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33話 ジークの知らなかった真実

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 レイは、王都の外で控えていた馬車に乗り込んだ。そのためラックも一緒にその馬車に乗り込み、レイの隣へと腰掛ける。
 レイは窓の外からボーッと外を眺めていた。どこか寂しそうにも見える。

 やがて1時間ほど馬車に揺られ、目的地に到達する。
「お客さん、サルマン王国の王都サルマディール、到着だよ」
「うん、ありがとう。はい、お金」
「毎度どうも。いつものように帰りも乗っていくかい?」
「うん、帰りもお願い。いつもありがとう」

 レイは馬車を降り、サルマディールへと足を踏み入れた。

⸺⸺サルマン王国、王都サルマディール⸺⸺

「サルマン王国は意外過ぎたな……」
 と、ジーク。
「サルマン王国って、アレクシス様が留学してたっていう……」
「あぁ、そうだよ……」
「何でこんなところに……」

 レイを見守ると、彼はそのまま真っ直ぐサルマン城へと向かった。

⸺⸺サルマン城⸺⸺

「お疲れ様です。グランシアの使者、レイ・スカーレットです」
 彼はそう言って城の門番へ手紙の封筒を渡す。門番はそれを受け取るとすぐに中身を確認した。
「確かに。レイ殿、いつもお疲れ様です。どうぞこのまま玉座へとお進み下さい」
 門番は手紙を封筒へと戻し、快くレイを迎え入れた。

「使者……!? しかも玉座に通されるって、誰の書状だよ……!」
 ジークは目をパチクリとさせている。そうだよね、レイは平民だって言ってたもんね……。
 レイに付いて城内の階段を上り、玉座の間へと到達した。

⸺⸺玉座の間⸺⸺

「失礼致します。グランシアの使者レイ・スカーレット、ただいま参上致しました」
「おぉ、レイ殿。よく来てくれました」
 サルマンの国王様と思われるおじさんが、玉座から立ち上がってレイを出迎える。

「こちら我が国王からの書状です。魔力鑑定の結果が出たとの事でしたが」
 と、レイ。書状を受け取り頷く国王様。
「うむ。先日レイ殿に提供いただいた魔力痕まりょくこんだが、やはり一致したよ。信じたくはなかったがね……」
 サルマンの国王様は残念そうに言う。
「……そう、でしたか。では、王女暗殺の首謀者はやはり、我が国の第一王子、アレクシス殿下だと……」
「残念だが、その確たる証拠が集まってしまったようだ」

「何だと!? うおっ!」
 ジークが声を荒げて水晶を掴もうとし、そのままスカッと床へ突っ伏す。
『こら、ジーク。今重要な場面であろう。静かに見ておれ』
 ラグーンにそう怒られ、ジークは「だな、わりぃ……」とショボくれた。

 水晶のやり取りへと戻る。
「はぁ……やっぱそうなんですね……」
 レイの深いため息が聞こえてきた。
「レイ殿には、結果的に自国の王子の罪を証明するために動いてもらった形になってしまった……辛いであろう、すまなかった」
「いえ、僕はただ……親友のお兄さんの潔白が証明できればと思って協力していただけですので。その親友にも今日遂に『いつもどこ行ってるんだ』って、疑われちゃいましたけど……」
 レイは、あはは……と苦笑いをした。
「そうであったか……。ジークハルト王子は父親の意志を継ぐ国民の良き理解者であると私は感じておる。こうなってしまった以上彼もこの事を知るであろう。そのため、レイ殿の疑いは直ぐにでも晴れよう。そうだ、ジークハルト王子に宛てた書状を用意しよう。少し待ちなさい」
「そんな……お心遣い感謝いたします」
 レイは深くお辞儀をした。

『ジークよ。まだ見る必要あるか? これ以上は彼の良心を踏みにじる思いなのだが』
 と、ラグーン。ジークは苦しい表情を浮かべていた。
「レイがグランシア城に帰ってくるまで見る。あいつがこれまでどんな思いで行動してきたのか。俺のあいつへの疑念の言葉がどれだけ愚かだったか、ちゃんと知るために」
「ジーク……この調子だと、レイはセルフィス王国との繋がりもなさそうだね」
「んだな。となると……次はセドリックを疑わなきゃならなくなる」
「この調子だとセドリックも違いそうだけど……」

「だと良いけどな。つーか、この水晶って、ユアは触れるか?」
 不意にそう聞かれ、水晶に触れようとしてみると、ひんやりとした感触が手のひらへと伝わってきた。
「あ、触れるみたい」
「じゃ、それ持って親父んとこ行こう。きっとレイは真っ直ぐグランシア城に報告に行くはずだ。待ち構えて謝りたいんだ」
「なるほど、良い考え! お、案外軽い」
 私は水晶を軽く持ち上げる。
 そして、みんなでグランシア城へと向かった。レイが帰ってくると思って。

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