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5話 最っ低
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⸺⸺3回目の入学式。
3ヶ月後の中間考査後の立食パーティでアーサー殿下といい感じになれることが分かってしまった私は、もう1度立食パーティに挑むことにした。
そう言えば時計に良い機能がついていたような……。
入学式後の寮の個室で時計を取り出すと、その針を少し回してみる。
そしてカレンダーを見てみると……。
中間考査の当日の早朝だった。
やっぱりそうだ。自分の部屋で時計を回すと、前回のループと同じ結末をたどれるんだ。
時計の1分は実際の1日。一周させれば2ヶ月後にスキップできる。ただし自室にいない日には戻れないからその点だけは注意だ。
私は中間考査を余裕で終わらせると、今度こそはと気合をいれて立食パーティへと参加した。
⸺⸺パーティ会場⸺⸺
前回と同じようにエミリアから離れてアーサー殿下と運命の出会いをする。
そして姉弟の話をした後、彼はこう切り出してくる。
「そう言えばさっきからグラスが進んでないようだが……酒は苦手なのか?」
来た。前回失敗した分岐点。
「あの……すみません、実はあまり飲めなくて……」
これで見捨てられちゃうならもう仕方がない。私はアーサー殿下とは縁がなかったと言うことだ。
「そうだったのか。それならノンアルコールのものに変えさせよう。何も飲めないのでは辛いだろう」
「えっ、そんなこと出来るんですか……?」
私は拍子抜けする。
「もちろんできるさ。ちょっと待っていてくれ、すぐに戻る」
アーサー殿下は私からグラスを受け取ると、使用人のところへと歩いていった。
何だ、無理して飲めるフリする必要なかったんだ。それにアーサー殿下、優しくてキュンキュンするなぁ……。
はぁ、これで一安心。
そう思ったのもほんの束の間。
私はエミリアがグラスを置いてパーティ会場から飛び出て行くのを目撃してしまった。
エミリアどうしたの!? 何があったの!?
前回のループの時、エミリアは私が倒れたらすぐに駆け付けてくれた。
アーサー殿下! ごめんなさい!
私はせめてもの悪あがきで、拾ってもらったタオルをテーブルのアーサー殿下のグラスのすぐ横に置いて、エミリアを追いかけた。
「エミリア! どうしたの!?」
広い廊下で彼女を呼び止める。
「ディアナ……」
彼女の声から彼女が泣いていることが分かる。
「あのダミアンて人になんか言われた?」
「うん……」
私は彼女の元へ駆け寄り、強く抱きしめた。
「一体何言われたの? あっちで話して?」
「うん……」
私はエミリアを校舎のバルコニーへ連れていき、一緒にベンチに腰掛けて話を聞いた。
「ダミアン様……ディアナのこと可愛ねってずっと言ってるから、私じゃなくてディアナが好きなの? って聞いちゃったの……」
うわぁ、ダミアン、結構しつこいな……。
「そしたら、なんて?」
「私に近付いたのは本命のディアナを落とすためだったって……そう言ったの……」
何その裏設定!? そんなの全然知らなかった……。
「何それ、だって、両家の顔合わせもしたんでしょ?」
「うん……」
「それなのにそんなの……最低すぎるじゃない! それだったら最初から私に来れば良くない? まぁ、私はあんなやつお断りだけど。あ……ごめん、エミリアはダミアンのこと好きだったよね……」
「あのね、最初私にディアナのこと聞こうとしたんだって。でも、私のこと見たらやっぱり私も可愛いとかでノリで婚約申し込んじゃったって……でも、ディアナのこと見たらやっぱりディアナの方が良くなったって……」
「何それ! マジで最っ低! あんなやつもうダミアンじゃなくて“ダメアン”よ!」
私がプンプンに怒ってそう言うと、エミリアはぷっと吹き出した。
「あはは、それ良いね……! 私も、ダメアンって呼んじゃお」
エミリアはツボに入ったようでしばらくクスクスと笑っていた。
そんなエミリアを見て、私はある決断をする。
「私、ちょっとあいつに一言言ってくるから! エミリアは先部屋に戻ってて」
「え、ディアナ……!?」
驚く彼女をよそに、私はパーティ会場へと戻っていった。
3ヶ月後の中間考査後の立食パーティでアーサー殿下といい感じになれることが分かってしまった私は、もう1度立食パーティに挑むことにした。
そう言えば時計に良い機能がついていたような……。
入学式後の寮の個室で時計を取り出すと、その針を少し回してみる。
そしてカレンダーを見てみると……。
中間考査の当日の早朝だった。
やっぱりそうだ。自分の部屋で時計を回すと、前回のループと同じ結末をたどれるんだ。
時計の1分は実際の1日。一周させれば2ヶ月後にスキップできる。ただし自室にいない日には戻れないからその点だけは注意だ。
私は中間考査を余裕で終わらせると、今度こそはと気合をいれて立食パーティへと参加した。
⸺⸺パーティ会場⸺⸺
前回と同じようにエミリアから離れてアーサー殿下と運命の出会いをする。
そして姉弟の話をした後、彼はこう切り出してくる。
「そう言えばさっきからグラスが進んでないようだが……酒は苦手なのか?」
来た。前回失敗した分岐点。
「あの……すみません、実はあまり飲めなくて……」
これで見捨てられちゃうならもう仕方がない。私はアーサー殿下とは縁がなかったと言うことだ。
「そうだったのか。それならノンアルコールのものに変えさせよう。何も飲めないのでは辛いだろう」
「えっ、そんなこと出来るんですか……?」
私は拍子抜けする。
「もちろんできるさ。ちょっと待っていてくれ、すぐに戻る」
アーサー殿下は私からグラスを受け取ると、使用人のところへと歩いていった。
何だ、無理して飲めるフリする必要なかったんだ。それにアーサー殿下、優しくてキュンキュンするなぁ……。
はぁ、これで一安心。
そう思ったのもほんの束の間。
私はエミリアがグラスを置いてパーティ会場から飛び出て行くのを目撃してしまった。
エミリアどうしたの!? 何があったの!?
前回のループの時、エミリアは私が倒れたらすぐに駆け付けてくれた。
アーサー殿下! ごめんなさい!
私はせめてもの悪あがきで、拾ってもらったタオルをテーブルのアーサー殿下のグラスのすぐ横に置いて、エミリアを追いかけた。
「エミリア! どうしたの!?」
広い廊下で彼女を呼び止める。
「ディアナ……」
彼女の声から彼女が泣いていることが分かる。
「あのダミアンて人になんか言われた?」
「うん……」
私は彼女の元へ駆け寄り、強く抱きしめた。
「一体何言われたの? あっちで話して?」
「うん……」
私はエミリアを校舎のバルコニーへ連れていき、一緒にベンチに腰掛けて話を聞いた。
「ダミアン様……ディアナのこと可愛ねってずっと言ってるから、私じゃなくてディアナが好きなの? って聞いちゃったの……」
うわぁ、ダミアン、結構しつこいな……。
「そしたら、なんて?」
「私に近付いたのは本命のディアナを落とすためだったって……そう言ったの……」
何その裏設定!? そんなの全然知らなかった……。
「何それ、だって、両家の顔合わせもしたんでしょ?」
「うん……」
「それなのにそんなの……最低すぎるじゃない! それだったら最初から私に来れば良くない? まぁ、私はあんなやつお断りだけど。あ……ごめん、エミリアはダミアンのこと好きだったよね……」
「あのね、最初私にディアナのこと聞こうとしたんだって。でも、私のこと見たらやっぱり私も可愛いとかでノリで婚約申し込んじゃったって……でも、ディアナのこと見たらやっぱりディアナの方が良くなったって……」
「何それ! マジで最っ低! あんなやつもうダミアンじゃなくて“ダメアン”よ!」
私がプンプンに怒ってそう言うと、エミリアはぷっと吹き出した。
「あはは、それ良いね……! 私も、ダメアンって呼んじゃお」
エミリアはツボに入ったようでしばらくクスクスと笑っていた。
そんなエミリアを見て、私はある決断をする。
「私、ちょっとあいつに一言言ってくるから! エミリアは先部屋に戻ってて」
「え、ディアナ……!?」
驚く彼女をよそに、私はパーティ会場へと戻っていった。
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