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23話 本気のアーサー殿下
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服を着たアーサー殿下は、クローゼットの中から何やら小さな箱を取り出して、私に向き合う。
「ディアナ、俺と婚約をしてほしい」
アーサー殿下はそう言ってその小さな箱を開ける。そこには、綺麗な指輪が収まっていた。
「えっ、婚約ですか!? 指輪なんていつの間に!?」
私は目をパチクリとさせ、驚きを顕にする。
「指輪はお前と運命共同体になった時に、いつでも渡せるように準備しておいた。元々エミリアの件が全て上手くいったら渡そうと思っていたものだ」
「あの、すごく嬉しいんですけど、今婚約なんて発表したら、エミリアが嫉妬しちゃうんじゃ……」
「発表はしない。俺も学院を卒業するまでは誰とも婚約しないと両親に話しているしな……だが、一足先に話しておかねばならん方がおられるだろう。とにかく受け取ってくれ、全て解決したら結婚しよう」
「はい……喜んで」
私は指輪をはめてもらった。すごい高そうで綺麗で可愛い。
その指輪を見つめてほわーんと余韻に浸っていると、アーサー殿下はせっかくはめた指輪をすぐに抜いてしまった。
「えっ!?」
唖然とする私。
「すまんディアナ。後でまたゆっくり見てほしい。今日は授業の登録だけで他やることはないんだろう?」
「そうですね、授業の登録ももう何回もやってるので目をつぶってもできるくらいですね」
「よし、お前の実家に行くぞ!」
「実家!?」
⸺⸺エイデン男爵のお屋敷⸺⸺
「お父様ー、お母様ー、ディアナです。ただいま戻りましたー」
屋敷の扉を開けて中に入ると、すぐに使用人が飛び出してくる。
「ディアナお嬢様! お帰りなさいませ……ってそちらのお方は……!?」
「フロイデン王国第二王子、アーサー・フロイデンと申します。本日はディアナお嬢様との婚約の件でお伺い致しました。エイデン男爵はご在宅でしょうか」
「こ、婚約!? す、すぐにお呼び致しますので、こちらへどうぞ!」
私たちはすぐに応接室へと案内される。
そして使用人たちはバタバタと紅茶やお菓子などおもてなしの準備をしており、それが整わないうちに、エイデン男爵とエイデン夫人、つまり私の両親が血相を変えて応接間へと飛んできた。
「お、お待たせ致しました! 前回の貴族会議ぶりで、ご無沙汰しております……!」
お父様は冷や汗をダラダラと流しながら、ペコペコしていた。
設定上の両親だけど……なんかこっちまで情けなくなってくる。
「ええ、半年ぶりくらいでしょうか。お久しぶりです。本日は突然の訪問で申し訳ありません。ですが、どうしてもお伝えしたいことがありまして……」
「はい……」
お父様が緊張気味に返事をする。お母様は使用人から話を聞いているからか、既に涙目になっている。
「わたくしアーサー・フロイデンとディアナお嬢様の婚約を許していただきたく、こうして参った次第です」
「使用人の言っていたことは本当だったのですね……!」
お母様がおいおいと泣き始める。
「なんだか夢のようで、こちらとしては願ってもないことです……ぜひ娘をよろしくお願い致します」
お父様はそう言って深く頭を下げた。
「ありがとうございます。それでなんですが……わたくし事で申し訳ないのですが、わたくしは現在5年生で、学院を卒業するまでは誰とも婚約しないと国王へ宣言してしまっております。ですので、婚約の発表を2年お待ちいただけないでしょうか」
「それはもう、うちはアーサー王子殿下のご意向に従います」
と、お父様。
「あぁ、ありがとうございます。正式な発表までは、どうか口外も避けていただけると助かります。また、お嬢様との縁談の話も断っていただけると……」
「もちろんです。どの縁談話も断ると誓いましょう」
「重ねてお礼申し上げます。話は変わりまして、エイデン男爵様は魔法杖の流通商人をされているとお嬢様からお伺いしておりますが……」
「はい、おっしゃる通りです」
「宜しければ、王宮で扱っている魔法杖の流通もしていただけないかと思いまして」
「えっ、本当ですか!? それもまた願ってもないことでございます……!」
「それでは後日、王宮魔法杖職人をこちらへ向かわせますので、話し合いのほど、お願い致します」
「あぁ、ありがとうございます……! 本当に夢のようです……!」
お父様もそう言ってついに泣き出した。
「ディアナ……あなた、すごく幸せそうよ。良かったわね」
と、お母様。
「ええ、ありがとう、お母様」
こうして本気のスイッチの入ったアーサー殿下によるエイデン男爵包囲網が完成し、学院の寮に戻って記憶のアルバムを覗いてみると、『アーサー第二王子との婚約……CLEAR』というタイトルと共に、両親の嬉し泣きをしている写真が載っていた。
「ディアナ、俺と婚約をしてほしい」
アーサー殿下はそう言ってその小さな箱を開ける。そこには、綺麗な指輪が収まっていた。
「えっ、婚約ですか!? 指輪なんていつの間に!?」
私は目をパチクリとさせ、驚きを顕にする。
「指輪はお前と運命共同体になった時に、いつでも渡せるように準備しておいた。元々エミリアの件が全て上手くいったら渡そうと思っていたものだ」
「あの、すごく嬉しいんですけど、今婚約なんて発表したら、エミリアが嫉妬しちゃうんじゃ……」
「発表はしない。俺も学院を卒業するまでは誰とも婚約しないと両親に話しているしな……だが、一足先に話しておかねばならん方がおられるだろう。とにかく受け取ってくれ、全て解決したら結婚しよう」
「はい……喜んで」
私は指輪をはめてもらった。すごい高そうで綺麗で可愛い。
その指輪を見つめてほわーんと余韻に浸っていると、アーサー殿下はせっかくはめた指輪をすぐに抜いてしまった。
「えっ!?」
唖然とする私。
「すまんディアナ。後でまたゆっくり見てほしい。今日は授業の登録だけで他やることはないんだろう?」
「そうですね、授業の登録ももう何回もやってるので目をつぶってもできるくらいですね」
「よし、お前の実家に行くぞ!」
「実家!?」
⸺⸺エイデン男爵のお屋敷⸺⸺
「お父様ー、お母様ー、ディアナです。ただいま戻りましたー」
屋敷の扉を開けて中に入ると、すぐに使用人が飛び出してくる。
「ディアナお嬢様! お帰りなさいませ……ってそちらのお方は……!?」
「フロイデン王国第二王子、アーサー・フロイデンと申します。本日はディアナお嬢様との婚約の件でお伺い致しました。エイデン男爵はご在宅でしょうか」
「こ、婚約!? す、すぐにお呼び致しますので、こちらへどうぞ!」
私たちはすぐに応接室へと案内される。
そして使用人たちはバタバタと紅茶やお菓子などおもてなしの準備をしており、それが整わないうちに、エイデン男爵とエイデン夫人、つまり私の両親が血相を変えて応接間へと飛んできた。
「お、お待たせ致しました! 前回の貴族会議ぶりで、ご無沙汰しております……!」
お父様は冷や汗をダラダラと流しながら、ペコペコしていた。
設定上の両親だけど……なんかこっちまで情けなくなってくる。
「ええ、半年ぶりくらいでしょうか。お久しぶりです。本日は突然の訪問で申し訳ありません。ですが、どうしてもお伝えしたいことがありまして……」
「はい……」
お父様が緊張気味に返事をする。お母様は使用人から話を聞いているからか、既に涙目になっている。
「わたくしアーサー・フロイデンとディアナお嬢様の婚約を許していただきたく、こうして参った次第です」
「使用人の言っていたことは本当だったのですね……!」
お母様がおいおいと泣き始める。
「なんだか夢のようで、こちらとしては願ってもないことです……ぜひ娘をよろしくお願い致します」
お父様はそう言って深く頭を下げた。
「ありがとうございます。それでなんですが……わたくし事で申し訳ないのですが、わたくしは現在5年生で、学院を卒業するまでは誰とも婚約しないと国王へ宣言してしまっております。ですので、婚約の発表を2年お待ちいただけないでしょうか」
「それはもう、うちはアーサー王子殿下のご意向に従います」
と、お父様。
「あぁ、ありがとうございます。正式な発表までは、どうか口外も避けていただけると助かります。また、お嬢様との縁談の話も断っていただけると……」
「もちろんです。どの縁談話も断ると誓いましょう」
「重ねてお礼申し上げます。話は変わりまして、エイデン男爵様は魔法杖の流通商人をされているとお嬢様からお伺いしておりますが……」
「はい、おっしゃる通りです」
「宜しければ、王宮で扱っている魔法杖の流通もしていただけないかと思いまして」
「えっ、本当ですか!? それもまた願ってもないことでございます……!」
「それでは後日、王宮魔法杖職人をこちらへ向かわせますので、話し合いのほど、お願い致します」
「あぁ、ありがとうございます……! 本当に夢のようです……!」
お父様もそう言ってついに泣き出した。
「ディアナ……あなた、すごく幸せそうよ。良かったわね」
と、お母様。
「ええ、ありがとう、お母様」
こうして本気のスイッチの入ったアーサー殿下によるエイデン男爵包囲網が完成し、学院の寮に戻って記憶のアルバムを覗いてみると、『アーサー第二王子との婚約……CLEAR』というタイトルと共に、両親の嬉し泣きをしている写真が載っていた。
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