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6話 一体なんなの
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パーティ会場直前の廊下で、ダミアンと鉢合わせる。
「ディアナ! 探してたんだよ……!」
「私を? 恋人のエミリアじゃなくて?」
「エミリアは恋人じゃない。婚約者だ。俺はディアナと恋人になりたい」
「何言ってんの!? あんた一体なんなのよ!」
私はそう言ってダミアンの頬に強烈なビンタを食らわせた。
「いっ……な、何するんだ!」
「うるさい! 何で私なのよ!? 私のどこがいいのよ!? エミリアのほうが100倍可愛いじゃない!」
「何でって……そう言う男勝りなところが……その……」
ダミアンはそう言ってデレる。
「はぁ? ドMな訳!?」
「ドMかも……しれない……」
ダミアンはまたしてもデレる。
「もう……いい加減にして……」
私は自然と涙が出てくる。
「あんたがそうやってめちゃくちゃするせいで……エミリアは傷付かなきゃいけないし、私は……好きな人から逃げ出さなきゃいけないし……何にも良いことなんかないのよ……」
「好きな……人?」
「アーサー殿下よ! 私は1周目からずっと……! 何周したって何ループしたって、アーサー殿下が神推しなのよ! せっかくアーサー殿下とああやって出会えたのに、こんな失礼なことして、もうおしまいよ……」
「何周だとかループだとかって……何? それに、アーサー殿下とダメになっちゃったなら、俺が慰めてあげるよ」
「あんたってマジでクズなことしか言わないのね。婚約したんだったら責任持って婚約者を幸せにしなさいよ……! 貴族だからって何でも簡単に手に入ると思わないで! もう、私たちに近付かないで! あんたなんか大ッ嫌い!」
私はそこまで一気に泣き叫ぶと、廊下を走って校舎の外に出る。
夜の校庭はところどころに灯りがあるものの、しんと静まり返って私の嗚咽が響きわたってしまっていた。
「うぅ……ぐすんっ……ひっく……」
もう1回ループしよ。根本的に考え直さないと……。
私は泣きながら時計を取り出し、突起を押そうとする。
その瞬間、私の大好きなあの人が私の肩をぐっと引き寄せた。
「ディアナ!」
「え……アーサー殿下……!?」
ポチッ。
「あっ……押しちゃった……」
⸺⸺⸺
⸺⸺
⸺
⸺⸺4回目の正門。
チュンチュン……チュン。
「念願の、王宮学院だね。頑張ろうね、ディア……」
「あああああ! 戻っちゃった……!」
私は正門で愕然とする。
「ディアナ……? どうしたの……?」
「もしかして、あれって戻らなくても良かったんじゃ……」
「戻るって……?」
「あっ、エミリア! ごめんね何でもないの……!」
そうだ、どうせ私があの後いい感じになってもエミリアはあのクズに傷付けられたままなんだ。
それで満足するなんて、結局ただの悪役令嬢になっちゃうもんね。
「本当に……? 大丈夫……?」
「大丈夫、大丈夫。それよりエミリア、貴族の男子には気を付けて。婚約を申し込まれても、罠の可能性があるから絶対にすぐにOKしちゃだめよ?」
「急に婚約の話だなんて。私にそんな話がある訳ないよ~」
“ダメアン”はエミリアには近付けさせない。
もうこれしか、私たちが平和に切り抜けられる道はないのよ!
そんな私の決意の表情を、校舎のバルコニーから見下ろしている人物がいたなんて、この時の私は知る由もなかった。
その人物は見覚えのあるタオルを綺麗にたたんで胸ポケットにしまうと、校舎の中へと入っていった。
「ディアナ! 探してたんだよ……!」
「私を? 恋人のエミリアじゃなくて?」
「エミリアは恋人じゃない。婚約者だ。俺はディアナと恋人になりたい」
「何言ってんの!? あんた一体なんなのよ!」
私はそう言ってダミアンの頬に強烈なビンタを食らわせた。
「いっ……な、何するんだ!」
「うるさい! 何で私なのよ!? 私のどこがいいのよ!? エミリアのほうが100倍可愛いじゃない!」
「何でって……そう言う男勝りなところが……その……」
ダミアンはそう言ってデレる。
「はぁ? ドMな訳!?」
「ドMかも……しれない……」
ダミアンはまたしてもデレる。
「もう……いい加減にして……」
私は自然と涙が出てくる。
「あんたがそうやってめちゃくちゃするせいで……エミリアは傷付かなきゃいけないし、私は……好きな人から逃げ出さなきゃいけないし……何にも良いことなんかないのよ……」
「好きな……人?」
「アーサー殿下よ! 私は1周目からずっと……! 何周したって何ループしたって、アーサー殿下が神推しなのよ! せっかくアーサー殿下とああやって出会えたのに、こんな失礼なことして、もうおしまいよ……」
「何周だとかループだとかって……何? それに、アーサー殿下とダメになっちゃったなら、俺が慰めてあげるよ」
「あんたってマジでクズなことしか言わないのね。婚約したんだったら責任持って婚約者を幸せにしなさいよ……! 貴族だからって何でも簡単に手に入ると思わないで! もう、私たちに近付かないで! あんたなんか大ッ嫌い!」
私はそこまで一気に泣き叫ぶと、廊下を走って校舎の外に出る。
夜の校庭はところどころに灯りがあるものの、しんと静まり返って私の嗚咽が響きわたってしまっていた。
「うぅ……ぐすんっ……ひっく……」
もう1回ループしよ。根本的に考え直さないと……。
私は泣きながら時計を取り出し、突起を押そうとする。
その瞬間、私の大好きなあの人が私の肩をぐっと引き寄せた。
「ディアナ!」
「え……アーサー殿下……!?」
ポチッ。
「あっ……押しちゃった……」
⸺⸺⸺
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⸺⸺4回目の正門。
チュンチュン……チュン。
「念願の、王宮学院だね。頑張ろうね、ディア……」
「あああああ! 戻っちゃった……!」
私は正門で愕然とする。
「ディアナ……? どうしたの……?」
「もしかして、あれって戻らなくても良かったんじゃ……」
「戻るって……?」
「あっ、エミリア! ごめんね何でもないの……!」
そうだ、どうせ私があの後いい感じになってもエミリアはあのクズに傷付けられたままなんだ。
それで満足するなんて、結局ただの悪役令嬢になっちゃうもんね。
「本当に……? 大丈夫……?」
「大丈夫、大丈夫。それよりエミリア、貴族の男子には気を付けて。婚約を申し込まれても、罠の可能性があるから絶対にすぐにOKしちゃだめよ?」
「急に婚約の話だなんて。私にそんな話がある訳ないよ~」
“ダメアン”はエミリアには近付けさせない。
もうこれしか、私たちが平和に切り抜けられる道はないのよ!
そんな私の決意の表情を、校舎のバルコニーから見下ろしている人物がいたなんて、この時の私は知る由もなかった。
その人物は見覚えのあるタオルを綺麗にたたんで胸ポケットにしまうと、校舎の中へと入っていった。
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