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15話 報告前のボーナスタイム

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⸺⸺アーサー殿下の自室⸺⸺

「アーサー殿下?」
 あれ、殿下寝てるのかな……。疲れてるから、無理もないか。

 テーブルの上には豪華な食事が並んでいる。きっとシェフを自室に呼んで作ってもらったのだろう。さすが国の王子、おもてなしの規模が違う。

 私はそっとアーサー殿下の寝ているソファの側まで歩み寄る。
 そして膝をつき、マジマジと彼の寝顔を堪能する。
「……カッコいい……」
 思わず漏れる本音。
「はぁ……好きすぎる……。またぎゅーってしてもらえないかな……それでちゅーってしちゃったりして……きゃっ」

 そう言った瞬間殿下に腕を引かれ、寝ている彼の上に雪崩れこむ。そして彼は私をガッチリと抱きしめて、ゆっくり目を開けた。

「それがお前の本音で良いんだな?」
「殿下! まさか寝たフリですか!?」
「ディアナ、あまり会う時間を取ってやれず悪いな。せめて会えたときは、お前の願いを叶えてやりたい。俺も好きだ、ディアナ……」

 頭を固定されて、キスをされる。その幸せなボーナスタイムに、頭が沸騰して報告どころではなくなってしまった。
 キスから解放されると私はそのままヘナヘナと殿下の厚い胸板へ脱力する。無理だ。もう力が入らない。しばらく動けなさそう。

「ディアナ?」
「殿下のせいでしばらく動けません……。急にあんなことするなんてズルいです。報告しようとしてたことが頭から吹っ飛んじゃいました。殿下のせいですからね」

 私がそう力なく言うと、彼は満足そうに笑っていた。
「それなら先に飯を食おう。お前のために作ったんだ」
「作った!? え、殿下が!?」
「何だ……俺だって料理くらいするぞ?」
「えええ、だってこれ、宮廷料理人が作ったみたいな見た目ですけど!?」
「見た目だけではないといいのだが……」
「早速いただきます!」

 動けなかったはずの身体はスッと起き上がる。すると、殿下は「動けるじゃないか」と言ってクスクス笑っていた。

 そして殿下の手料理を堪能する。それは一口一口「ん~」と悶えるほど美味しく、そんな私の表情を見て殿下はとても嬉しそうにしていた。

 一緒に後片付けをして、ソファへと腰掛ける。そしてある疑問をアーサー殿下へとぶつけた。
「っていうか殿下お忙しいですよね!? こんな私のために手料理なんて作る暇ないでしょ!?」
「時間など作ろうと思えばいくらでも作れるさ。それにこれは、俺からのお礼なんだ」
「お礼?」
「いつもお前にメッセージを送ると可愛らしい文字で作った顔をつけて返事をしてくれるだろう?」
「あぁ、顔文字ですね!」
「そうか、顔文字というのか。それを見るとお前が目の前で返事をしてくれているような気分になってとても癒やされるんだ。そのおかげでこの忙しい毎日を乗り切ることができている、ありがとうディアナ」

「そ、そんな私こそ……いつも殿下が気にかけて下さって感謝しかないですよぅ。じゃぁ次は私がお食事のお礼に何かしたいです! 何がいいですか?」
「それなら……またこの部屋に会いに来てくれ。許可はいらん。いつでも来ていい」

「そんな……お邪魔じゃないんですか?」
「邪魔になどなるものか。お前は癒やしでしかないんだ」

「うぅ……そんなの毎日来ちゃいますよ!?」
「あぁ、楽しみにしているぞ」

 アーサー殿下……大好きです。


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