61 / 69
第五章 聖女の奇跡
61話 私の恩人
しおりを挟む
※戦いによる少し過激な表現があります。ご注意下さい※
⸺⸺場面は集落の中心地へと移る。
集落は魔物の攻撃によってあちこちで炎が上がっていた。
魔物に応戦する魔女の同胞たち。彼女らは強く、魔物は次々に討伐されていく。
しかし、フリーデン団長の召喚は止まらず倒しても倒してもそれ以上に湧いてきていた。
そんな中、アイーダの下僕と化したアドルフさんがゆっくりと中心地へ現れる。
ふぅふぅと息が荒く、何かに苦しんでいるような、そんなふうにも見える。
『アドルフ様……!? そのお姿は一体……!』
クレア様がアドルフさんを見つけて驚愕する。
そしてアドルフさんはゆっくりと槍を構え、掠れた声でこう言った。
『ニ……ゲロ……ッ!』
『っ!? ごほっ……』
アドルフさんの槍が、クレア様の心臓を貫いた。同時に、オーウェン団長とお父さんが絶望の表情で膝をついて崩れ落ちていく。
『アァ……ッ! アヴァ、リス……スマ、ナイ……! アアアアァァァ!』
アドルフさんの悲痛な雄叫びが集落中へと響き渡る。
すると、その声に反応した魔物がアドルフさんを襲い始める。
彼は狂ったように槍を振り回し、次々に魔物を討伐していった。
『あなた!? 一体何が……!』
ここで、オーウェン団長のお母上のマリエルさん率いる白狼騎士団が突入してくる。
『マリ、エ……ニゲ、ロ……ッ!』
『そいつ、アタシのお人形さんになったの』
アイーダが不敵に笑いながらゆっくりと現れる。
『あなたはアルフォンソ夫人……!? 何なのその禍々しい気配は……』
『もうその説明飽きちゃったからしないわよ。このお人形さん、まだちょっと自我があって抵抗してるみたいだから今倒して吸い取った魔物の魂を融合させましょうか』
『グアァァァァッ!?』
『あなた!』
アイーダが何かを唱えるとアドルフさんは更に苦しみ出し、フゥーッ、フゥーッとまるで猛獣のように呼吸をしていた。
それに合わせるように、更に大量の魔物が召喚される。
『あなた、気を確かに! 魔物がこんなに……。皆に命じます! 森の民を1人でも多く救出して森の外へ!』
『はっ!』
白狼の皆が集落中へ散っていく。そしてマリエルさんも泣く泣くアドルフさんへ背を向けると、森の民を探して走り出した。
マリエルさんは私の家の前を通り過ぎようとして急に止まり、引き返して窓から中を覗き込む。
そして窓を突き破って中へ入り、小さな私を抱えて入り口から外に飛び出てきた。
私、こうやって助け出されたんだ……。
マリエルさんは私を庇いながら集落を取り囲む魔物の群れに突っ込んでいき、あちこちに傷を負いながら森の外へと脱出していった。
「あれは、お前だな……」
と、お父さん。
「はい……」
「そうか、マリエルがお前を……」
「あの後、外に待機していたオーウェン団長とラスさんによって、メドナ城へと送り届けられたそうです」
「そうだったか……それで生き残れたのだな……」
お父さんはそう言って、目頭を押さえてうつむいた。
⸺⸺場面は集落の中心地へと移る。
集落は魔物の攻撃によってあちこちで炎が上がっていた。
魔物に応戦する魔女の同胞たち。彼女らは強く、魔物は次々に討伐されていく。
しかし、フリーデン団長の召喚は止まらず倒しても倒してもそれ以上に湧いてきていた。
そんな中、アイーダの下僕と化したアドルフさんがゆっくりと中心地へ現れる。
ふぅふぅと息が荒く、何かに苦しんでいるような、そんなふうにも見える。
『アドルフ様……!? そのお姿は一体……!』
クレア様がアドルフさんを見つけて驚愕する。
そしてアドルフさんはゆっくりと槍を構え、掠れた声でこう言った。
『ニ……ゲロ……ッ!』
『っ!? ごほっ……』
アドルフさんの槍が、クレア様の心臓を貫いた。同時に、オーウェン団長とお父さんが絶望の表情で膝をついて崩れ落ちていく。
『アァ……ッ! アヴァ、リス……スマ、ナイ……! アアアアァァァ!』
アドルフさんの悲痛な雄叫びが集落中へと響き渡る。
すると、その声に反応した魔物がアドルフさんを襲い始める。
彼は狂ったように槍を振り回し、次々に魔物を討伐していった。
『あなた!? 一体何が……!』
ここで、オーウェン団長のお母上のマリエルさん率いる白狼騎士団が突入してくる。
『マリ、エ……ニゲ、ロ……ッ!』
『そいつ、アタシのお人形さんになったの』
アイーダが不敵に笑いながらゆっくりと現れる。
『あなたはアルフォンソ夫人……!? 何なのその禍々しい気配は……』
『もうその説明飽きちゃったからしないわよ。このお人形さん、まだちょっと自我があって抵抗してるみたいだから今倒して吸い取った魔物の魂を融合させましょうか』
『グアァァァァッ!?』
『あなた!』
アイーダが何かを唱えるとアドルフさんは更に苦しみ出し、フゥーッ、フゥーッとまるで猛獣のように呼吸をしていた。
それに合わせるように、更に大量の魔物が召喚される。
『あなた、気を確かに! 魔物がこんなに……。皆に命じます! 森の民を1人でも多く救出して森の外へ!』
『はっ!』
白狼の皆が集落中へ散っていく。そしてマリエルさんも泣く泣くアドルフさんへ背を向けると、森の民を探して走り出した。
マリエルさんは私の家の前を通り過ぎようとして急に止まり、引き返して窓から中を覗き込む。
そして窓を突き破って中へ入り、小さな私を抱えて入り口から外に飛び出てきた。
私、こうやって助け出されたんだ……。
マリエルさんは私を庇いながら集落を取り囲む魔物の群れに突っ込んでいき、あちこちに傷を負いながら森の外へと脱出していった。
「あれは、お前だな……」
と、お父さん。
「はい……」
「そうか、マリエルがお前を……」
「あの後、外に待機していたオーウェン団長とラスさんによって、メドナ城へと送り届けられたそうです」
「そうだったか……それで生き残れたのだな……」
お父さんはそう言って、目頭を押さえてうつむいた。
10
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説

竜王の息子のお世話係なのですが、気付いたら正妻候補になっていました
七鳳
恋愛
竜王が治める王国で、落ちこぼれのエルフである主人公は、次代の竜王となる王子の乳母として仕えることになる。わがままで甘えん坊な彼に振り回されながらも、成長を見守る日々。しかし、王族の結婚制度が明かされるにつれ、彼女の立場は次第に変化していく。
「お前は俺のものだろ?」
次第に強まる独占欲、そして彼の真意に気づいたとき、主人公の運命は大きく動き出す。異種族の壁を超えたロマンスが紡ぐ、ほのぼのファンタジー!
※恋愛系、女主人公で書くのが初めてです。変な表現などがあったらコメント、感想で教えてください。
※全60話程度で完結の予定です。
※いいね&お気に入り登録励みになります!
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる