172 / 228
第九章 人魚姫と刻の解放
172話 前世の記憶
しおりを挟む
⸺⸺海底神殿⸺⸺
クロノとミオの光が収まると、彼らはゆっくりと神殿の床に降り立ち、そして目を開けた。
『おかえり、二人とも。上手くいったみたいだね。クロノの魔力が溢れかえってる』
と、ポール。
「俺ら、もう動いていいのか!?」
ケヴィンは足元の魔法陣が消えたのを確認して、そう叫ぶ。
『うん、もう良いよ。みんな協力してくれてありがとう』
ポールがそう言うと、皆一斉にクロノのもとへ集った。
「クロノ、大丈夫? 前世、どんなだった?」
と、ミオ。彼は引きつった表情でこう答えた。
「……竜王の息子」
「どゆこと!?」
と、一同。
⸺⸺
彼らは無事解放の儀を終えた宴のため宮殿へと戻り、マリンを助けてくれたお礼もあり手厚くもてなされた。
⸺⸺その宴の最中。
『……で、竜王の息子って何?』
と、ポール。皆が一斉にクロノの方を見ると、彼は頷いて語り始めた。
「俺はどうやら異世界からの転生者だったようで、俺の前世は竜人、獣人、魔人……と言うように身体が半分人間じゃねぇやつらの世界の人間だった」
『転生者! だから生まれた時からあんなに魔力がすごかったのかぁ……』
と、ポール。
「ミオの世界とは違う世界なの?」
チャドがそう尋ねると、クロノはうんと頷いた。
「違う。その竜人の王の息子、つまり王子で……竜人は魔力も腕力も並外れたステータスだったらしい」
「わ、クロノ君の強さの秘密を知っちゃった気がする……」
と、クライヴ。
「そうだな……努力はもちろんしてきたつもりだけど、前世からのステータス補正があるみてぇだ」
「元々ある魔力がない状態で、暗黒の核を2つ持った俺とほぼ同等の実力……今やったら俺瞬殺されるね……」
クライヴは切なそうに涙を流した。
「竜人の王子様はどんな人生だったの?」
と、ミオ。
「竜人と魔人の国は仲が悪くて、ずっと戦争をしてた。俺は竜軍を率いる軍隊長として常に最前線で戦わされてて……結局自国民を守るために壁になって死んだらしい……」
「かっけぇ! 自己犠牲の精神!」
ケヴィンは尊敬の眼差しをクロノへと送る。
「ひたすら魔人が憎くて……俺が今こんなに魔力があるのはその魔力特化の魔人を超えたいという想いがあったからかもしんねぇ」
「それで次に待ってた人生は後継ぎ争い……。争いの絶えない人生だね……」
と、エルヴィス。
「せっかく母さんがその争いの人生から遠ざけてくれたのに、結局俺は軍人学校に入って戦う人生を選んだ。強くなりたいって想いの根底に前世の事があったかと思うと、妙に納得できる。ずっと不思議ではあったんだ。何で俺はこんなにも強くなりたいのかって……」
クロノがそこまで言うと、ミオが思い出したように口を挟む。
「ナディアさん言ってたよね。クロノはクロノだって。もし前世と似たような人生を歩んでいたとしても、それは今のクロノが自分で選んできた人生。前世なんて関係ないよ。今を見て行こう」
クロノはその言葉にハッとする。
「お前……言うようになったな」
ミオは「ふふん」とドヤ顔をしていた。
「まぁでも、そうだな。前世から持ってきたもんの使えるもんは使って、俺はこの人生を好きに生きる事にするよ。今までだってそうしてきたからな」
皆はうんうんと頷く。
「今になってこうして前世から赤ん坊の頃の記憶が戻って、ゆっくり考える事ができた。結果的に俺は、イリス島に飛ばされて良かったって今は思えてるし、このタイミングで記憶が解放できたのも良かった。お前らの協力あってこそだ、心から礼を言う。ありがとう」
真剣な表情でそう言うクロノに、皆一様に照れてはにかんでいた。
クロノとミオの光が収まると、彼らはゆっくりと神殿の床に降り立ち、そして目を開けた。
『おかえり、二人とも。上手くいったみたいだね。クロノの魔力が溢れかえってる』
と、ポール。
「俺ら、もう動いていいのか!?」
ケヴィンは足元の魔法陣が消えたのを確認して、そう叫ぶ。
『うん、もう良いよ。みんな協力してくれてありがとう』
ポールがそう言うと、皆一斉にクロノのもとへ集った。
「クロノ、大丈夫? 前世、どんなだった?」
と、ミオ。彼は引きつった表情でこう答えた。
「……竜王の息子」
「どゆこと!?」
と、一同。
⸺⸺
彼らは無事解放の儀を終えた宴のため宮殿へと戻り、マリンを助けてくれたお礼もあり手厚くもてなされた。
⸺⸺その宴の最中。
『……で、竜王の息子って何?』
と、ポール。皆が一斉にクロノの方を見ると、彼は頷いて語り始めた。
「俺はどうやら異世界からの転生者だったようで、俺の前世は竜人、獣人、魔人……と言うように身体が半分人間じゃねぇやつらの世界の人間だった」
『転生者! だから生まれた時からあんなに魔力がすごかったのかぁ……』
と、ポール。
「ミオの世界とは違う世界なの?」
チャドがそう尋ねると、クロノはうんと頷いた。
「違う。その竜人の王の息子、つまり王子で……竜人は魔力も腕力も並外れたステータスだったらしい」
「わ、クロノ君の強さの秘密を知っちゃった気がする……」
と、クライヴ。
「そうだな……努力はもちろんしてきたつもりだけど、前世からのステータス補正があるみてぇだ」
「元々ある魔力がない状態で、暗黒の核を2つ持った俺とほぼ同等の実力……今やったら俺瞬殺されるね……」
クライヴは切なそうに涙を流した。
「竜人の王子様はどんな人生だったの?」
と、ミオ。
「竜人と魔人の国は仲が悪くて、ずっと戦争をしてた。俺は竜軍を率いる軍隊長として常に最前線で戦わされてて……結局自国民を守るために壁になって死んだらしい……」
「かっけぇ! 自己犠牲の精神!」
ケヴィンは尊敬の眼差しをクロノへと送る。
「ひたすら魔人が憎くて……俺が今こんなに魔力があるのはその魔力特化の魔人を超えたいという想いがあったからかもしんねぇ」
「それで次に待ってた人生は後継ぎ争い……。争いの絶えない人生だね……」
と、エルヴィス。
「せっかく母さんがその争いの人生から遠ざけてくれたのに、結局俺は軍人学校に入って戦う人生を選んだ。強くなりたいって想いの根底に前世の事があったかと思うと、妙に納得できる。ずっと不思議ではあったんだ。何で俺はこんなにも強くなりたいのかって……」
クロノがそこまで言うと、ミオが思い出したように口を挟む。
「ナディアさん言ってたよね。クロノはクロノだって。もし前世と似たような人生を歩んでいたとしても、それは今のクロノが自分で選んできた人生。前世なんて関係ないよ。今を見て行こう」
クロノはその言葉にハッとする。
「お前……言うようになったな」
ミオは「ふふん」とドヤ顔をしていた。
「まぁでも、そうだな。前世から持ってきたもんの使えるもんは使って、俺はこの人生を好きに生きる事にするよ。今までだってそうしてきたからな」
皆はうんうんと頷く。
「今になってこうして前世から赤ん坊の頃の記憶が戻って、ゆっくり考える事ができた。結果的に俺は、イリス島に飛ばされて良かったって今は思えてるし、このタイミングで記憶が解放できたのも良かった。お前らの協力あってこそだ、心から礼を言う。ありがとう」
真剣な表情でそう言うクロノに、皆一様に照れてはにかんでいた。
3
お気に入りに追加
129
あなたにおすすめの小説
一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?
大好き丸
ファンタジー
天上魔界「イイルクオン」
世界は大きく分けて二つの勢力が存在する。
”人類”と”魔族”
生存圏を争って日夜争いを続けている。
しかしそんな中、戦争に背を向け、ただひたすらに宝を追い求める男がいた。
トレジャーハンターその名はラルフ。
夢とロマンを求め、日夜、洞窟や遺跡に潜る。
そこで出会った未知との遭遇はラルフの人生の大きな転換期となり世界が動く
欺瞞、裏切り、秩序の崩壊、
世界の均衡が崩れた時、終焉を迎える。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが
米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。
その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。
更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。
果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!?
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
ジャージ女子高生による異世界無双
れぷ
ファンタジー
異世界ワーランド、そこへ神からのお願いを叶えるために降り立った少女がいた。彼女の名前は山吹コトナ、コトナは貰ったチートスキル【魔改造】と【盗む】を使い神様のお願いをこなしつつ、ほぼ小豆色のジャージ上下でテンプレをこなしたり、悪党を改心させたり、女神になったりするお話です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる