【完結】婚約破棄をされたので、悪役令嬢の私は祖国の騎士団長様に愛されることにします

るあか

文字の大きさ
上 下
6 / 23

6話 アンカードという国

しおりを挟む

 国王陛下は長年他国と交流する中で垣間見た、アンカード王国の異様な一面を暴露する。

「この『シュトランゼ大陸』の中でも、最東端のアンカード王国は最も領土の小さい国だ。それは皆も知っているね」

 皆はうんうんとうなずく。

「更にその西隣にリーテン王国という小国が、そしてその2つを囲いこむように我々のステリア王国が領土を構えている」

 私は「はい」と相槌あいづちを打つ。

「我が国はすぐ隣のリーテン王国と同盟を結び友好を築いてきた。それが形となっていたのがシェリーとジョン王子の婚約だ。だが、アンカード王国に関しては、その国自体が閉鎖的な国家であり、今の今まで我が国とはほとんど関わりがなかったのだ」

「そうですわね。アンカード王家をパーティにご招待しても1度もご参加くださらないわ」
 と、ナターシャ王妃。

 それは私も聞いたことがある。
 他国との関わり合いを極力避け、小さな領土で細々と暮らしている国だ。

「それが最近、アンカード王国の港に謎の商船が多数行き来しているといううわさが入ってな。ついに他国との交流を開始したのかと思い、うちとも商品の取引をしてはどうかと書状を送ったことがあったが、それに対しての返事はなかった」

 それに対し私も意見を述べる。
「それはリーテン王国からしても同じでした。今回のエイダ王女の件に関してリーテン国王が会談の場を設けたいと交渉を続けているのですが、何の音沙汰もありません。エイダ王女本人に聞いても『あたしはジョン王子を愛しているから来た、それだけよ』と、言っておりました」

「なるほど、暗駆あんくの派遣先はアンカード王国ですか」
 と、アルフォンス王子。それに対しヨゼフ国王陛下はこくんとうなずいた。

「左様。ただエイダ王女の思惑も探るため、リーテン王国にも数人派遣をする。そうすればきっとシェリーの無実の証拠も掴めよう」

「ありがとうございます、国王陛下」
 私はサッと頭を下げる。

「良い。もしリーテン王国がシェリーを返してほしいと言ってきても、暗駆あんくからの情報を得るまでは渡す訳にはいかぬ。そのため、シェリーはひとまずクラウスの率いる騎士団へと身を置いてもらいたい」

「わ、私が騎士団に……?」
 どうしよう、クラウスと一緒にいられるってこと?

「自然に過ごしているように見せかけて、この国で1番安全なところで保護をするのだ。役職等はクラウスに一任する。クラウスよ、何がなんでもシェリーを守るのだ」

「はっ! お任せ下さい!」
 クラウスは勢い良く立ち上がりながら敬礼をした。

 クラウス張り切ってる……ちょっと、嬉しいな。

⸺⸺

 王族による会議は一旦区切りが付き、私は荷物整理のために実家を訪れ、両親ともゆっくりと話をした。

 2人とも、私をリーテン王国へ送り出したこと、すごく後悔をしていた。
 そんなの仕方がないことなのに。でも、私は両親から確かな愛情を感じ、帰って来て良かったと思ったのであった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?

鶯埜 餡
恋愛
 バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。  今ですか?  めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?

理不尽な理由で婚約者から断罪されることを知ったので、ささやかな抵抗をしてみた結果……。

水上
恋愛
バーンズ学園に通う伯爵令嬢である私、マリア・マクベインはある日、とあるトラブルに巻き込まれた。 その際、婚約者である伯爵令息スティーヴ・バークが、理不尽な理由で私のことを断罪するつもりだということを知った。 そこで、ささやかな抵抗をすることにしたのだけれど、その結果……。

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?

ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。 レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。 アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。 ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。 そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。 上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。 「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

【完結】仕事を放棄した結果、私は幸せになれました。

キーノ
恋愛
 わたくしは乙女ゲームの悪役令嬢みたいですわ。悪役令嬢に転生したと言った方がラノベあるある的に良いでしょうか。  ですが、ゲーム内でヒロイン達が語られる用な悪事を働いたことなどありません。王子に嫉妬? そのような無駄な事に時間をかまけている時間はわたくしにはありませんでしたのに。  だってわたくし、週4回は王太子妃教育に王妃教育、週3回で王妃様とのお茶会。お茶会や教育が終わったら王太子妃の公務、王子殿下がサボっているお陰で回ってくる公務に、王子の管轄する領の嘆願書の整頓やら収益やら税の計算やらで、わたくし、ちっとも自由時間がありませんでしたのよ。  こんなに忙しい私が、最後は冤罪にて処刑ですって? 学園にすら通えて無いのに、すべてのルートで私は処刑されてしまうと解った今、わたくしは全ての仕事を放棄して、冤罪で処刑されるその時まで、押しと穏やかに過ごしますわ。 ※さくっと読める悪役令嬢モノです。 2月14~15日に全話、投稿完了。 感想、誤字、脱字など受け付けます。  沢山のエールにお気に入り登録、ありがとうございます。現在執筆中の新作の励みになります。初期作品のほうも見てもらえて感無量です! 恋愛23位にまで上げて頂き、感謝いたします。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

魅了から覚めた王太子は婚約者に婚約破棄を突きつける

基本二度寝
恋愛
聖女の力を体現させた男爵令嬢は、国への報告のため、教会の神官と共に王太子殿下と面会した。 「王太子殿下。お初にお目にかかります」 聖女の肩書を得た男爵令嬢には、対面した王太子が魅了魔法にかかっていることを瞬時に見抜いた。 「魅了だって?王族が…?ありえないよ」 男爵令嬢の言葉に取り合わない王太子の目を覚まさせようと、聖魔法で魅了魔法の解術を試みた。 聖女の魔法は正しく行使され、王太子の顔はみるみる怒りの様相に変わっていく。 王太子は婚約者の公爵令嬢を愛していた。 その愛情が、波々注いだカップをひっくり返したように急に空っぽになった。 いや、愛情が消えたというよりも、憎悪が生まれた。 「あの女…っ王族に魅了魔法を!」 「魅了は解けましたか?」 「ああ。感謝する」 王太子はすぐに行動にうつした。

悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。 二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。 けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。 ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。 だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。 グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。 そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

処理中です...