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33話 裁きの時-オスカーside-
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「今のは一体……!?」
「とても禍々しい雰囲気を感じます」
レベッカとフローラは心配そうにアーレンスの方面を見つめている。
「お前たちは屋敷に戻っていろ。俺はアーレンス城の確認に行ってくる」
「アーレンス城? 確かにお城の方面からでしたが……」
と、フローラ。
「アーレンス城下町の人々の安否が心配だ。とにかくお前たちは屋敷へ」
「とても、禍々しいです。オスカー様……そんなところへ行かないでください……」
「大丈夫だフローラ、必ず無事に戻ってくる。フローラ、頼む……」
「フローラ、オスカー様の仰るとおり、戻っていよう?」
「うん……」
レベッカも説得に加わってくれて、何とかフローラを頷かせることができた。
⸺⸺
彼女らと別れると、馬車を引いていた馬のみを借り、アーレンス城へと急ぐ。
すると、城全体が真っ黒な霧で覆われて、中の確認は全くできない状態だった。
⸺⸺アーレンス城前⸺⸺
「皇帝陛下!」
城門で城下町の人々から話を聞いている陛下を発見し、馬を降りて駆け寄る。
「オスカーか! お主が来てくれたのなら心強い」
「これが、黒い地脈の暴走なのですね……」
「うむ。噂にしか聞いておらんかったが、まさかこんな帝国に近いところで見ることになろうとは……」
「とにかく城下町の人々は無事のようで安心しました。それにしても、中の様子が全く分かりませんね……」
「まぁ、噂通りなのであれば城の使用人から王家の者まで、皆が“黒魔症”を発症しておることであろう」
黒魔症とは、黒い気を吸い込んでゾンビのようになることだ。
皇帝陛下のその言葉に、周りの人々からは「ざまぁみろ」との声が口々に上がっていた。正直、俺も一緒になってそう言いたい。
だが皇帝陛下の手前、既のところで理性を保っていた。
⸺⸺
その日はひとまず城の周りに結界を張って黒い気がこれ以上広がらないようにし、黒魔症の奴らが結界から外に出られないようにした。
そして黒い気が収まるまで放置することになり、皇帝陛下からの招集があるまでは俺も屋敷待機となった。
急に仕事が休みになった俺はその数日間フローラから片時も離れなかった。彼女が家に来てからまとまった休みなど初めてで、外出こそできなかったものの、たくさん話をし、たくさん愛し合った。
⸺⸺そして皇帝陛下からの招集があり、再びアーレンス城を訪れる。
「まるで何十年も放置されたかのような廃墟だな」
黒い気が晴れて見えるようになった城は、その黒い気の影響からか、驚くほどに朽ち果てていた。
「うむ、オスカーよ。足元に気を付けて中の殲滅をしてきてくれ」
「承知」
俺は全良心に蓋をし殲滅モードに自身を切り替え、ゆっくりと城内へと侵攻する。
すると、目を赤黒く光らせて腕の向きもおかしいエリーゼがトボトボとこちらへと歩いてきた。
「蠱毒を勝ち残ったのはお前か、エリーゼ。まるでゴキブリのごとき生命力だな」
「アァ……タベ……ル……オナカ……スイ……タァ……」
「この期に及んでまだ俺を食おうとしているのか、笑えるな。裁きの時だ、エリーゼ。貴様はただでは殺してやらん。少しずつ、甚振ってやろう」
あくまで少しずつ、まるでフローラがこれまでされてきたことを全て返すかのように、少しずつ、エリーゼの体力を削っていった。
その間エリーゼは悶え苦しみ続け、やがて体力の尽きた奴の身体は、黒い霧となって塵も残さずに消えていった。
「殲滅完了」
ふぅっと一息ついて、皇帝陛下の待つ城外へと戻っていった。
「とても禍々しい雰囲気を感じます」
レベッカとフローラは心配そうにアーレンスの方面を見つめている。
「お前たちは屋敷に戻っていろ。俺はアーレンス城の確認に行ってくる」
「アーレンス城? 確かにお城の方面からでしたが……」
と、フローラ。
「アーレンス城下町の人々の安否が心配だ。とにかくお前たちは屋敷へ」
「とても、禍々しいです。オスカー様……そんなところへ行かないでください……」
「大丈夫だフローラ、必ず無事に戻ってくる。フローラ、頼む……」
「フローラ、オスカー様の仰るとおり、戻っていよう?」
「うん……」
レベッカも説得に加わってくれて、何とかフローラを頷かせることができた。
⸺⸺
彼女らと別れると、馬車を引いていた馬のみを借り、アーレンス城へと急ぐ。
すると、城全体が真っ黒な霧で覆われて、中の確認は全くできない状態だった。
⸺⸺アーレンス城前⸺⸺
「皇帝陛下!」
城門で城下町の人々から話を聞いている陛下を発見し、馬を降りて駆け寄る。
「オスカーか! お主が来てくれたのなら心強い」
「これが、黒い地脈の暴走なのですね……」
「うむ。噂にしか聞いておらんかったが、まさかこんな帝国に近いところで見ることになろうとは……」
「とにかく城下町の人々は無事のようで安心しました。それにしても、中の様子が全く分かりませんね……」
「まぁ、噂通りなのであれば城の使用人から王家の者まで、皆が“黒魔症”を発症しておることであろう」
黒魔症とは、黒い気を吸い込んでゾンビのようになることだ。
皇帝陛下のその言葉に、周りの人々からは「ざまぁみろ」との声が口々に上がっていた。正直、俺も一緒になってそう言いたい。
だが皇帝陛下の手前、既のところで理性を保っていた。
⸺⸺
その日はひとまず城の周りに結界を張って黒い気がこれ以上広がらないようにし、黒魔症の奴らが結界から外に出られないようにした。
そして黒い気が収まるまで放置することになり、皇帝陛下からの招集があるまでは俺も屋敷待機となった。
急に仕事が休みになった俺はその数日間フローラから片時も離れなかった。彼女が家に来てからまとまった休みなど初めてで、外出こそできなかったものの、たくさん話をし、たくさん愛し合った。
⸺⸺そして皇帝陛下からの招集があり、再びアーレンス城を訪れる。
「まるで何十年も放置されたかのような廃墟だな」
黒い気が晴れて見えるようになった城は、その黒い気の影響からか、驚くほどに朽ち果てていた。
「うむ、オスカーよ。足元に気を付けて中の殲滅をしてきてくれ」
「承知」
俺は全良心に蓋をし殲滅モードに自身を切り替え、ゆっくりと城内へと侵攻する。
すると、目を赤黒く光らせて腕の向きもおかしいエリーゼがトボトボとこちらへと歩いてきた。
「蠱毒を勝ち残ったのはお前か、エリーゼ。まるでゴキブリのごとき生命力だな」
「アァ……タベ……ル……オナカ……スイ……タァ……」
「この期に及んでまだ俺を食おうとしているのか、笑えるな。裁きの時だ、エリーゼ。貴様はただでは殺してやらん。少しずつ、甚振ってやろう」
あくまで少しずつ、まるでフローラがこれまでされてきたことを全て返すかのように、少しずつ、エリーゼの体力を削っていった。
その間エリーゼは悶え苦しみ続け、やがて体力の尽きた奴の身体は、黒い霧となって塵も残さずに消えていった。
「殲滅完了」
ふぅっと一息ついて、皇帝陛下の待つ城外へと戻っていった。
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