらうことにした。


 ボクたちは早速飛び上がり、森よりも更に北にある広大な岩場の高原へと来ていた。
 あちこちに川の流れる峡谷きょうこくがあり、飛ぶことのできるプラム族にとっては住みやすい土地なのではないかというフェリクスの助言だ。

 広い岩場の上空を飛んでいると、ボクはあることに気付いた。

「なんか、あんまり魔物がいないね」

 森にはたくさんの魔物がいて、草原もそれなりにいる。でもここは本当にポツポツ程度しか見当たらなかった。

「レクスよ、分からんか? 漆黒しっこくの気配がここは微小だ」
 と、アビス。
「漆黒の気配って?」
「草原でも森でも、地の底から魔物のような漆黒の気配が這い出てきている。それが、ある程度融合することで魔物へと造形されるのであろう?」

「えっと、つまりどういうこと?」
 アビスのよく分からない表現に頭上にハテナがたくさん飛んでしまったボクに、フェリクスが補足をしてくれる。

「彼が言いたい漆黒の気配というのは恐らく“黒い気”のことだと思う」
「あぁ、魔物の素になるっていう?」
 ボクがそう言うとフェリクスは軽くうなずき、説明を続けた。

「地面から常にちょっとだけ湧き出ていてね、それがある程度集まると、魔物の姿になるんだ。彼はその黒い気がよく感じ取れるようだね」
「へぇ~そうだったんだ。じゃぁ、ここはその黒い気っていうのがあんまり出てないから、魔物が少ないんだね」
「そうだと思うよ」
 フェリクスは頭も良くて物知りで、すごく頼りになる。連れてきて良かった。

「はーっはっはっは! 漆黒の力は全て我が手中成しゅちゅうなり!」
 アビスはそう言って口をフレーメンにする。
 もうまたそんなことして……と、思っていると、アビスの額から2本の悪魔の角がにょきにょきと生えてきた。

「ぬおおおおっ! 魔王の角が生えてきたではないか! 良い、良いぞ……また一歩深淵しんえん覇者はしゃに近付いてしまったということか……全く自分が恐ろしい」
 アビスはそう言って嬉しそうにはしゃいでいた。
 そっか、アビスは魔物の気配を探ったり、魔王のスキルを使うことで、スキルがレベルアップしたんだね。

⸺⸺

 ボクたちはしばらく岩場の上空をキョロキョロと探す。
 ナーガは低い位置を飛びながら、ポツポツいる魔物に“竜の波動はどう”というビームを浴びせて片っ端から殲滅せんめつしていた。
 これなら万が一プラム族の人たちが見つからなかったとしても、少しは安全に貢献できたかな?

 すると、ナーガの額からも竜の角が生えてくる。彼は自分でそれに気付くと、ボクに見てと言わんばかりに空を見上げてボクをガン見してきた。
 上下の距離があるため、声ではなく拍手の動作でおめでとうの意を伝えると、嬉しそうにはにかんでいた。

 その時、ルナがすっと僕の隣へと並んだ。

「レクスよ。前方に翼を持った人間を確認。飛んでこちらに近付いてくるぞ」
「えっ、本当? フェリクス見える?」
 ボクは目を凝らしてみるけど、全く分からなかった。
「いや、俺にも見えないな……」

 だけどルナの言葉を信じてその方角へボクたちも飛んでいくと、数分後に本当にプラム族の姿が見えてきた。

「あっ、ホントにいる! ルナってすごく目がいいんだね。猫って……視力悪いはずだよね……」
「そういうお主もこの世界に来てから少しは見えるようになっているのではにゃいか?」
「あ、そう言われてみれば、あんまりぼやけてないかも……」
 どうやらボクたちは、視覚の補正も受けてるみたいで、ルナはそれが格段にすごかった。

「あっあれは! ウォルトだ! おーい、ウォルトー!」
 いつもはクールなフェリクスが満面の笑みで大きく手を振る。
 すると、それに気付いたプラム族も大きく手を振り、あっという間にボクたちの前まで飛んできた。速い!

「フェリクスじゃねーか! 生きててくれたんだなお前! はは、会えて嬉しいぜ相棒っ」
「あぁ、俺もだよ。君も生きててくれて良かった」
 そう言って2人は抱き合う。おとこの友情ってやつだね。
 ウォルトはプラム族のオスで、一言で言うと人間の顔をしたたかだった。

「で、お前らはなんだ? 猫か? 猫みたいな別の生き物か?」
 ウォルトはすごい剣幕でボクに詰め寄ってくる。
 そんなこと言われても猫なのかそうじゃないのかなんて、正直ボクたちにももう分からないよ。

「多分猫、だと思う……」
 ボクは自信なくそう返した。

 フェリクスがウォルトへ粗方事情を説明してくれ、ウォルトも彼らの現状を簡単に説明をしてくれた。


 総勢100人くらいいたプラム族たちも1年くらい前にみんなそろって国から追放され、この高原へ逃げ延びたそうだ。
 それ以来ウォルトがプラム族を束ねる族長らしい。

 プラム族は魔力は少ないものの獲物を狩る能力に優れていて、手製の石の斧で魔物を撃退しながらこれまでやり過ごしてきたらしい。
 それでも人数は70人くらいまで減ってしまったそうで、ウォルトは時折悔しそうな表情を見せた。

 今は何者かが魔物を蹴散けちらしているのが見えたから、様子を見に来たそうだ。
 プラム族もめちゃくちゃ視力がいいみたい。
 彼はそれがナーガだと分かると、めちゃくちゃに感謝していたし。


 彼らは峡谷きょうこくにできた洞穴ほらあなを隠れ家にしているらしく、そこまで案内してもらった。そこには色んな翼のプラム族がたくさんいた。

 別の洞穴では“ナンヨウ鳥”というにわとりみたいな鳥を飼っており、貴重な食料らしい。
 「共食いじゃない?」ってウォルトに聞いたら、大笑いされて「クラニオだって魚食うだろ?」って言われた。
 確かに、すごいバクバク食べてた……。

⸺⸺

 ここまで結構遠かったため、今夜は隠れ家の洞穴に泊めてもらうことになった。
 大自然での生活に、ちょっとだけ懐かしさもあった。

 今日の晩御飯は“セイヨウ鳥の丸焼き”。ボクは生まれて初めて丸焼きチキンにかぶりついた。
 やっぱりこれも、すごくすごく美味しくて涙が出そうになった。

 ちなみにセイヨウ鳥は2週間で大人サイズに成長して毎日卵も産んで、家畜としてめちゃくちゃ重宝ちょうほうする鳥だった。


 ここでは戦える戦士たちが見張りのため数時間おきに交代で寝起きをしていて、ボクたちも見張りに参加した。
 まだ自分たちで魔物が倒せるだけいいけど、毎日これは大変そうだなって思った。


 翌日、ウォルトは仲間のみんなに何やら指示を出していた。
 プラムのみんなはセイヨウ鳥の洞穴に入っていき、次々にセイヨウ鳥を捕まえてボクたち猫の前に集まってきた。

 そしてウォルトが1歩前に出る。

「じゃ、お前らの集落に案内してくれよ。今日から世話になんぜ!」
「本当? 来てくれるの?」
 ボクは嬉しくて思わず笑みがこぼれる。

「あったり前だろ。お前らは俺らのために1日かけてここまで探しに来てくれたんだろ。それは俺らもすげー嬉しかったし、何より安全で衣食住の充実した土地に住めるのは願ったり叶ったりだ」
「ありがとう! みんなで一緒に暮らそうね!」

 ボクたちはまた1日かけて、無事集落へと帰還した。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...