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第五章 聖女の奇跡
65話 聖女の奇跡
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強い強い光が辺り一面を覆い尽くす。
ペンダントに込められたクレアお母さんの魔力が、私の中の魔力と融合していくのが分かる。これはきっと大魔女、そして聖女の継承の儀だ。
私の中で定着したこの神聖なる魔力。両腕を広げて一気に解放した。
「父上……!」
オーウェン団長がアドルフさんの身体から慌てて槍を引き抜くと、アドルフさんの悪魔の角が消え、瞳は赤黒さを失って生気を取り戻し、傷が癒えていく。更に彼の身体の中から今までに吸い取った数々の魔力が一気に放出されていく。
「やめろ、やめろぉっ!」
巫女様にまとわりついていたアイーダの黒い魔力もスーッと消えていき、それでもなお彼女は私の魔力に捕われて動くことができないようだった。
セシル皇帝陛下は私の腰から双剣を引き抜くと、無防備に立ち尽くすアイーダの心臓を貫いた。
「こんな……餓鬼に……。悔しい……。でも、もう遅い……あんたの帝国は……もうひっくり返ってる……」
アイーダはそう言って崩れ落ち、黒い霧となって消えていった。
「もうひっくり返ってる……?」
皇帝陛下は刃にまとわりついた彼女の血が黒い霧となって蒸発するのを見つめ、その言葉の意味を考えていた。
⸺⸺
私が祈りを続けていると、巫女様が私の手に自身の手を重ねてきて、一緒に祈りを捧げてくれた。
すると、アドルフさんから解放された魔力が次々に時を巻き戻し、お父さんが、ラスさんが、テオにブラッドが、そして12年前に消滅した魔女の森の同胞や旧白狼騎士団の1万人もの生命が、一斉にこの場に蘇った。
「これは……ルカが聖女の力を……!」
テオはそう言って元気そうに辺りをキョロキョロする。
「そっか、ルカが……」
ラスさんも自分の手をグーパーして動くのを確認する。
「ルカ!」
ブラッドが祈っている私に飛びつこうとするのをテオが「まだ祈ってるでしょう」と言って引っ張って止める。
「クレアの魔力が発動したのか……」
と、お父さん。オーウェン団長が「そのようです」と返事をする。
「アヴァリス! 良かった……無事で……」
皇帝陛下がお父さんへ飛びつく。
「セシル……」
お父さんも強く抱きしめる。そっか、皇帝陛下にとって、お父さんが育ての親なんだ。
やがて巫女様が目で合図してくれて皆が蘇ったのを悟ると、聖女の祈りを解除した。
辺りの光がゆっくりと消えていき、ボロボロに崩れた家々が再び姿を現した。
どうやら建物にまでは作用しなかったらしい。
一息ついた私のもとへ、クレアお母さんとシータお母さんがやってきた。
ペンダントに込められたクレアお母さんの魔力が、私の中の魔力と融合していくのが分かる。これはきっと大魔女、そして聖女の継承の儀だ。
私の中で定着したこの神聖なる魔力。両腕を広げて一気に解放した。
「父上……!」
オーウェン団長がアドルフさんの身体から慌てて槍を引き抜くと、アドルフさんの悪魔の角が消え、瞳は赤黒さを失って生気を取り戻し、傷が癒えていく。更に彼の身体の中から今までに吸い取った数々の魔力が一気に放出されていく。
「やめろ、やめろぉっ!」
巫女様にまとわりついていたアイーダの黒い魔力もスーッと消えていき、それでもなお彼女は私の魔力に捕われて動くことができないようだった。
セシル皇帝陛下は私の腰から双剣を引き抜くと、無防備に立ち尽くすアイーダの心臓を貫いた。
「こんな……餓鬼に……。悔しい……。でも、もう遅い……あんたの帝国は……もうひっくり返ってる……」
アイーダはそう言って崩れ落ち、黒い霧となって消えていった。
「もうひっくり返ってる……?」
皇帝陛下は刃にまとわりついた彼女の血が黒い霧となって蒸発するのを見つめ、その言葉の意味を考えていた。
⸺⸺
私が祈りを続けていると、巫女様が私の手に自身の手を重ねてきて、一緒に祈りを捧げてくれた。
すると、アドルフさんから解放された魔力が次々に時を巻き戻し、お父さんが、ラスさんが、テオにブラッドが、そして12年前に消滅した魔女の森の同胞や旧白狼騎士団の1万人もの生命が、一斉にこの場に蘇った。
「これは……ルカが聖女の力を……!」
テオはそう言って元気そうに辺りをキョロキョロする。
「そっか、ルカが……」
ラスさんも自分の手をグーパーして動くのを確認する。
「ルカ!」
ブラッドが祈っている私に飛びつこうとするのをテオが「まだ祈ってるでしょう」と言って引っ張って止める。
「クレアの魔力が発動したのか……」
と、お父さん。オーウェン団長が「そのようです」と返事をする。
「アヴァリス! 良かった……無事で……」
皇帝陛下がお父さんへ飛びつく。
「セシル……」
お父さんも強く抱きしめる。そっか、皇帝陛下にとって、お父さんが育ての親なんだ。
やがて巫女様が目で合図してくれて皆が蘇ったのを悟ると、聖女の祈りを解除した。
辺りの光がゆっくりと消えていき、ボロボロに崩れた家々が再び姿を現した。
どうやら建物にまでは作用しなかったらしい。
一息ついた私のもとへ、クレアお母さんとシータお母さんがやってきた。
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