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最終章 刻の軌跡
217話 結界の中へ
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時は遡り最後の塔の結界が破壊された頃、スティバン城の前では……。
「おぉ、結界が消えていくぞ! アイツら無事破壊出来たんだな!」
ジンが立ち上がり喜びを表現する。その隣では、クロノが魔刀鬼丸の柄に手をかけていた。
「結界が消えるってことは、あのドラゴンが自由になるって事だぞ」
「おっと、そうだった……」
ハミルトン卿が皆へと呼びかける。
「予定通り隊長、副隊長らであのドラゴンを討伐する! シスネ殿は白の領域でサポートを。クロノ君はドラゴンが城門から移動をしたら城内へと侵入してくれ!」
「了解!」
「承知です!」
クロノがハミルトン卿の隣へと並ぶ。
「俺も討伐に参加しなくて本当にいいのか?」
「大丈夫だ。我々だって戦いは本職なんだ。あれくらいのドラゴン、君の力無しで討伐してみせるさ。それよりも結界が壊された今、ユリウス皇帝の行動が危険視される。恐らく彼を対処できるのは君だけなんだ。頼む、行ってくれ!」
「……分かった。なら、ここは任せた」
『クロノ、俺も連れてって! 待ってるのは俺の身体だから!』
ポールがクロノの足にしがみつくと、クロノは軽く吹き出しながらポールをつまみ上げて自身の肩へと乗せた。
そしてパーシヴァルやジンがドラゴンを帝都の中央の大通りへと引きつけると、クロノはその脇を通り抜けてスティバン城へと侵入した。
⸺⸺スティバン城内⸺⸺
城内はガランとしており、ただ一つ大きな禍々しい気配だけが漂っていた。
『誰もいないね……。使用人たちは一体どこに……』
「とりあえず暗黒の気配は地下じゃなくて上の階からするな」
『黒い気の濃度もヤバイね……クロノは大丈夫なの?』
「あぁ、特に気にはなんねぇな……。マールージュ島の時よりも明らかに濃いはずなのに……まるで耐性が付いたみてぇだ」
『へぇ……魔力が戻ったことと関係があるのかな。まぁ大丈夫なら、行こう。上へ』
「あぁ」
クロノはロビーの大階段を駆け上がり、迷うことなく上の階へと進んでいく。
「不思議だな……赤ん坊の頃しか住んでいなかったはずなのに、城の構造が当たり前のように思い出せる」
『前世からの記憶があるからだね。なら、俺と遊んでいた時の事も思い出せる?』
「あぁ。お前がソファの後ろに隠れて俺の名前を呼んで、俺がソファの後ろを覗くとお前がおどかしてくんだよな」
『わー。赤ちゃんにそこまで鮮明に覚えられてると逆に恥ずかしいな……』
「赤ちゃん言葉とか使ってたしな」
『やーめーてー』
「……お前が言い出したんだろ」
『いや、まぁそうなんだけど……。こんな切羽詰まった状況じゃなくてさ、もっとのんびりした時間が流れてるときに、こういう話したかったよねぇ』
「……出来るさ。もうすぐ」
『そうだよね。気配はここか……偉そうに玉座の間にいるのかよ』
クロノは3階の玉座の間へと到達する。そして一度大きく深呼吸をすると、扉を一気に押し開けた。
⸺⸺玉座の間⸺⸺
「おかしいな……赤目のお前かあの聖女さえ機能停止にすれば地上の人間なんてただのゴミ虫だと思ってたのにな」
ユリウス皇帝は玉座で足組をしており、クロノを見ると不機嫌そうにそう呟いた。
『お前らみたいに無理矢理契約で服従させるんじゃなくて、地上の人間には絆の力があるんだよ。やり方を間違えたな。郷に入っては郷に従えって言葉、知らないのか?』
「郷に入っては……ね。まぁ、いいや。クロノって言ったか。お前はこの身体をどうするつもりなんだ」
「こうするつもりだ」
クロノは血昇のアウラを発動させると、一瞬で間合いを詰め、ユリウスの喉元めがけて魔刀鬼丸を突き出した。
⸺⸺暗黒障壁⸺⸺
クロノの突きの攻撃を黒い気の壁が阻み、彼の足が止まる。
「おいおいおい。この身体の本体はそのぬいぐるみの中にいるんだろ? この身体が壊れたらそのぬいぐるみは一生そのままだろ」
ユリウスは玉座から跳び上がってクロノとの距離を取る。
『俺はとっくにぬいぐるみで生涯を終える覚悟が出来てる。人間を舐めすぎだ』
「はぁ? なんだこの身体、盾にもならないのか。使えないな……」
⸺⸺
クロノとユリウスの一騎打ちが始まったところで、帝都の本部のテントではルドガーが孤児院の仲間と共に不安そうに城を見上げていた。
「やべぇ……あれってまさか……」
彼が見上げているのは城の3階、玉座の間から続くバルコニーである。
そのバルコニーでは黒い気が扉を象っており、その周囲にはとてつもない量の黒い気が渦巻いていた。
「おぉ、結界が消えていくぞ! アイツら無事破壊出来たんだな!」
ジンが立ち上がり喜びを表現する。その隣では、クロノが魔刀鬼丸の柄に手をかけていた。
「結界が消えるってことは、あのドラゴンが自由になるって事だぞ」
「おっと、そうだった……」
ハミルトン卿が皆へと呼びかける。
「予定通り隊長、副隊長らであのドラゴンを討伐する! シスネ殿は白の領域でサポートを。クロノ君はドラゴンが城門から移動をしたら城内へと侵入してくれ!」
「了解!」
「承知です!」
クロノがハミルトン卿の隣へと並ぶ。
「俺も討伐に参加しなくて本当にいいのか?」
「大丈夫だ。我々だって戦いは本職なんだ。あれくらいのドラゴン、君の力無しで討伐してみせるさ。それよりも結界が壊された今、ユリウス皇帝の行動が危険視される。恐らく彼を対処できるのは君だけなんだ。頼む、行ってくれ!」
「……分かった。なら、ここは任せた」
『クロノ、俺も連れてって! 待ってるのは俺の身体だから!』
ポールがクロノの足にしがみつくと、クロノは軽く吹き出しながらポールをつまみ上げて自身の肩へと乗せた。
そしてパーシヴァルやジンがドラゴンを帝都の中央の大通りへと引きつけると、クロノはその脇を通り抜けてスティバン城へと侵入した。
⸺⸺スティバン城内⸺⸺
城内はガランとしており、ただ一つ大きな禍々しい気配だけが漂っていた。
『誰もいないね……。使用人たちは一体どこに……』
「とりあえず暗黒の気配は地下じゃなくて上の階からするな」
『黒い気の濃度もヤバイね……クロノは大丈夫なの?』
「あぁ、特に気にはなんねぇな……。マールージュ島の時よりも明らかに濃いはずなのに……まるで耐性が付いたみてぇだ」
『へぇ……魔力が戻ったことと関係があるのかな。まぁ大丈夫なら、行こう。上へ』
「あぁ」
クロノはロビーの大階段を駆け上がり、迷うことなく上の階へと進んでいく。
「不思議だな……赤ん坊の頃しか住んでいなかったはずなのに、城の構造が当たり前のように思い出せる」
『前世からの記憶があるからだね。なら、俺と遊んでいた時の事も思い出せる?』
「あぁ。お前がソファの後ろに隠れて俺の名前を呼んで、俺がソファの後ろを覗くとお前がおどかしてくんだよな」
『わー。赤ちゃんにそこまで鮮明に覚えられてると逆に恥ずかしいな……』
「赤ちゃん言葉とか使ってたしな」
『やーめーてー』
「……お前が言い出したんだろ」
『いや、まぁそうなんだけど……。こんな切羽詰まった状況じゃなくてさ、もっとのんびりした時間が流れてるときに、こういう話したかったよねぇ』
「……出来るさ。もうすぐ」
『そうだよね。気配はここか……偉そうに玉座の間にいるのかよ』
クロノは3階の玉座の間へと到達する。そして一度大きく深呼吸をすると、扉を一気に押し開けた。
⸺⸺玉座の間⸺⸺
「おかしいな……赤目のお前かあの聖女さえ機能停止にすれば地上の人間なんてただのゴミ虫だと思ってたのにな」
ユリウス皇帝は玉座で足組をしており、クロノを見ると不機嫌そうにそう呟いた。
『お前らみたいに無理矢理契約で服従させるんじゃなくて、地上の人間には絆の力があるんだよ。やり方を間違えたな。郷に入っては郷に従えって言葉、知らないのか?』
「郷に入っては……ね。まぁ、いいや。クロノって言ったか。お前はこの身体をどうするつもりなんだ」
「こうするつもりだ」
クロノは血昇のアウラを発動させると、一瞬で間合いを詰め、ユリウスの喉元めがけて魔刀鬼丸を突き出した。
⸺⸺暗黒障壁⸺⸺
クロノの突きの攻撃を黒い気の壁が阻み、彼の足が止まる。
「おいおいおい。この身体の本体はそのぬいぐるみの中にいるんだろ? この身体が壊れたらそのぬいぐるみは一生そのままだろ」
ユリウスは玉座から跳び上がってクロノとの距離を取る。
『俺はとっくにぬいぐるみで生涯を終える覚悟が出来てる。人間を舐めすぎだ』
「はぁ? なんだこの身体、盾にもならないのか。使えないな……」
⸺⸺
クロノとユリウスの一騎打ちが始まったところで、帝都の本部のテントではルドガーが孤児院の仲間と共に不安そうに城を見上げていた。
「やべぇ……あれってまさか……」
彼が見上げているのは城の3階、玉座の間から続くバルコニーである。
そのバルコニーでは黒い気が扉を象っており、その周囲にはとてつもない量の黒い気が渦巻いていた。
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