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第四章 氷の女王と氷の少女

71話 部隊合流

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 休息を取り元気いっぱいになったミオらは、地下空洞をぐんぐん進んでいく。そして……。

「あの扉の先だ! マールージュ島のアルバウスと同じ感じがする!」
 ミオが指差した先には頑丈そうな金属の扉があった。

「でも、黒い気の気配もすごいね……」
 と、チャド。

「扉の向こうだけじゃなくて、手前にもまだデカイのがいるな? 上か」

 ケヴィンが天井を見上げると、バサッバサッと翼をはためかせながら真っ黒な炎をまとった竜がゆっくりと地面へ降り立った。

「こいつは、ジョズ島で船長が仮想戦闘したダークサラマンダー! ってかクラン支部さ、ここが閉鎖されてるからって亜種の通知サボってたでしょ。あとで訴えて報酬がっぽりもらわないと」
 チャドはそう言ってニヤッと笑い双剣のつかに手をかける。

「確かSランク亜種だったな? けど最強クラスの亜種だとか、んなのは関係ねー。もう俺らにかせはなんもねーんだから」
 ケヴィンも余裕の笑みを浮かべて前髪を掻き上げ、メイスを構えた。

「よぉし、私も上級魔法頑張っちゃうもんね~」
「せーれーぱわー!」
 ミオは意気揚々いきようようと杖を地面に突き立て魔法陣を描き、パウラもありったけの魔力をボウガンに詰めた。

 そしてケヴィンとチャドは同時に血昇けっしょうのアウラを発動させると、同じ低いトーンでうなるように吠えた。

「「いくぞてめぇら!」」

 ケヴィンとチャドは高く飛び上がり巨大な氷塊と稲妻の斬撃を、ミオは炎の上級魔法“エルフレイム”を、そしてパウラは竜の足元へボウガンを撃ち込み大量のいばらで竜を貫いた。
 やがてそれは竜の元で一つに重なり、大爆発を引き起こす。


⸺⸺連携奥義 ヘルフレア⸺⸺


 凄まじい爆発音と共に爆風が彼らにも襲いかかる。
 ミオとパウラはミオの構えた魔法障壁でそれに耐え、ケヴィンとチャドも遠くに退くことでなんとか防いだ。

 爆風が収まり煙も消え去ると竜がいたはずのその場所は何もおらず、黒い霧がチリチリと天へ昇っていた。
 その霧は紛れもなく竜を倒した証拠であり、あっけなく討伐が完了した。


「いやぁすごかったなぁ! 俺らの連携奥義! 名付けてヘルフレア!」
 上機嫌でケヴィンがミオの元へと合流する。

「自由って気持ちいい~!」
 チャドも伸びをしながらそう言い合流した。

「ケヴィンとチャド、血昇のアウラ発動したら全く同じ目つきと声になったよ! 普段の陽気な感じから一変、迫力満点のオラオラ系になってギャップがカッコ良かった!」
 ミオが興奮気味に話す。

「「そうなの?」」
 双子は声を揃えてそう言うと、顔を見合わせて微笑み、グータッチをした。


 ⸺⸺その時、奥から懐かしい声が聞こえてくる。

「おい、扉吹っ飛んできたぞ……大丈夫か!?」
 そう言ってクロノが扉があったであろうはずの穴から駆け込んできた。

「「船長~!」」
「クロノ~! ほら、パウラも」
「クロノ~!」

 皆がわいわいとクロノを出迎えたため、彼は呆気にとられてポカンとしていた。
「な、なんか思ったよりも元気そうだな……」

「ダークサラマンダーぶっ飛ばして元気百倍だぜ!」
 と、ケヴィン。

「ついでに扉もぶっ飛ばしてテンションMAXだぜぇ!」
「だぜぇ!」
 ミオがケヴィンの真似をして言い、手を顔の前でクロスさせポーズを取ると、パウラも何かも分からずに同じようにポーズを取っていた。

「ダークサラマンダーだと? 扉の向こうから感じた気配はそれだったか……何だそのポーズは俺にどうしてほしいんだ」
 クロノは深くため息をつく。

「真似してほしい」
「まねっこ~」

「却下」

「ガーン」
「がーん」
 ミオとパウラは時間差で項垂うなだれた。

「パウラは……何があった?」
 クロノの知っている彼女とは雰囲気が全く異なっていたため、流石さすがの彼も聞かずにはいられなかった。

「パウラ、心の氷がとけて緑の聖霊なのおもいだした!」
 パウラはそう言ってもう一度手をクロスさせてポーズを取った。
 どうやらそのポーズが気に入ったようである。

「! そうだったのか……。あそこでお前が気にかけていなかったら、すれ違うところだったな」
「そのようですな」
 ミオはうんうんとうなずいた。


「で、船長。この先が例の楽園なんだよな? なんかすげー禍々まがまがしいけど……」
 ケヴィンが穴の先を見つめながら問う。

「そうだ。黒魔症くろましょうを5年間放置するとアルバウスも手に負えないくらいの黒い気が発生するらしい。本来光が射し込んでいるはずのそこは、一瞬通って来たが地獄の風景みてぇだったぞ」

「な、なんか5年間放置したお風呂の黒カビみたい……」
 ミオは地獄絵図の風呂場を想像した。

「その地獄を普通に通ってきちゃう船長って……」
 と、チャド。

「俺は魔力がねぇからな。あいつらもガン無視だった」
「あ、そうだった……」

「そか、だからとりあえず船長だけが来てくれたんだな。みんな上の入り口で待ってるってことか?」
 ケヴィンがそう尋ねると、クロノは軽くうなずいた。
「そういうことだ。お前らも元気そうだし、このまま予定通りに事を進めるぞ。いいかよく聞け……」


 こうして無事に合流を果たしたルフレヴェは、いよいよ緊急クエストの本題へと入っていくのであった。

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