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5話 妖精王
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⸺⸺ユグドラ城⸺⸺
「ティニー殿下、こちらがオベロン陛下のおられるユグドラ城です」
「皆さん、ここまで連れてきてくださりありがとうございます」
ペコッとお辞儀をすると、皆「まだ小さいのになんて礼儀正しいお人なんだ」と感動をしながらその場を去っていった。
皆が門番に話を通してくれていたため、玉座の間まで一直線だった。
⸺⸺玉座の間前⸺⸺
「ティニー殿下、こちらで少々お待ち下さい」
「はい」
玉座の間を見張っていた衛兵にそう言われ、素直にその場で待つ。すると、中から男性の興奮気味な声が聞こえてきた。
「ティニーだって!? 本当にそう言ったのか!? 人間の女性は!? 人間の中で一番美しい女性だ、一緒じゃないのか!? 何をしているんだ早く入れないか!」
その後すぐに衛兵が戻ってきて、私を玉座の間へと通してくれた。
私の緊張が伝わっていたのか、タニアが小さな手のひらで私の指を握ってくれている。それに勇気をもらい、前へ進んで顔を上げた。
そこには、ストレートな銀の長髪にエメラルドグリーンの瞳、そして他の妖精族にはない、大きな妖精の羽を生やした若い男性が呆然とこちらを眺めて立ち尽くしていた。
「あの……私……」
「……ティニー……なのか……!?」
ポツンポツンと搾り出された言葉にこくんと頷く。すると、目の前の彼はボロボロと大粒の涙を流しながら私に抱き着いてきた。
「えっ、あの……」
「初めまして……! 私はお前の父親のオベロンだ……よく会いに来てくれた……本当に……」
声が震えまくっていて何を言っているのかよく分からなかったけど、多分そうやって言っていたと思う。そんなお父様につられたのか、それとも温かく迎えられて安心したからなのか、気付けば私もわんわんと泣いていた。
⸺⸺⸺
⸺⸺
⸺
「……さて、ティニー。せっかく会いに来てくれて、もう少しお前のぬくもりを堪能したいのだが……妖精王として、色々と聞かねばならない事がある」
お父様は落ち着きを取り戻すと、涙を拭ってそう言葉を発した。
「うん、私も、言わなきゃいけない事が沢山あるよ」
同じように涙を拭いて、そう返す。
「まず、7つの子がどうやってここまで来られたのだ」
「この、タニアに連れてきてもらったんだよ」
私が肩に乗っかっていたタニアを手ですくうと、彼女も急いで涙を拭いて、ビシッと姿勢を正した。
「タニア……? 君は森に棲むピクシーだね?」
『はい、タニアという名は、ティニーより……あ、いや、ティニー様より授かりました!』
お父様はクスッと笑う。
「そうか、仲が良いのだね。普段呼んでいる名で呼びなさい」
『あっ……はい……!』
「お父様、あのね、タニアに事情を話したら、お友達になってくれて、このユグドラシアまで案内してくれたの」
お父様はうんうんと相槌を打ってくれる。
「タニア。我が愛娘をここまで導いてくれて感謝する。褒美は後で取らせよう。何がほしいか考えておきなさい」
『ははーっ。ありがたき幸せ!』
「それで、ティニー……お母さんは、どうしているのだ……?」
そう悲しそうに尋ねるお父様を見て、私は言葉を失い、うつむいた。
「ティニー殿下、こちらがオベロン陛下のおられるユグドラ城です」
「皆さん、ここまで連れてきてくださりありがとうございます」
ペコッとお辞儀をすると、皆「まだ小さいのになんて礼儀正しいお人なんだ」と感動をしながらその場を去っていった。
皆が門番に話を通してくれていたため、玉座の間まで一直線だった。
⸺⸺玉座の間前⸺⸺
「ティニー殿下、こちらで少々お待ち下さい」
「はい」
玉座の間を見張っていた衛兵にそう言われ、素直にその場で待つ。すると、中から男性の興奮気味な声が聞こえてきた。
「ティニーだって!? 本当にそう言ったのか!? 人間の女性は!? 人間の中で一番美しい女性だ、一緒じゃないのか!? 何をしているんだ早く入れないか!」
その後すぐに衛兵が戻ってきて、私を玉座の間へと通してくれた。
私の緊張が伝わっていたのか、タニアが小さな手のひらで私の指を握ってくれている。それに勇気をもらい、前へ進んで顔を上げた。
そこには、ストレートな銀の長髪にエメラルドグリーンの瞳、そして他の妖精族にはない、大きな妖精の羽を生やした若い男性が呆然とこちらを眺めて立ち尽くしていた。
「あの……私……」
「……ティニー……なのか……!?」
ポツンポツンと搾り出された言葉にこくんと頷く。すると、目の前の彼はボロボロと大粒の涙を流しながら私に抱き着いてきた。
「えっ、あの……」
「初めまして……! 私はお前の父親のオベロンだ……よく会いに来てくれた……本当に……」
声が震えまくっていて何を言っているのかよく分からなかったけど、多分そうやって言っていたと思う。そんなお父様につられたのか、それとも温かく迎えられて安心したからなのか、気付けば私もわんわんと泣いていた。
⸺⸺⸺
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「……さて、ティニー。せっかく会いに来てくれて、もう少しお前のぬくもりを堪能したいのだが……妖精王として、色々と聞かねばならない事がある」
お父様は落ち着きを取り戻すと、涙を拭ってそう言葉を発した。
「うん、私も、言わなきゃいけない事が沢山あるよ」
同じように涙を拭いて、そう返す。
「まず、7つの子がどうやってここまで来られたのだ」
「この、タニアに連れてきてもらったんだよ」
私が肩に乗っかっていたタニアを手ですくうと、彼女も急いで涙を拭いて、ビシッと姿勢を正した。
「タニア……? 君は森に棲むピクシーだね?」
『はい、タニアという名は、ティニーより……あ、いや、ティニー様より授かりました!』
お父様はクスッと笑う。
「そうか、仲が良いのだね。普段呼んでいる名で呼びなさい」
『あっ……はい……!』
「お父様、あのね、タニアに事情を話したら、お友達になってくれて、このユグドラシアまで案内してくれたの」
お父様はうんうんと相槌を打ってくれる。
「タニア。我が愛娘をここまで導いてくれて感謝する。褒美は後で取らせよう。何がほしいか考えておきなさい」
『ははーっ。ありがたき幸せ!』
「それで、ティニー……お母さんは、どうしているのだ……?」
そう悲しそうに尋ねるお父様を見て、私は言葉を失い、うつむいた。
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