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第六章 白鳥の姫と7人の小人
116話 おじさんマジでウザいんだけど
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⸺⸺プレイオの次元空間⸺⸺
エルヴィスはフードを取ったプレイオへ馬乗りになり、額に銃を突き付けていた。フードを取った彼は目の下に大きなクマがあり、まだ20にも満たない幼さ残る少年のようだった。
プレイオも2丁の銃を扱うが、その銃は2つとも遠くに投げ捨てられ、彼は絶体絶命だった。
「はぁ、もう面倒くさい……さっさと殺しちゃってよ。そしたらこっから出れるから」
プレイオは既に抵抗する気力もなく、死を覚悟してそう言う。
「何言ってんの、殺す訳ないでしょ。だって君死にたがりだから。これで殺しちゃったら君の思う壺だ」
「だからもうそういうところがウザいんだって。だったら銃おでこに当ててる意味ないじゃん。馬鹿なの? っていうかこれ以上僕に何を求めるのさ」
「お、確かに……。じゃ、これはやめよう。うーん、とりあえずお互い自己紹介しようか。おじさんの名前はエルヴィス、年は36歳……」
エルヴィスも銃を捨ててそう話し始めると、プレイオは更に彼を全否定した。
「は? キモっ、ウザっ」
「もうね、君にウザがられるのは慣れたからこれ以上おじさんを凹ませようったって無駄だよ」
「はい、ウザい」
「おじさんの故郷は突然何者かに滅ぼされて、島の仲間も両親もみんな死んだ。一緒に生き残ったのは弟と、その子分2人」
「……」
「おじさんも何回も死んじゃおうと思った。だけど、弟の存在があったから、今まで死なないで来れた。今は仲間もたくさん増えて、お互いに分かり合えて、死にたいなんて1ミリも思ってない。人は、変われるんだよ」
「うるさいな! 帝国のダウンタウンで貧しい暮らしで食べる物もなくて両親に捨てられて餓死する寸前だった! おじさんみたいな家族愛のある幸せなやつになんか同情されたくない! ボクのことは放っておけよ!」
「お、自己紹介らしくなってきたね。じゃぁ、そんな暗黒とかいう訳の分からない力は捨てて、おじさんの船で一緒に暮らそう。愛があるのは、血の繋がった家族だけじゃない。俺の弟みたいに血が繋がってなくても、人は家族になれるからさ」
「絶対嫌だ。そんな家族ごっこ虫酸が走る。暗黒だって無理やり植え付けられただけで捨てたくても捨てられないんだ。もし捨てられたらボクはすぐにでも死にたい」
「暗黒があるとなんで死ねないの? 不死身なの?」
「違うよ。暗黒は植え付けた皇帝に無理やり忠誠を誓わせる。皇帝に不利益があるような行動は取れないから、ボクが死ぬことで手駒が減って不利益になるから、自害するような行動は取れないの」
「なるほど……。そんなことベラベラしゃべっちゃって、口はある程度自由なんだね」
「……らしいね。僕も初めて知ったけど……」
「じゃ、とりあえずここを出て、その暗黒をなんとかする方法を一緒に考えよう」
「そんなの僕がそういう行動が取れる訳ないでしょ……」
「あ、そっか。手駒が減って不利益、か……じゃ、どうしたらここから出られるか教えて」
「……僕自身が解除するか、拠点に戻るか、僕を殺すか、僕が気絶するか……」
「ふぅん、じゃぁ、とりあえず殴るわ」
エルヴィスはそう言ってプレイオの頭を殴り飛ばす。
「いっった!? マジ痛いんだけど!?」
「あれ、気絶しなかった……うーん、加減が難しいね……」
「なんなのこのおじさんマジでウザいんだけど!?」
プレイオは涙目で絶叫する。
「ちょ、ごめんごめん……。おじさん殴って気絶させた事なんかないんだよ……。あ、でも金的ならワンチャンあるかも」
「!? ふざっけんな! 僕もう帰る!」
「え、あ、マジ? 帰れるの?」
「帰れるっぽい……僕がこれ以上ここにいるのは不利益らしい」
「んー、そっか……。じゃ、最後に名前教えてよ?」
「はぁ!? 何で……」
「だっておじさんだけ名乗ったから」
「勝手におじさんが名乗ったんでしょ!?」
「まぁまぁ、そう言わずに……」
「……名乗る名前なんかない」
「何でよ?」
「あんな親に付けられた名前なんか嫌いだし、皇帝が勝手に付けた名前も好きじゃない」
「んー、そっか。じゃぁ、次会うときまでにおじさんが君の名前考えとくね」
「!? ウザいおじさんなんかに付けられる名前も好きじゃないから!」
プレイオはそう叫ぶと黒い霧となって姿を消していき、その空間も霧のようにかすれ、消えていった。
⸺⸺アウィス城の中庭⸺⸺
「お、みんなただいまー」
「エルヴィス!」
「おじさん!」
「おっさん!」
「おかえり!」
皆は声を揃えて彼を歓迎した。
エルヴィスはフードを取ったプレイオへ馬乗りになり、額に銃を突き付けていた。フードを取った彼は目の下に大きなクマがあり、まだ20にも満たない幼さ残る少年のようだった。
プレイオも2丁の銃を扱うが、その銃は2つとも遠くに投げ捨てられ、彼は絶体絶命だった。
「はぁ、もう面倒くさい……さっさと殺しちゃってよ。そしたらこっから出れるから」
プレイオは既に抵抗する気力もなく、死を覚悟してそう言う。
「何言ってんの、殺す訳ないでしょ。だって君死にたがりだから。これで殺しちゃったら君の思う壺だ」
「だからもうそういうところがウザいんだって。だったら銃おでこに当ててる意味ないじゃん。馬鹿なの? っていうかこれ以上僕に何を求めるのさ」
「お、確かに……。じゃ、これはやめよう。うーん、とりあえずお互い自己紹介しようか。おじさんの名前はエルヴィス、年は36歳……」
エルヴィスも銃を捨ててそう話し始めると、プレイオは更に彼を全否定した。
「は? キモっ、ウザっ」
「もうね、君にウザがられるのは慣れたからこれ以上おじさんを凹ませようったって無駄だよ」
「はい、ウザい」
「おじさんの故郷は突然何者かに滅ぼされて、島の仲間も両親もみんな死んだ。一緒に生き残ったのは弟と、その子分2人」
「……」
「おじさんも何回も死んじゃおうと思った。だけど、弟の存在があったから、今まで死なないで来れた。今は仲間もたくさん増えて、お互いに分かり合えて、死にたいなんて1ミリも思ってない。人は、変われるんだよ」
「うるさいな! 帝国のダウンタウンで貧しい暮らしで食べる物もなくて両親に捨てられて餓死する寸前だった! おじさんみたいな家族愛のある幸せなやつになんか同情されたくない! ボクのことは放っておけよ!」
「お、自己紹介らしくなってきたね。じゃぁ、そんな暗黒とかいう訳の分からない力は捨てて、おじさんの船で一緒に暮らそう。愛があるのは、血の繋がった家族だけじゃない。俺の弟みたいに血が繋がってなくても、人は家族になれるからさ」
「絶対嫌だ。そんな家族ごっこ虫酸が走る。暗黒だって無理やり植え付けられただけで捨てたくても捨てられないんだ。もし捨てられたらボクはすぐにでも死にたい」
「暗黒があるとなんで死ねないの? 不死身なの?」
「違うよ。暗黒は植え付けた皇帝に無理やり忠誠を誓わせる。皇帝に不利益があるような行動は取れないから、ボクが死ぬことで手駒が減って不利益になるから、自害するような行動は取れないの」
「なるほど……。そんなことベラベラしゃべっちゃって、口はある程度自由なんだね」
「……らしいね。僕も初めて知ったけど……」
「じゃ、とりあえずここを出て、その暗黒をなんとかする方法を一緒に考えよう」
「そんなの僕がそういう行動が取れる訳ないでしょ……」
「あ、そっか。手駒が減って不利益、か……じゃ、どうしたらここから出られるか教えて」
「……僕自身が解除するか、拠点に戻るか、僕を殺すか、僕が気絶するか……」
「ふぅん、じゃぁ、とりあえず殴るわ」
エルヴィスはそう言ってプレイオの頭を殴り飛ばす。
「いっった!? マジ痛いんだけど!?」
「あれ、気絶しなかった……うーん、加減が難しいね……」
「なんなのこのおじさんマジでウザいんだけど!?」
プレイオは涙目で絶叫する。
「ちょ、ごめんごめん……。おじさん殴って気絶させた事なんかないんだよ……。あ、でも金的ならワンチャンあるかも」
「!? ふざっけんな! 僕もう帰る!」
「え、あ、マジ? 帰れるの?」
「帰れるっぽい……僕がこれ以上ここにいるのは不利益らしい」
「んー、そっか……。じゃ、最後に名前教えてよ?」
「はぁ!? 何で……」
「だっておじさんだけ名乗ったから」
「勝手におじさんが名乗ったんでしょ!?」
「まぁまぁ、そう言わずに……」
「……名乗る名前なんかない」
「何でよ?」
「あんな親に付けられた名前なんか嫌いだし、皇帝が勝手に付けた名前も好きじゃない」
「んー、そっか。じゃぁ、次会うときまでにおじさんが君の名前考えとくね」
「!? ウザいおじさんなんかに付けられる名前も好きじゃないから!」
プレイオはそう叫ぶと黒い霧となって姿を消していき、その空間も霧のようにかすれ、消えていった。
⸺⸺アウィス城の中庭⸺⸺
「お、みんなただいまー」
「エルヴィス!」
「おじさん!」
「おっさん!」
「おかえり!」
皆は声を揃えて彼を歓迎した。
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