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8話 思わぬ助っ人

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 翌日。食堂でエミリアとランチをしていた私のもとへ、嫌なフラグを抱えたあいつがやってくる。

「やぁ、エミリア、ここにいたんだね」
「まぁ、ダミアン様!」
「……げっ……」

 エミリアに紹介したいとかも言われてないのにあっちから接触してきた……!

「そっちの彼女が君の言ってた親友のディアナかい? 可愛い子だね……」
 おい、その、俺をイジメてください的なデレた目やめろ気持ち悪い!

「初めまして、ディアナです……」
 私は苦笑する。

 この日は軽い挨拶程度で終わったけど、ある日の授業後、私が寮に帰ろうと教室のいくつも並ぶ廊下を歩いていると……。

「ディアナ。エミリアから君ならあの部屋で授業があったと教えてもらって急いできたんだ」
 ダメアンがそう言って行く手を阻んでくる。

 コイツ……もうストーカーじゃん。いや、エミリアを散々尾行してた私もストーカーか……。

「何の用ですか? 急いでますので手短にお願いします」
 私はダルそうにそう返事をする。

「すぐ済むかどうかは君次第だよ……」
 ダメアンはそう言って空き教室に私を引きずり入れ鍵をかける。
「ちょ……やめて……人、呼びますよ!?」
 私は咄嗟に魔法杖を構える。

 何回も基礎の授業受けてて魔法の実技もめちゃくちゃ成績良いんだから、いざとなったらこれでコテンパンにしてやる。

「うちの両親は魔具まぐの取引の商会を取り仕切っていてね……この日のためにエミリアから君の弱点を聞き出して、召使いに取り寄せてもらったんだよ……」
 ダメアンはそう言って手のひらサイズの水晶を取り出す。

「何……それ……」
 あの水晶がその魔具だって言うの? 
 魔具というのはこの世界の魔法アイテムみたいなもので、それぞれ色んな魔法が込められている。

「じゃ、発動」
「っ!」

 あれ……魔力の流れが操作できない。まさかあの魔具は……!

「魔法、使えないでしょ? 今この空間は“アンチマジックエリア”となった。非力な君はこれでもう抵抗することはできない」
 ダメアンはそう言ってゆっくりと近付いてくる。

「や……やめて……来ないで……」
 どうしよう……。酔ってやらかした時と違って今はしらふだ。
 鮮明に記憶に残っちゃう……! アンチマジックエリアのせいで魔法アイテムの懐中時計もきっと使えない……。

 この後やり直せたとしても私……!

「誰かっ……!」
 そう叫びかけた私の前へ、ダメアンはズザーっと土下座をする。
 そして、ハイヒールとムチがスッと差し出される。

「これで俺をグリグリして滅多打ちにしてくだしゃぁいっ!」
「……は?」

 その時、バキッというすさまじい音と共に鍵のかかった扉が薙ぎ倒され、その瞬間目にも止まらぬ速さで誰かが目の前のダメアンへ馬乗りになった。

「はぁんっ!」
 嬉しそうに喘ぐダメアン。それに対しドン引きする馬乗りの人。

「なんなんだコイツ……」
 そ、そのイケボは……!

「アーサー殿下!?」
「ディアナ……悪い、遅くなった……が、なんだこの状況?」
 アーサー殿下は汚いものを避けるようにダメアンを蹴飛ばす。

「はぁんっ!」
 嬉しそうに喘ぐダメアン。

「あれ……なんで私の名前知って……」

 確かアーサー殿下はエイデン家のことは知ってたけど、私の名前までは知らなかったはずだ。

「名前どころか……去年、7人目の姉弟が生まれたのだろう?」
「えええっ!?」
 
 驚く私に、彼は意地悪く微笑んだ。
 その笑顔……かっこいい……。


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