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第六章 白鳥の姫と7人の小人

118話 3つ目の記憶

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 皆の脳内にある記憶が再生される。

⸺⸺

 例の紫の髪の母親が、嬉しそうにこちらに向かって何かを話している場面から映像は始まった。
 相変わらず何を言っているのかは分からなかったが、嬉しそうな事だけは皆にも分かった。

 しかし、彼女はすぐに落ち込んだ表情を浮かべて、こちらにクロノが持っていた物と同じ懐中時計を手渡してくる。
 そして何かを一生懸命に訴えかけてくると、最後に寂しそうに微笑んだ。

 ここで場面が切り替わり、この視点の持ち主が開いた窓から部屋の外を覗き込むと、嵐の夜の中、紫の髪の母親が崖の下の海へと飛び降りていった。
 それを見たこの視点の主は、ガクッと崩れ落ち、床の上にはポタポタと涙が流れ落ちた。

⸺⸺

 ここで皆が現実に戻される。

「あれ、今回はこの2人だけだったね」
 と、ミオ。
「俺の母親もよちよち歩きの餓鬼も出てこなかったな」
 クロノがそう言って難しい表情を浮かべると、クライヴが申し訳なさそうに割って入る。

「俺の母親って……あの、金髪のお団子の人?」
「ん、そうだ。まぁ勝手に俺がそう思ってるだけだが……」
「……あの人は、スティバン帝国の皇太后様だ……。今はもう亡くなってるけどね。つまり、ユリウス皇帝の母君。彼女には一人しかお子が居なかったって聞いてるから、多分あの人は君の母親じゃない」

「何っ!?」
 クロノだけではなく、その場の全員が驚きを顕にする。
「何で前の段階で言わなかった……あ、正体隠してたからか」
 パニクって自問自答をするケヴィン。
「あはは、うん。まだ俺も君らのこと探ってる状態だから、言えなかった。それに、スティバン帝国が関わってるなんて、嫌だろうなーって……」

「……俺は、スティバン帝国の出身……? それで、金髪の女ではなく、紫の髪の女の方が関わりが深いということか……」
「おや、案外スッと受け入れるんだね」
 と、クライヴ。

「ずっと分からないよりはマシだ。ちなみに紫の髪の女は知ってるのか?」
「いや、彼女は俺も知らないから不思議に思ってる。俺の勝手な推測では、君は皇太后様が前皇帝に嫁ぐ前の隠し子だったとか、紫の髪の女性は帝国の貴族夫人でその息子だった君は無理やり誘拐されたとか……一時期そんな事を考えていたよ」

「なるほど、そうか……そう考えるとあの視点の餓鬼が俺だってことも納得できるな」
「そうそう、俺もあの視点はクロノだって思って考えたよ」

「とりあえず確かなのは、この懐中時計はその紫の髪の女性からもらったって事だね」
 と、ミオ。
「そうだな。まぁ肝心なことは分かんねぇままだが、また一歩進んだな」
 クロノがそう言うと、皆うんうんと頷いた。

『……』
 ポールだけがミオの肩の上でただのぬいぐるみのように固まっていたが、特に誰も気には止めなかった。

⸺⸺

 無事3つ目のアルバウスで使命を果たしたルフレヴェ一行はアウィス城で一泊すると、ウルラ女王を連れて地上へと降りてきていた。

⸺⸺地下都市パドヴァリア⸺⸺

⸺⸺第20層、カーラー兄弟のシェアハウス⸺⸺

「お前たち! 無事に戻ってきたのだな!」
 ホワイトがそう言って出迎えてくれ、すぐに中に入れてもらう。

「シスネ、融合した?」
 と、ブラック。
「うん、無事に融合出来ました」
 ミオがそう答えると、ブラックはうんうんと優しい笑みを浮かべた。

「それであなたは……」
 ホワイトはウルラ女王を見上げる。
「お初にお目にかかります。わたくしはアウィス王国の女王ウルラと申します。こちらのホワイト殿がこの都市の首長だとお聞きしてお伺い致しました」

「なんと、そうでしたか、ワシがホワイトです。こんな暑苦しいところまでようこそお出でくださいました」
 ホワイトは丁寧にお辞儀をする。

「こちらにはシスネやフラリスが大変お世話になったと聞いています。本当にありがとうございました。我々はこれまで地上との接触を避けてきました。ですが、これを機に良ければ交流を深めていきたいと考えておりまして……」
 女王とホワイトの政治の話が続いていく。

 その一方でクライヴとエルヴィスがブルーの両頬にキスを迫っていた。
「やだもー! 2人でアタシを取り合わないでっ♡」
 ブルーは幸せそうな顔で頬を赤らめる。

「ねね、聖なる腕輪、追加であと4つ作って欲しいんだけど……」
 と、クライヴ。
「んもう、なら2人のキス2回分よ。1回は口にし・て♡」
「うっ……」
 たじろぐエルヴィス。

「おじさん、めげるな! プレイオのためだ!」
「よし、目をつぶってやり過ごそう」
 エルヴィスがそう言って目をつぶると、ブルーはぶちゅーっと思いっきり口付けて「んんっ」と喘いでいた。

「うげ……」
 ドン引きするルフレヴェ一行。
 そしてエルヴィスは唇を解放してもらうと、白目を向いてピクピクともだえていた。
「目をつぶってもおっさんの喘ぎが聞こえてきて死んだ……」

「ドンマイ……」
 ルフレヴェの皆から、不憫そうな視線が送られた。
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