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20話 リーテン城を制圧せよ

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⸺⸺暗黒魔法⸺⸺

「アビス=オスクーロ」

 エイダの手から黒いモヤの魔法が放たれる。
 私がそれを『魔法吸収』という技で無効化しようとすると、クラウスが私を抱えて飛び退いた。

「クラウス?」
「シェリー、あれは吸収しないほうがいい。気配が魔物のそれと同等だ」
 クラウスは冷静に判断している。

「ええ、分かったわ。助けてくれてありがとう」

「ふん……あんたのその新しい彼、なかなか良い勘しているわ。こんなゴミ王子要らないから、その彼あたしに寄越しなさいよ」
 エイダはそう言ってジョン王子を部屋の隅へと蹴り飛ばした。
「ぐはっ……」
 ジョン王子はそのまま気を失う。

「お前には一応感謝を述べておこう」
 クラウスがそう口を開く。

「あら、なぁに? あなたもこちらへ来たかったの?」
 エイダは頬を赤らめモジモジしている。

「お前がシェリーをこの城から追い出そうとしたおかげで、俺はシェリーを取り戻すことができた。俺たちは、ここでお前を倒して2人で幸せに暮らすことにするよ。だからお前は安心して死んでほしい」

 クラウスがそう言うと、エイダの表情が一変してホラーな表情になる。
「……は? ふざけんなよクソ野郎が……!」

 エイダは怒りのせいか黒いモヤをどんどんと噴出し、少しずつ苦しそうな表情へと変わる。

「あぁぁ……ウザい……ウザいウザいウザい! くっ、力が……抑えられない……!」

 私はその魔力の出力がエイダの身体の許容範囲を遥かに超えていることを感じとる。

「あなた……そのままだと自滅するわよ?」

「うるさいうるさい、うるさい! 元はと言えばお前があのゴミをしっかり管理していなかったから! あたしのところに来て、リーテンもあたしの物にできるって欲が出たのよ! 全部、全部あんたのせいだ! ……この身体はもう持たない……! ならせめて、この城を道連れにしてやる!」

 エイダはそう言うとありったけの黒いモヤを身体へと吸収し始めた。

「そんな、ダメよ、身体が破裂するわ!」

「シェリー! 技を発動する前に俺らでケリをつける!」
「クラウス……分かったわ! でもどうするの? 中途半端な攻撃じゃ刺激を与えておしまいよ?」

「シェリーは俺の剣へ全ての魔力を解き放ってくれ。俺がこの剣で全てを断ち切ってやる」
 クラウスはそう言って剣をかかげる。

「分かったわ……いくわよ……」

⸺⸺上級魔法⸺⸺

「ダークルイン!」

 私の放った闇の魔法がクラウスの剣へとまとわりつく。

 そしてクラウスは高く飛び上がり、力を溜めるエイダへ剣を振り下ろした。

⸺⸺奥義 光神招来⸺⸺

 私の闇の力とクラウスの光の力が剣で交わり、1つの大きな光の塊へと姿を変える。

 そして、その光はクラウスの剣から真っ直ぐに落下し、エイダ全体を覆うように大きな光の柱が立ち、城の天井を突き破った。


⸺⸺連携奥義 大いなる覇柱グランデ=コルムナ⸺⸺


「なんと、すさまじい光の柱だ!」
 国王陛下は目元を手で庇いながらそう叫ぶ。

 クラウスが技を放って降り立った後もその光の柱は収まることなく空へと突き上がり、私はクラウスの隣へ並んで2人で見上げていた。

「私たち……こんなすごいことができたなんて……」
「見ろ、シェリー! エイダが消えていくぞ」

 クラウスに言われて目を凝らしてみると、強い光の中でエイダの身体がチリチリと灰になっていくのが確認できた。

「ホントだわ……魔物みたいに消えていってる」
「奴の力からは魔物と同質の力を感じたからかもしれんな」
「ええ……」

 やがて光が収まると、エイダの身体の最後の部分が塵になる瞬間を皆で目撃した。

「やったわ! 倒したわ!」
「あぁ!」

 私とクラウスは強く抱きしめ合い、勝利を称えあった。

 そして、リーテン国王陛下と王妃殿下からも最大限の労いの言葉をもらった。



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