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第三章 三者同盟と忍び寄る悪意
41話 癒やしの雨
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「フィル……! 来たよ……!」
ニコラスがそう言っておどおどと近寄ってくる。それを見たグレンが「おー、マジか。マジで待ち合わせだったのか……」と呟いていた。
「ニコラス……自分から外に……!?」
ペリドット卿は目を真ん丸にしている。
「ありがとう、待ってたよニコラス。ちょっと待ってね」
僕は急いで救護班の荷物置き場にある魔道書を取りに行った。
「はい、まずはこの杖を持って」
「う、うん……」
僕はニコラスに木の杖を持たせると、魔道書の“上級範囲魔法”のところを開いて彼に魔法陣を見せる。
「この魔法陣を想像しながら、杖に魔力を送り込んでみて。手のひらに意識を集中させて、自分の中にある温かいものを押し出す感じだ」
「な、なにそれ意味分かんない……。でも、やってみるよ……こうかな?」
ニコラスの足元にすぐに大きな魔法陣が描かれていく。上級魔法は足元に魔法陣だ。
「完璧だよ、ニコラス! あとは呪文を唱えて!」
「う、うん……!」
⸺⸺上級範囲回復魔法⸺⸺
「セラフィアレイン……!」
ニコラスがそう唱えた瞬間、足元の魔法陣から強い光が溢れ出す。その光は天へと上りつめ、そして癒やしの雨となって町中に降り注いだ。
「なんだこの雨……! とても温かくて、傷が回復していくぞ!」
「ニコラス様の回復魔法らしいぞ!」
「ニコラス様が!?」
「ニコラス様、ありがとう!」
「ありがとうニコラス様、おかげで全快だ!」
庭で横たわっていた人たちが次々に立ち上がり、お屋敷の中からも元気になった人たちが顔を出した。
「う、嘘……これ、本当に僕が……!? フィル、君がこの魔法杖に何か仕掛けをしたんだろう?」
この状況でも自分を卑下するニコラスに、僕は思わず笑ってしまった。
「あははは。そんな事しないよ。ってか僕、今君がやった上級範囲魔法、実は使えないんだ」
「えっ、そうなの!?」
「だから言ったでしょ。町のみんなを助けられるのは、君しかいないって」
「本当にこれを僕が……信じられない……」
ニコラスはポタポタと大粒の涙を流していた。そんな彼のもとへ、ご両親が駆け付ける。
「ニコラス! すごいわ、あなたこんな事ができたのね!」
と、アマリア夫人。
「お母様……あのね、フィルが教えてくれたんだ。僕の……友だち」
その“友だち”という言葉に僕はキュンとした。
「そう。ありがとう、フィルおぼっちゃん」
「私からもお礼を言わせてくれ、ありがとう、フィルおぼっちゃん」
「あはは、良いよいいよそんな……」
僕が照れていると、向こうの方からグレンの愚痴が聞こえてくる。
「おーい、フィル~! そろそろこっち加勢してくれー!」
「あっ、ごめん、ぐれちゃ、今行く!」
「フィル、これ、君の魔法杖……!」
ニコラスがそう言って僕の胸に木の杖を押し付けてくる。
「ありがと、忘れてた!」
僕は魔法杖を受け取ると、急いでスライム討伐に参加をする。
ニコラスは魔力が尽きた回復魔道士から魔法杖を譲ってもらい、再び負傷者が現れたときに備えていた。
僕のもとにフウガがサッと現れる。
「フィル様、報告します。町中の負傷者の傷が回復。町の各所に魔石の森のスライムを確認。建物の中には出現しないようなので、皆建物の中へ避難させています」
「ありがとう! ふうちゃ最高!」
「はぅぁっ! ありがたき幸せ……!」
いくらシゴデキでもフウガはいつも通りのフウガだ。
「ふうちゃ、崩れ落ちないで。この庭のスライム討伐代わって。僕は町の結界の様子を見てくるから」
「承知!」
「れべちゃ、出番だ、行こう!」
「はい!」
形勢逆転。誰がこんな事したか知らないけど、僕たちは負けないから。
ニコラスがそう言っておどおどと近寄ってくる。それを見たグレンが「おー、マジか。マジで待ち合わせだったのか……」と呟いていた。
「ニコラス……自分から外に……!?」
ペリドット卿は目を真ん丸にしている。
「ありがとう、待ってたよニコラス。ちょっと待ってね」
僕は急いで救護班の荷物置き場にある魔道書を取りに行った。
「はい、まずはこの杖を持って」
「う、うん……」
僕はニコラスに木の杖を持たせると、魔道書の“上級範囲魔法”のところを開いて彼に魔法陣を見せる。
「この魔法陣を想像しながら、杖に魔力を送り込んでみて。手のひらに意識を集中させて、自分の中にある温かいものを押し出す感じだ」
「な、なにそれ意味分かんない……。でも、やってみるよ……こうかな?」
ニコラスの足元にすぐに大きな魔法陣が描かれていく。上級魔法は足元に魔法陣だ。
「完璧だよ、ニコラス! あとは呪文を唱えて!」
「う、うん……!」
⸺⸺上級範囲回復魔法⸺⸺
「セラフィアレイン……!」
ニコラスがそう唱えた瞬間、足元の魔法陣から強い光が溢れ出す。その光は天へと上りつめ、そして癒やしの雨となって町中に降り注いだ。
「なんだこの雨……! とても温かくて、傷が回復していくぞ!」
「ニコラス様の回復魔法らしいぞ!」
「ニコラス様が!?」
「ニコラス様、ありがとう!」
「ありがとうニコラス様、おかげで全快だ!」
庭で横たわっていた人たちが次々に立ち上がり、お屋敷の中からも元気になった人たちが顔を出した。
「う、嘘……これ、本当に僕が……!? フィル、君がこの魔法杖に何か仕掛けをしたんだろう?」
この状況でも自分を卑下するニコラスに、僕は思わず笑ってしまった。
「あははは。そんな事しないよ。ってか僕、今君がやった上級範囲魔法、実は使えないんだ」
「えっ、そうなの!?」
「だから言ったでしょ。町のみんなを助けられるのは、君しかいないって」
「本当にこれを僕が……信じられない……」
ニコラスはポタポタと大粒の涙を流していた。そんな彼のもとへ、ご両親が駆け付ける。
「ニコラス! すごいわ、あなたこんな事ができたのね!」
と、アマリア夫人。
「お母様……あのね、フィルが教えてくれたんだ。僕の……友だち」
その“友だち”という言葉に僕はキュンとした。
「そう。ありがとう、フィルおぼっちゃん」
「私からもお礼を言わせてくれ、ありがとう、フィルおぼっちゃん」
「あはは、良いよいいよそんな……」
僕が照れていると、向こうの方からグレンの愚痴が聞こえてくる。
「おーい、フィル~! そろそろこっち加勢してくれー!」
「あっ、ごめん、ぐれちゃ、今行く!」
「フィル、これ、君の魔法杖……!」
ニコラスがそう言って僕の胸に木の杖を押し付けてくる。
「ありがと、忘れてた!」
僕は魔法杖を受け取ると、急いでスライム討伐に参加をする。
ニコラスは魔力が尽きた回復魔道士から魔法杖を譲ってもらい、再び負傷者が現れたときに備えていた。
僕のもとにフウガがサッと現れる。
「フィル様、報告します。町中の負傷者の傷が回復。町の各所に魔石の森のスライムを確認。建物の中には出現しないようなので、皆建物の中へ避難させています」
「ありがとう! ふうちゃ最高!」
「はぅぁっ! ありがたき幸せ……!」
いくらシゴデキでもフウガはいつも通りのフウガだ。
「ふうちゃ、崩れ落ちないで。この庭のスライム討伐代わって。僕は町の結界の様子を見てくるから」
「承知!」
「れべちゃ、出番だ、行こう!」
「はい!」
形勢逆転。誰がこんな事したか知らないけど、僕たちは負けないから。
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