【完結】隣国にスパイとして乗り込み故郷の敵である騎士団長様へ復讐をしようとしたのにうっかり恋をしてしまいました

るあか

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第五章 聖女の奇跡

59話 12年前の黒幕

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⸺⸺12年前、事件当日。

 魔女の森へ、ある女性が訪ねてくる。
『あなたは……アイーダですね……』
 と、クレア様。

「アイーダさん!? 全然顔違くない?」
 私は思わずそうツッコむ。
「あの女は……がわはアルフォンソ夫人だ……」
 と、お父さん。アルフォンソ夫人って事は、蒼熊そうゆう騎士団のイグナシオ・アルフォンソ団長の奥さんだ。
「確かに……俺も一度見かけたことがある」
 オーウェン団長もそう続いた。

『やだ、何でわかるの? 気持ち悪……』
 アイーダさん……いや、アイーダはそう言って嘲笑う。
『別人に成りすまして一体何の用ですか』

『別になりたくてこの顔になったんじゃないわよ。アタシはね、聖女の力を超えるため悪魔に自分の身体を生贄に捧げたの』
『なっ……悪魔……!?』

『だから、身体がなくなったからこの伯爵令嬢の身体をもらっただけ。イグナシオって侯爵おじさんがいるんだけど、2人きりで呼び出して裸になったら喜んで抱いてくれたわ。あんたみたいに子供はできなかったけど、それでも結婚してくれたわ。子供を作って結婚させるだなんて卑怯な真似アタシはしてない。つまり、アタシの方が上ってこと』

 アイーダは魔女の森を追放されて、どうやらマウンティングお化けになっちゃったようだ。

『後ね、あんたと違ってアタシは何でも言う事聞いてくれる旦那様と一緒に暮らせるの。アタシがあなたを皇帝にしてあげるわ~って言ったら、あの人メロメロになっちゃうんだもの。男ってホントチョロいわね』
『……そう……』

『それでね、手始めに悪魔の力で皇帝を殺してあげたら、まるで神のように崇め始めたのよ』
「お父上を殺したのは、あの人でしたか……」
 と、セシル皇帝陛下。

『皇帝陛下を……? あなた、皇帝陛下を殺したの!?』
『だからそうやって言ってるじゃない。馬鹿なの?』

『あなた、そんな事をしてタダで済むと……』
『あー、うるさいうるさい。ねぇ、聞いてよ。アタシ、旦那だけじゃなくて愛人もいるのよ。ねぇ、ハンネス? この女に挨拶してあげてよ』

 木の上から若かりし頃のフリーデン団長が降りてくる。エルフの里でも木の上に潜んでたけど、木の上に登る癖は12年前からあったらしい。
『これはこれは聖女様……。あぁ、素敵な魔力だ……ぜひ解剖したい……』
 フリーデン団長はデレデレと笑う。気持ち悪い。
『ちょっと、やらしい目で見てんじゃないわよ』
 と、アイーダ。

『アイーダ……一体何がしたいの?』
 クレア様は彼女をキッと睨みつけながら言う。
『何って……この愛人がアタシの悪魔から授かったこの魔力を散々いじくり回してね、魔物を召喚出来るようになったから、あんたに見せてやろうと思って、この人を連れてきたのよ』

『魔物を召喚……!?』
 クレア様の表情が強張る。
『むふふ、アイーダ。これが上手くいったらまたいじらせてくれ。お前の魔力は何度いじっても連続イキしてしまうよ……!』

 えっと、気持ち悪い。

『んもう、分かったわよ。でも……ちょっとだけよ? 今日は侯爵おじさんもご褒美で抱かせてあげないとだ・か・らっ』
『あぁ、ちょっとでいい。んふふふ……今から楽しみでたまらん!』

「キモいんだけど」
 思わず口に出る。
「これは気持ち悪いですね……エルフの里でもあの顔で潜んでいたかと思うと……」
 と、テオ。
「やめろ、夢に出そうだ……」
 ブラッドがテオの口を塞ぐ。

 同期組で陰口を叩いていると森の中へある白い鎧の騎士が入ってくる。

「父上!」
「アドルフ団長!」
「アドルフ……」

 彼を知っているオーウェン団長、ラスさん、そしてお父さんは、切ない表情で彼の名を呼んだ。

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