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14話 私たちの愛の巣(願望)

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 私たちは時折ハーブティーやクッキーの休憩を挟みながら、ボロボロの王家の別荘を端から順に修復していった。

 同じ目的のもと動いているため自然に会話も弾み、2人の笑顔もうんと増えた。

 そして、10日ほど作業を続けると、最初に建てた小屋も離れとして行けるように廊下でつなぎ、ついに新築のような大きな別荘が完成したのである。

「できたー!」
「やった、やったぞエマ!」

 私たちは思わず抱き合いそうになり、寸前のところで踏み止まる。
「うわぁぁ、危ない危ない……!」
「すまん……調子に乗った……」

 オスカーの呪いのことも今は2人の中での当たり前の共通認識になり、オスカーも怯えるよう言うよりは、“触らないように気をつける”ようになった。

⸺⸺

 私たちはその完成した『愛の巣(願望)』を一緒に隅々まで見て回った。

 外壁も頑丈に作るためにお城の城壁を使ったので、別荘というよりはお城のような雰囲気だった。

「私たちいつまでここにいられるかな?」
 私は一緒にロビーでシャンデリアを見上げるオスカーへ問いかける。

「前はいつまでいるかって聞いてきたのに、今は“いつまでいられるか”なんだな」
 彼はそう言って私へ優しく微笑みかける。

「うん……私、ここにずっといたい」
 それはオスカーが隣に居てくれないと意味がないけど。

 私はオスカーが好き。

 初めて彼に会った時のトキメキはもしかしたらイケメンへの憧れだったかもしれないけど、今はハッキリと、彼に恋をしている自分がいる。

「そうだな。ここでこうやって世間から離れて何も考えずに生きるのも悪くないな……」
 そういう彼は、なぜか少し寂しそうに目を細めた。

「オスカー、またなんか悩んでる」
「ははっ……お前にはすぐバレるな……」

「どうしたの?」
「これでお前に触れられたら……これ以上のものはないのになぁってな……」

「あー、またそんなこと考えて」
「そう言われると思ったから黙ってたんだよ」

 そんな時、オスカーはある気配を察知する。
「おっ、この気配は……」
「どうしたの?」

「ノエルが帰ってきたな」
 オスカーはそう言って窓から海岸を眺めていた。

「ノエル! 早速迎えに行こう!」
「そうだな」

 私たちは大きく手を振りながら、少し離れた海岸で潜水艇から降りてくるノエルを出迎える。

 すると、彼もそんな私たちに気付き、大きく手を振り返してくれた。

「お前ら俺がちょっと離れてる間に城なんか造ってんじゃねーかよ!」
 ノエルは合流するなり愛の巣(願望)を見上げる。

「実はさっき完成したところなんだよ」
「お前、まさかこれ完成するの海中で待ってたのか?」
 私の言葉に続いてオスカーがノエルを茶化す。

「いいなぁ世間から隔離されたお宅らは幸せそうで……」
 ノエルはそう言ってやれやれとため息をついた。

「あれ……なんか雲行きが怪しい……?」
 私は苦い顔をする。

「まぁな……聞きてぇか?」
「聞きたくないが……教えてくれ」
 オスカーも現実に戻されたかのようにため息をついた。

「じゃ、大豪邸にお邪魔しますよっと」
「ハーブティー淹れるね」
「クッキーもあるぞ」

「オスカー……楽しそうで何よりだぜ……」
 ノエルは再びため息をついた。


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