上 下
132 / 228
第七章 イリス島奪還作戦

132話 双子との因縁

しおりを挟む
⸺⸺アルキオの次元空間⸺⸺

 ケヴィンのメイスによる打撃とアルキオのナックルによる打撃がぶつかり合い、お互いボロボロになっていく。

 かつて仲が良かった親友。そんなアルキオへ、ケヴィンはラストの一撃を入れた。

「ぐはっ……ごほっ、ごほっ」
 アルキオは血を吐きながら倒れ込む。そしてケヴィン自身もその側へと倒れ込んだ。

「クソッ……こっちは身体改造して暗黒まで埋め込んだんだぞ……なんで勝てねぇんだよ……!」
「身体改造……お前あの後、王国の研究所に連れていかれたんだな……」

 アルキオは当時の記憶を語る。
「俺らが15歳の時、孤児院の院長がチャドの特異体質に目を付けて、王国の研究所に売りつけようとした」
「あぁ、そうだな……」

「だから俺はお前ら2人が孤児院を逃げられるよう協力をした」
「あぁ……」

「けど、お前らを逃がす直前に俺は院長先生に捕まった」
「あぁ……見てた」

「俺は目で“行け”って合図した」
「俺もそう思って、チャドを連れてそのまま孤児院から逃げたよ……」

「俺はまさか、あの優しかった院長先生が、俺をチャドの代わりとして研究所に売るなんて思ってなかったんだ」
「チャドの代わりに……そう、だったのか……」

「研究所は俺が特異体質だと勘違いしてたから、まずはその体質を引き出すためにあらゆる拷問をされた」
「っ……」

「チャドと同じ雷属性だった事もあって、あいつらは俺が特異体質だと信じて疑わなかった。俺がどれだけ普通の人間だって主張したって、隠してるだけだと思われた。分かるか? 俺は研究所送りにされても普通はされねぇような拷問を無駄にされ続けたんだぞ」

「……みんなで逃げるべきだった。久々に会ったお前のその全てを恨んでいるような表情を見た時、そう思ったよ。あの後、ただちょっとだけ院長先生に叱られるだけじゃ済まなかったんだって……」

「今更んなこと思ったってもう遅ぇんだよ。特異体質じゃねぇって分かってもらえた後も魔力を弄くられて身体能力を底上げされて……特異体質を作り出す研究対象にされた。俺はいくらやったってチャドにはなれねぇのに……!」
「ごめん、ごめんな……」

「挙げ句の果てに失敗作だったっつって帝国との境の山脈に捨てられた。そこを前皇帝カエサルに拾われて、全部ぶっ壊そうって誘ってくれた。もう完全にイカれてた俺は、喜んでその誘いに乗った。なのにその前皇帝はとっととくたばっちまうし、ユリウスはぶっ壊すだけじゃなくて分けわかんねぇこと考えてるっぽいし……」

「ユリウスに、従いたいんじゃねーのか?」
「さっきも言ったろ。俺は忠誠なんざどうだっていい。色んなもんをぶっ壊せればそれでいいんだよ」

「なら、とりあえず暗黒をなんとかしねぇか? その後色んなもんぶっ壊してぇなら、またこうやって俺が相手する。チャドだって、同じこと言うはずだ。もう事が起こっちまった以上、こうする事でしかお前の怒りを鎮めてやる事ができねぇ。まずはみんなのところに戻って……」

「うるせぇ! 暗黒をどうこうできるって……んな情報吹き込むんじゃねぇよ……! 自白強要、させられんだろうが……!」
 そう言うアルキオの頬に、一筋の涙が伝う。

「っ、ごめん……! もう、城には戻るな。とりあえずイリスの研究所に戻ろう。今度こそお前を見捨てねぇ! 俺に挽回の機会をくれ!」
「るせぇんだよ! もう、研究所には戻れねぇ……。戻ろうとしても戻れねぇんだ。ダセェな俺……あんなにお前らの事恨んでたのに……今度は助けてくれんじゃねぇかって、んな期待……しちまってる……」

「っ! 分かった、なら俺が強制的にこの空間を閉じる。わりぃが歯、食いしばれ! ごめんな!」
「ケヴィン……助け……」

 ケヴィンがドスッと拳を振り下ろすと、既にアルキオの姿はそこになく、城に戻ったんだと推測された。
「ルドガー! クソッ! 俺はまた……アイツを見捨てて……」
 彼がもう一度拳を床へ叩きつけると、彼の拳は血で滲んでいた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸
ファンタジー
天上魔界「イイルクオン」 世界は大きく分けて二つの勢力が存在する。 ”人類”と”魔族” 生存圏を争って日夜争いを続けている。 しかしそんな中、戦争に背を向け、ただひたすらに宝を追い求める男がいた。 トレジャーハンターその名はラルフ。 夢とロマンを求め、日夜、洞窟や遺跡に潜る。 そこで出会った未知との遭遇はラルフの人生の大きな転換期となり世界が動く 欺瞞、裏切り、秩序の崩壊、 世界の均衡が崩れた時、終焉を迎える。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。 その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。 更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。 果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!? この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

処理中です...