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第八章 ポールの冒険
140話 お嬢様助け隊
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『世界樹の輝きをボクたちで……?』
『お嬢様の命令がないと屋敷の外に出られないであります』
『ドロシーは今苦しんでる。命令なんて待ってたら本当に死んじゃうよ。アマリスに出掛ける報告をしてくるから、みんなは出掛ける準備をしておいて』
『ワシ、準備するべ』
カカシさんがそう言うのを確認すると、ポールはうんと頷き、階段を上っていった。
彼が2階へ行くと、アマリスがベッドで寝ているドロシーの汗を拭いてあげていた。
『アマリス! ドロシーは大丈夫?』
「ポール……今はなんとか薬で落ち着いたけど……もう、近いのかもしれないわ……」
アマリスはそう言って涙を流す。
『大丈夫。オイラたちがエルフの国に行ってすごい特効薬をもらってきてあげるから。だから、ドロシーが起きたらそれまで絶対に頑張ってって、言っておいて! じゃぁ、急ぐから!』
ポールはそれだけ言うと、一目散に階段を駆け下りていった。
「え……エルフの国の特効薬って……まさか、世界樹の輝きの事!? 待って、ポール、みんな!」
アマリスが慌てて追いかけようとするが、そのタイミングでドロシーの発作が始まり、彼女は足止めを食らってしまった。
そしてポールらは屋敷の外へと出て行ってしまった。
「あぁ、お嬢様、薬を飲んだばかりだと言うのに……。それにどうしましょう。世界樹の輝きなんて……もう何度も試しているのに。あぁ、私はこの屋敷を離れる訳にはいかないし……困ったわ……」
アマリスは深くため息を吐いた。
⸺⸺王都ドクラーカ⸺⸺
ポールらは屋敷の外に出て、通りを少し進んだところで立ち止まる。
『屋敷の外に出るのはこの屋敷に来て以来であります』
『で、これがニンファ王国までの道のりか……』
ポールは皆が用意をしてくれたこの島の地図を広げて場所を確認する。
『ニンファ王国まではこの森の中を突っ切ってる『ラルーカ街道』を道なりに行けば安全だよ……』
と、ライオンさん。
『街道だから結界があるんだね。それなら楽勝だ。ところでみんな、その巾着みたいなの、何が入ってるの?』
ポールは皆が同じ巾着を背負っている事に気付き、そう尋ねる。
『“魔力薬”だべ。ワシらは魔力で全てが成り立ってる。だで、魔力薬はワシらにとっての回復薬にも食事にもなるだべ。念入りに準備したべ』
『そっか。ふぅん、魔法生物ってそういう仕組みなんだ。うん、分かったよ。じゃぁそれ持って行こうか』
『行くであります』
『みんな、いい? オイラたちは“お嬢様助け隊”だ。ニンファ王国の妖精王オベロン様にお願いして、絶対に世界樹の輝きを手に入れてドロシーの病気を治すんだ。気合いを入れる時は、こうやってみんなで肩を組んで、えいえいおー! ってやるんだ。ほら、やってみよう。高く大きな声でね』
皆で小さな小さな円陣を組み、ポールの掛け声を待つ。
『ドロシーの病気を治すぞー!』
ポールがそう言うと、皆は声を揃えて『えいえいおー!』と気合いを入れた。
その彼らの様子を周りの人は珍しそうに見ており、まるで心があるかの様な言動に皆関心を持っていた。
そんな人々の視線もお構いなしに、彼らはポールを先頭に一列になっててくてくと進んでいく。
そして人々の温かい視線に見送られて、お嬢様助け隊一行は森の中の『ラルーカ街道』へと差し掛かった。
『お嬢様の命令がないと屋敷の外に出られないであります』
『ドロシーは今苦しんでる。命令なんて待ってたら本当に死んじゃうよ。アマリスに出掛ける報告をしてくるから、みんなは出掛ける準備をしておいて』
『ワシ、準備するべ』
カカシさんがそう言うのを確認すると、ポールはうんと頷き、階段を上っていった。
彼が2階へ行くと、アマリスがベッドで寝ているドロシーの汗を拭いてあげていた。
『アマリス! ドロシーは大丈夫?』
「ポール……今はなんとか薬で落ち着いたけど……もう、近いのかもしれないわ……」
アマリスはそう言って涙を流す。
『大丈夫。オイラたちがエルフの国に行ってすごい特効薬をもらってきてあげるから。だから、ドロシーが起きたらそれまで絶対に頑張ってって、言っておいて! じゃぁ、急ぐから!』
ポールはそれだけ言うと、一目散に階段を駆け下りていった。
「え……エルフの国の特効薬って……まさか、世界樹の輝きの事!? 待って、ポール、みんな!」
アマリスが慌てて追いかけようとするが、そのタイミングでドロシーの発作が始まり、彼女は足止めを食らってしまった。
そしてポールらは屋敷の外へと出て行ってしまった。
「あぁ、お嬢様、薬を飲んだばかりだと言うのに……。それにどうしましょう。世界樹の輝きなんて……もう何度も試しているのに。あぁ、私はこの屋敷を離れる訳にはいかないし……困ったわ……」
アマリスは深くため息を吐いた。
⸺⸺王都ドクラーカ⸺⸺
ポールらは屋敷の外に出て、通りを少し進んだところで立ち止まる。
『屋敷の外に出るのはこの屋敷に来て以来であります』
『で、これがニンファ王国までの道のりか……』
ポールは皆が用意をしてくれたこの島の地図を広げて場所を確認する。
『ニンファ王国まではこの森の中を突っ切ってる『ラルーカ街道』を道なりに行けば安全だよ……』
と、ライオンさん。
『街道だから結界があるんだね。それなら楽勝だ。ところでみんな、その巾着みたいなの、何が入ってるの?』
ポールは皆が同じ巾着を背負っている事に気付き、そう尋ねる。
『“魔力薬”だべ。ワシらは魔力で全てが成り立ってる。だで、魔力薬はワシらにとっての回復薬にも食事にもなるだべ。念入りに準備したべ』
『そっか。ふぅん、魔法生物ってそういう仕組みなんだ。うん、分かったよ。じゃぁそれ持って行こうか』
『行くであります』
『みんな、いい? オイラたちは“お嬢様助け隊”だ。ニンファ王国の妖精王オベロン様にお願いして、絶対に世界樹の輝きを手に入れてドロシーの病気を治すんだ。気合いを入れる時は、こうやってみんなで肩を組んで、えいえいおー! ってやるんだ。ほら、やってみよう。高く大きな声でね』
皆で小さな小さな円陣を組み、ポールの掛け声を待つ。
『ドロシーの病気を治すぞー!』
ポールがそう言うと、皆は声を揃えて『えいえいおー!』と気合いを入れた。
その彼らの様子を周りの人は珍しそうに見ており、まるで心があるかの様な言動に皆関心を持っていた。
そんな人々の視線もお構いなしに、彼らはポールを先頭に一列になっててくてくと進んでいく。
そして人々の温かい視線に見送られて、お嬢様助け隊一行は森の中の『ラルーカ街道』へと差し掛かった。
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