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11話 ふたり反省会をしよう
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私はアーサー殿下に今までのループの内容を簡単に伝えた。
「なるほど、お前はどうにかしてあのダメアンを遠ざけたいと……」
殿下までダメアンって言っちゃってるし……。
「はい……でもどんなルートをたどっても、ストーカーのように現れます……」
「お前はダメアンにどうなってほしいんだ? 今まで散々苦労させられたから、バッドエンドを迎えさせたいのか?」
「いいえ、バッドエンドにしたいとかはないんですけど、エミリアと接触してエミリアを傷付けるのをやめてほしいです」
「ならば、何でエミリアに接触してくるのかはもう分かっているのだろう?」
「はい……私を狙うためだって、言ってました……」
「なら、ディアナよりもドSな女性を近付けさせればいい」
「なるほど……!」
そんな発想私にはなかった。
ダメアンをどう排除するかばっかりで、ダメアンにどうしてあげればいいか、それを考えればいい。
「殿下さすがです……みんなを幸せにしてこそ、本当のヒロインですよね……!」
「そういうことだ」
彼はそう言って静かに微笑んだ。
やっぱり笑顔素敵……!
「でも、ドSな女性なんて……」
「お前は、魔道科の人物しか分からないか? 実は騎士科に一人えげつないお方がいらっしゃるんだが……」
「待って下さい、ちょっと思い出します……」
「ん」
私はゲームに出てくる騎士科の人たちを一通り思い出してみる。
誰だ……エミリアの知り合う生徒の中には、ドSな人なんて一人も……。
いや、待って、アーサー殿下は“えげつないお方がいらっしゃる”って言い方をした。
殿下は騎士科の5年生。王族でも先輩や先生方にはきっと下からいくだろうから、つまり最高学年の6年生か、先生ってことになる。
私は騎士科の6年生なんて知らないから……先生……職員室を思い出してみよう……。
「あっ! リリー教官ですか!?」
私がひらめき答えると、アーサー殿下は驚いた様な表情を浮かべていた。
「これだけで分かるとは……さすがにそのゲームとやらを何周もしているだけはあるな」
「あはは……リリー教官、そう言えばいっつもかかとの高いハイヒール履いて、なぜかムチ持ってますよね……」
「あぁ……俺は教官がなぜあのような奇抜な教育方法なのか、ずっと疑問に思っていたんだ。だが、お前の話を聞いているうちに、ダメアンを落とすためなんじゃないかと思えて仕方がない」
「絶対そうです……でも、どうやって接触させましょう? ダメアンは“商業科”です」
「それは俺が教官に、指導してほしい人がいるとでも言って教官本人に校内アナウンスで呼び出してもらえばいいだろう」
「そんなことまで殿下にお願いして良いんですか……?」
「さっき、運命共同体だと言っただろう? そこは俺に任せてくれ」
「うぅ……ありがとうございます……」
こうして私たちは、連絡の取れる魔具“魔法の文字盤”というカードをお互いに持って、ループすることになった。
ループの時には、ストーリー進行の妨げになるような授業のプリントなどは持ち込めないが、ストーリーに関係ない個人的に手に入れた私物はループした後も持ったままになっている。
これでループ初日からアーサー殿下と連絡が取れる。
一人でループしてた頃よりずっと楽しいし、正直ゲームしてる時よりも楽しい。そんなわくわくを抱えて、私は懐中時計の突起を押した。
「なるほど、お前はどうにかしてあのダメアンを遠ざけたいと……」
殿下までダメアンって言っちゃってるし……。
「はい……でもどんなルートをたどっても、ストーカーのように現れます……」
「お前はダメアンにどうなってほしいんだ? 今まで散々苦労させられたから、バッドエンドを迎えさせたいのか?」
「いいえ、バッドエンドにしたいとかはないんですけど、エミリアと接触してエミリアを傷付けるのをやめてほしいです」
「ならば、何でエミリアに接触してくるのかはもう分かっているのだろう?」
「はい……私を狙うためだって、言ってました……」
「なら、ディアナよりもドSな女性を近付けさせればいい」
「なるほど……!」
そんな発想私にはなかった。
ダメアンをどう排除するかばっかりで、ダメアンにどうしてあげればいいか、それを考えればいい。
「殿下さすがです……みんなを幸せにしてこそ、本当のヒロインですよね……!」
「そういうことだ」
彼はそう言って静かに微笑んだ。
やっぱり笑顔素敵……!
「でも、ドSな女性なんて……」
「お前は、魔道科の人物しか分からないか? 実は騎士科に一人えげつないお方がいらっしゃるんだが……」
「待って下さい、ちょっと思い出します……」
「ん」
私はゲームに出てくる騎士科の人たちを一通り思い出してみる。
誰だ……エミリアの知り合う生徒の中には、ドSな人なんて一人も……。
いや、待って、アーサー殿下は“えげつないお方がいらっしゃる”って言い方をした。
殿下は騎士科の5年生。王族でも先輩や先生方にはきっと下からいくだろうから、つまり最高学年の6年生か、先生ってことになる。
私は騎士科の6年生なんて知らないから……先生……職員室を思い出してみよう……。
「あっ! リリー教官ですか!?」
私がひらめき答えると、アーサー殿下は驚いた様な表情を浮かべていた。
「これだけで分かるとは……さすがにそのゲームとやらを何周もしているだけはあるな」
「あはは……リリー教官、そう言えばいっつもかかとの高いハイヒール履いて、なぜかムチ持ってますよね……」
「あぁ……俺は教官がなぜあのような奇抜な教育方法なのか、ずっと疑問に思っていたんだ。だが、お前の話を聞いているうちに、ダメアンを落とすためなんじゃないかと思えて仕方がない」
「絶対そうです……でも、どうやって接触させましょう? ダメアンは“商業科”です」
「それは俺が教官に、指導してほしい人がいるとでも言って教官本人に校内アナウンスで呼び出してもらえばいいだろう」
「そんなことまで殿下にお願いして良いんですか……?」
「さっき、運命共同体だと言っただろう? そこは俺に任せてくれ」
「うぅ……ありがとうございます……」
こうして私たちは、連絡の取れる魔具“魔法の文字盤”というカードをお互いに持って、ループすることになった。
ループの時には、ストーリー進行の妨げになるような授業のプリントなどは持ち込めないが、ストーリーに関係ない個人的に手に入れた私物はループした後も持ったままになっている。
これでループ初日からアーサー殿下と連絡が取れる。
一人でループしてた頃よりずっと楽しいし、正直ゲームしてる時よりも楽しい。そんなわくわくを抱えて、私は懐中時計の突起を押した。
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