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第五章 欲望渦巻くレユアン島
94話 偽善の仮面の裏の焦り
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⸺⸺クロノ、ミオサイド⸺⸺
クロノとミオとポールはエーベル商会の制服を着てメンバーに変装をして、フランツよりも先にテーマパーク内にある講演会場へとやってきていた。
「特になんの気配もねぇな……お前らはなんか感じるか?」
と、クロノ。
「ううん、目立った魔力痕は見つからないかな」
『オイラも~』
ミオとポールがそれぞれ返事をする。
「なら、このままここで準備してるフリして待機だな」
「了解」
『じゃぁオイラはミオのリュックに隠れるから』
ポールは自らリュックを開けて、自分で中に入っていった。
その10分後には、カリスとミリィが到着する。
「どう?」
と、カリス。
「特に異常はなしだ」
そうクロノが返事をすると、カリスは「了解」と相槌を打った。
更にその10分後には他の商会のスタッフらも入ってきて、カリスが代表でそれぞれと挨拶を交わし、皆で準備を進めた。
その20分後には、アルノーとフランツも含めた講演会の出演者たちがゾロゾロとステージへと上がって打ち合わせを始めた。
その打ち合わせの光景をクロノとミオが目を光らせて見ていたが、特に変わりはなかった。
あえて言うなら、アルノーが少しおどおどしているだけである。
「やっぱり録音されてた会話の通り、フランちゃんの講演の直前にスナイパーが配置されるようね」
カリスが機材の確認をするフリをしてボソッと呟く。
「そうだな。恐らく今朝の録音を聞く限りアルノーの中でミオを逃したのはかなりの痛手のはずだ。ならこっちの作戦だけでも計画通りに成功させようと躍起になってんだろうな」
と、クロノが小さな声で答えた。
そして講演者らの打ち合わせも問題なく終わり、彼らはスタッフらと共に本番まで休憩に入った。
⸺⸺
午前9時頃、講演会会場が開放され、一般の客がゾロゾロと入ってくる。
クロノはその中にポップコーンを食べている帽子をかぶった青年らを見つけ、軽く吹き出した。
「あいつら普通に楽しんでんな……」
「だ、誰だれ?」
と、ミオ。
「ん、ルフレヴェ全員いる。未だスナイパーの気配もねぇし、あいつら上手くやれたみたいだな」
「おぉー、良かった! あ、誰か手を振ってるから振り返しとこ」
ミオは適当に手を振る。クロノはそれに対し「あれはチャドだな」と反応した。
⸺⸺
午前10時。一般客の中にも異常はなく、予定通り講演会が始まった。
フランツはアルノーと舞台袖で出番を待つ際、彼の異様なまでの焦りを感じ取っていた。
恐らく彼らのいる位置から見える範囲にスナイパーが配置される予定だったのであろうが、未だその気配はない。
そのための焦りだろうと、フランツは考えていた。
そんな焦りよりも、これからもっと大変なことが起こるのに、のんきなやっちゃな、と彼は思うのであった。
そして、フランツの講演の番がやってきて、フランツがステージへと登場する。
エーベル商会のメンバーに変装をしたクロノがフランツの側で護衛兼サポートに入った。
そんなクロノを観客席から見ていたルフレヴェのメンバーは、レアな光景に大笑いをしている。
そして裏方でサポートしているミオ、カリス、ミリィはお互いに顔を見合わせ、うんと頷いた。
「えー、皆様こんにちは。わたくしエーベル商会会長の、フランツ・エーベルと申します。本日はこの島の出資者であるブランシャール商会会長のアルノー氏にもご参加いただき、講演を進めさせていただきたいと思います」
「……は?」
打ち合わせやリハーサルとは全く違う入りに戸惑うアルノー。そうでなくても彼は今それどころではないのに。
沸き上がる観客。商会の中のトップ2の会長が2人で対談するというサプライズ演出に盛り上がらないはずがない。
「ではではアルノー氏、どうぞこちらへ」
フランツが舞台袖へ向かってニッコリ微笑むと、引きつった笑みのアルノーがトボトボとステージへと姿を現した。
更に沸き上がる観客。商会の講演会を見に来るような観客の中に、彼を知らない者はいない。
「皆様こんにちは。ブランシャール商会会長のアルノー・ブランシャールと申します……」
湧き上がる観客の中、彼はおどおどと挨拶を終えた。
そして遂に、偽善の仮面の剥がれる瞬間が訪れる。
クロノとミオとポールはエーベル商会の制服を着てメンバーに変装をして、フランツよりも先にテーマパーク内にある講演会場へとやってきていた。
「特になんの気配もねぇな……お前らはなんか感じるか?」
と、クロノ。
「ううん、目立った魔力痕は見つからないかな」
『オイラも~』
ミオとポールがそれぞれ返事をする。
「なら、このままここで準備してるフリして待機だな」
「了解」
『じゃぁオイラはミオのリュックに隠れるから』
ポールは自らリュックを開けて、自分で中に入っていった。
その10分後には、カリスとミリィが到着する。
「どう?」
と、カリス。
「特に異常はなしだ」
そうクロノが返事をすると、カリスは「了解」と相槌を打った。
更にその10分後には他の商会のスタッフらも入ってきて、カリスが代表でそれぞれと挨拶を交わし、皆で準備を進めた。
その20分後には、アルノーとフランツも含めた講演会の出演者たちがゾロゾロとステージへと上がって打ち合わせを始めた。
その打ち合わせの光景をクロノとミオが目を光らせて見ていたが、特に変わりはなかった。
あえて言うなら、アルノーが少しおどおどしているだけである。
「やっぱり録音されてた会話の通り、フランちゃんの講演の直前にスナイパーが配置されるようね」
カリスが機材の確認をするフリをしてボソッと呟く。
「そうだな。恐らく今朝の録音を聞く限りアルノーの中でミオを逃したのはかなりの痛手のはずだ。ならこっちの作戦だけでも計画通りに成功させようと躍起になってんだろうな」
と、クロノが小さな声で答えた。
そして講演者らの打ち合わせも問題なく終わり、彼らはスタッフらと共に本番まで休憩に入った。
⸺⸺
午前9時頃、講演会会場が開放され、一般の客がゾロゾロと入ってくる。
クロノはその中にポップコーンを食べている帽子をかぶった青年らを見つけ、軽く吹き出した。
「あいつら普通に楽しんでんな……」
「だ、誰だれ?」
と、ミオ。
「ん、ルフレヴェ全員いる。未だスナイパーの気配もねぇし、あいつら上手くやれたみたいだな」
「おぉー、良かった! あ、誰か手を振ってるから振り返しとこ」
ミオは適当に手を振る。クロノはそれに対し「あれはチャドだな」と反応した。
⸺⸺
午前10時。一般客の中にも異常はなく、予定通り講演会が始まった。
フランツはアルノーと舞台袖で出番を待つ際、彼の異様なまでの焦りを感じ取っていた。
恐らく彼らのいる位置から見える範囲にスナイパーが配置される予定だったのであろうが、未だその気配はない。
そのための焦りだろうと、フランツは考えていた。
そんな焦りよりも、これからもっと大変なことが起こるのに、のんきなやっちゃな、と彼は思うのであった。
そして、フランツの講演の番がやってきて、フランツがステージへと登場する。
エーベル商会のメンバーに変装をしたクロノがフランツの側で護衛兼サポートに入った。
そんなクロノを観客席から見ていたルフレヴェのメンバーは、レアな光景に大笑いをしている。
そして裏方でサポートしているミオ、カリス、ミリィはお互いに顔を見合わせ、うんと頷いた。
「えー、皆様こんにちは。わたくしエーベル商会会長の、フランツ・エーベルと申します。本日はこの島の出資者であるブランシャール商会会長のアルノー氏にもご参加いただき、講演を進めさせていただきたいと思います」
「……は?」
打ち合わせやリハーサルとは全く違う入りに戸惑うアルノー。そうでなくても彼は今それどころではないのに。
沸き上がる観客。商会の中のトップ2の会長が2人で対談するというサプライズ演出に盛り上がらないはずがない。
「ではではアルノー氏、どうぞこちらへ」
フランツが舞台袖へ向かってニッコリ微笑むと、引きつった笑みのアルノーがトボトボとステージへと姿を現した。
更に沸き上がる観客。商会の講演会を見に来るような観客の中に、彼を知らない者はいない。
「皆様こんにちは。ブランシャール商会会長のアルノー・ブランシャールと申します……」
湧き上がる観客の中、彼はおどおどと挨拶を終えた。
そして遂に、偽善の仮面の剥がれる瞬間が訪れる。
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