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第十一章 精神世界
198話 大切
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「えーっ!? 未来の異世界から私を助けに!?」
俺はここへ来た目的を正直に全て話した。ミオは終始そんな反応で、いつかコーヒーカップを倒すんじゃないかとヒヤヒヤさせられた。
『どうせ忘れちゃうからな。確かに話しちゃうのはありかもしれないけど……変な人だと思われそう……』
「まぁ、信じらんねぇよな……わりぃ、忘れてくれていい」
俺がそう言うと、ミオは力強い瞳ですぐにこう返してくれた。
「いえ、信じます! だって、目、赤いし、なんか不思議にもわもわってしたオーラを放っているような……気がして……。私も変ですね、すみません……」
「いや、魔力を感じ取っているんだろう。どうだ、そのもわもわってのはもっと大きくなったか?」
俺は自分の魔力を抑えるのを少しだけやめてみる。すると、ミオは俺の周りを驚いた表情でキョロキョロと見て明らかに何かが見えているようだった。
「わわわわ……! お、大きくなりました……!」
ミオは目をパチクリとしている。そんな表情を見て、思わずふっと吹き出してしまった。
「元気になったみてぇだな」
ミオは「あっ」と声を上げる。
「そんな事もうとっくに忘れちゃってました。それに、今そうやって言われても、もう振られた事とかどうでもよくなっちゃってるや」
ミオはえへへっと笑ってコーヒーを飲み干す。
俺も微笑み返しコーヒーを飲み終えると、ミオは2人分のコーヒーカップを持ってキッチンへ行き、洗い物を始める。
カウンターの向こうに見えるミオはじっと一点を見つめ、何か考え込んでいるようだった。
そして、ミオはポツンと呟いた。
「おばあちゃん以外に、そんな身体を張って守ろうって思える人がいるなんて、ビックリだなぁ……」
「そう、なのか?」
「うん、だって……元カレとまだお付き合いしていたとして、目の前に刃物を持った人が走ってきて元カレを刺そうとしても……多分私はかばわないと思う。でもそれがおばあちゃんだったら、絶対守ろうって思えるから……」
『つまりミオちゃんの中でクロノは、元カレよりも上の存在だと……』
「学校は……つまんねぇか?」
「うん……でも、おばあちゃんには心配をかけたくないから、楽しいって事にしておいてもらえませんか?」
「それは構わねぇが……今お前は17だったよな……」
「うん」
「……俺の17の頃と考えがそっくりだ。思えばお前の事、知っているようで何も知らなかったんだな、俺は……」
きっとミオがルフレヴェの皆の気持ちに寄り添えたのは、誰よりもミオ自身が寂しい事を知っていたからなんだ。
身体を張って守ろうと思えるほど大切なおばあちゃんには心配かけまいとその事を相談できずに、ずっと一人で寂しい気持ちを抱え込んできた。
俺も、その気持ちは良く分かる。
「黒野さんも学校つまらなかったの? 居場所……なかった?」
「そうだな、島にいた頃に通っていた学校はつまらなかったし、居場所もなかった。目、赤いだろ? 悪魔が住んでるって島の奴らには言われていたんだ」
「悪魔!? ……いないよ、どこにも」
ミオはそう言って俺の瞳をじっと覗き込んできた。そう、ミオならそう言ってくれると思った。
「そっか、それなら良かった……」
だからこそ、俺も……。
「なぁ、ミオ。お前にはもう少し寂しい思いをさせる事になる。けど、俺らのところに来てからは、そんな思いはさせねぇって約束する。だから、もう少しだけ頑張ってくれ」
「……みんな黒野さんみたいに良い人なんですか?」
「俺みたいかどうかは分からねぇが、皆良い奴だ。少なくともこっちに来てからのお前は幸せそうに見えた。俺も、皆も……そんなお前の事を、心から大切に思ってる」
俺がそう言うと、大粒の涙がキッチンへポタポタとこぼれ落ちた。
「あっ、ごめんなさい……そんな事言われたの初めてで……」
慌てて制服の袖で涙を拭うミオ。気付いたら俺はキッチンへと向かい、そんなミオのことを強く抱き締めていた。
「大丈夫だ、お前はひとりじゃない」
「うん……」
抱き合ってミオを慰めていると、ふと真後ろの気配に気付く。
『ありゃ、気付いてなかったんだ……』
「あらあら、こりゃおばあちゃんお邪魔虫だったね……」
慌てて振り返ると、帰宅したおばあちゃんが口元を手で抑えて目をパチパチとさせていた。
俺はここへ来た目的を正直に全て話した。ミオは終始そんな反応で、いつかコーヒーカップを倒すんじゃないかとヒヤヒヤさせられた。
『どうせ忘れちゃうからな。確かに話しちゃうのはありかもしれないけど……変な人だと思われそう……』
「まぁ、信じらんねぇよな……わりぃ、忘れてくれていい」
俺がそう言うと、ミオは力強い瞳ですぐにこう返してくれた。
「いえ、信じます! だって、目、赤いし、なんか不思議にもわもわってしたオーラを放っているような……気がして……。私も変ですね、すみません……」
「いや、魔力を感じ取っているんだろう。どうだ、そのもわもわってのはもっと大きくなったか?」
俺は自分の魔力を抑えるのを少しだけやめてみる。すると、ミオは俺の周りを驚いた表情でキョロキョロと見て明らかに何かが見えているようだった。
「わわわわ……! お、大きくなりました……!」
ミオは目をパチクリとしている。そんな表情を見て、思わずふっと吹き出してしまった。
「元気になったみてぇだな」
ミオは「あっ」と声を上げる。
「そんな事もうとっくに忘れちゃってました。それに、今そうやって言われても、もう振られた事とかどうでもよくなっちゃってるや」
ミオはえへへっと笑ってコーヒーを飲み干す。
俺も微笑み返しコーヒーを飲み終えると、ミオは2人分のコーヒーカップを持ってキッチンへ行き、洗い物を始める。
カウンターの向こうに見えるミオはじっと一点を見つめ、何か考え込んでいるようだった。
そして、ミオはポツンと呟いた。
「おばあちゃん以外に、そんな身体を張って守ろうって思える人がいるなんて、ビックリだなぁ……」
「そう、なのか?」
「うん、だって……元カレとまだお付き合いしていたとして、目の前に刃物を持った人が走ってきて元カレを刺そうとしても……多分私はかばわないと思う。でもそれがおばあちゃんだったら、絶対守ろうって思えるから……」
『つまりミオちゃんの中でクロノは、元カレよりも上の存在だと……』
「学校は……つまんねぇか?」
「うん……でも、おばあちゃんには心配をかけたくないから、楽しいって事にしておいてもらえませんか?」
「それは構わねぇが……今お前は17だったよな……」
「うん」
「……俺の17の頃と考えがそっくりだ。思えばお前の事、知っているようで何も知らなかったんだな、俺は……」
きっとミオがルフレヴェの皆の気持ちに寄り添えたのは、誰よりもミオ自身が寂しい事を知っていたからなんだ。
身体を張って守ろうと思えるほど大切なおばあちゃんには心配かけまいとその事を相談できずに、ずっと一人で寂しい気持ちを抱え込んできた。
俺も、その気持ちは良く分かる。
「黒野さんも学校つまらなかったの? 居場所……なかった?」
「そうだな、島にいた頃に通っていた学校はつまらなかったし、居場所もなかった。目、赤いだろ? 悪魔が住んでるって島の奴らには言われていたんだ」
「悪魔!? ……いないよ、どこにも」
ミオはそう言って俺の瞳をじっと覗き込んできた。そう、ミオならそう言ってくれると思った。
「そっか、それなら良かった……」
だからこそ、俺も……。
「なぁ、ミオ。お前にはもう少し寂しい思いをさせる事になる。けど、俺らのところに来てからは、そんな思いはさせねぇって約束する。だから、もう少しだけ頑張ってくれ」
「……みんな黒野さんみたいに良い人なんですか?」
「俺みたいかどうかは分からねぇが、皆良い奴だ。少なくともこっちに来てからのお前は幸せそうに見えた。俺も、皆も……そんなお前の事を、心から大切に思ってる」
俺がそう言うと、大粒の涙がキッチンへポタポタとこぼれ落ちた。
「あっ、ごめんなさい……そんな事言われたの初めてで……」
慌てて制服の袖で涙を拭うミオ。気付いたら俺はキッチンへと向かい、そんなミオのことを強く抱き締めていた。
「大丈夫だ、お前はひとりじゃない」
「うん……」
抱き合ってミオを慰めていると、ふと真後ろの気配に気付く。
『ありゃ、気付いてなかったんだ……』
「あらあら、こりゃおばあちゃんお邪魔虫だったね……」
慌てて振り返ると、帰宅したおばあちゃんが口元を手で抑えて目をパチパチとさせていた。
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