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15話 あえての徒歩で

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 翌日。
 宿屋で朝食を取り、トレイルの町から街道へと出た。
『我があるじよ、このまま街道を徒歩で行くのか? 我に乗れば一瞬でサンクの町へと着くぞ』
 ファフニールは役に立ちたいのか、ウズウズしているような素振りを見せる。

「んー、それなんだが、ジェニーの疲れも取れた事だし、あえて徒歩で行ってみるのも良いと思うんだが、ジェニーはどうだ? 歩くのはしんどいか?」

 私はうーんと考える。昨日みたいにファフニールに乗ってひとっ飛びも確かに気持ちが良いけど、こういうのどかな街道をシャルル殿下とトボトボのんびり歩くのも、それはそれで幸せな気がする。
 それに、殿下はきっと村に缶詰だった私に色んな経験をさせてくれようとしている。そんな彼の気持ちが嬉しかった。

「私、歩いて行きたい」
『ガーン……!』
 ファフニールはどうやら役に立てず拗ねてしまったようで、私の頭の上でふて寝を始めた。
「すまんなファフニール。聖域に行く時は頼りにしているぞ。ならばのんびりと歩いて行こう」
「うん」

⸺⸺サンク街道⸺⸺

 大きな街道を様々な人々が行き交っている。この人たちはきっとこの中に勇者と聖女がいるなんて夢にも思っていないだろうな。

 5分ほど歩いたところで、シャルル殿下が手を差し出してくる。
「ジェニー……その……手を、繋いでもいいか?」
 彼は手を差し出したままそう言うとすぐにそっぽを向いてしまった。彼はかなり照れ屋さんだ。
「はい、喜んで」
 私がすぐにその手を取ると、彼は少しだけこちらを向いてはにかみ、ギュッと握り返してくれた。

『もうキスも済ませてんのに今更手繋ぐくらいでモジモジするな。むっつりあるじ
「おまっ、うるさいぞ!」
「あはは……」
 ファフニールはまだ拗ねているようだ。ごめんね、次は背中に乗っけてね。

 手を繋いで他愛もない話をしながら街道をトボトボと進んでいく。
 こうしていると、勇者だとか聖女だとか、そんなことはどうでも良くて。ただただ恋人とデートを楽しんでいるような、そんな感覚に囚われた。

 しかし、次のシャルル殿下の一言で、やはり使命ある者同士なんだと、思い知らされる事となる。
「俺……頭おかしい奴だと思われるかもしれんが……前世の記憶があるんだ」
「えっ!?」
 驚いて目を真ん丸にすると、殿下は「あぁ、やはり今のは聞かなかった事に……!」と慌てふためいていたので、私もすかさずこう告げた。

「私もだよ! 前世は薬屋の娘でした!」
「何っ!?」
 今度は殿下が目を真ん丸にした。
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