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第五章 聖女の奇跡
55話 巫女様のお力
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⸺⸺メドナ王国 魔女の森⸺⸺
「帰ってきた……」
馬を森の入り口に留めて、12年ぶりに足を踏み入れる。
「立入禁止な件については……後で僕がクリスティア女王陛下へ謝罪に行きます」
と、セシル皇帝陛下。確かに、許可を取りに行ってる時間も惜しい気がする。後の対応は彼の言うとおり、彼にお任せしよう。
奥へと進むと、ボロボロに朽ち果てた家の残骸がポツポツと現われる。
「ここです。ここが魔女の森の民が住んでいた集落です」
私が巫女様に向かってそう告げると、巫女様は軽く頷き、持っていた数珠を両手で握りこの地への祈りを捧げた。
するとすぐに巫女様は淡い光を放ち始め、巫女様の中の魔力がこの地を包み込んでいくのを感じた。
「まずはこの辺りで良いでしょう。今から17年前のビジョンです」
⸺⸺⸺
⸺⸺
⸺
辺りがキラキラと光り、家々が透き通った形で元に戻っていく。
そして、懐かしい同胞の姿も透明な姿となって映し出された。
『お母様! どうして次の“大魔女”はアタシじゃなくてこんな血の繋がっていない女なの!?』
魔女の一人がそう言う。
『アイーダ。あなたは大魔女の器ではありません。大魔女の選定は血の繋がりは関係ないのです』
この人は前大魔女のヘーゼル様。あのアイーダって人はヘーゼル様の娘なんだ。
『そんなのおかしいわ! 今すぐアタシが大魔女だって訂正して』
と、アイーダ。
『お黙りなさい。あなたは大魔女どころかこの神聖な魔女の民である資格すらありません。わたくしは今この時をもってあなたを正式にこの森から追放します』
『そんな、酷い! 酷いわお母様!』
⸺⸺場面は少し先へと移り変わる。
『クレア、今日からあなたが大魔女です。その名に恥じぬよう、このイーラ島の平和を見守っていって下さい』
ヘーゼル様はそう言って大魔女の証であるペンダントをクレア様の首にかけた。
これは魔女の森の大魔女の継承の儀だ。このクレア様という人が最後の大魔女、つまり、魔女の民の長だ。
ここで巫女様が口を開く。
「ルカ。この大魔女というのが、森の外では“聖女”と呼ばれる存在の者です。ただ、森の民の長を務めるだけではありませんでした」
「大魔女様が……聖女……そっか、そうだったんだ……」
私はうんうんと納得する。
『はい、ヘーゼル様。このクレア、生涯を懸けてこのイーラ島の為に祈りを捧げます』
「クレア……」
ふと、ヴェイン団長が寂しそうにそう呟く。
「ヴェイン団長、クレア様のことを知ってるんですか?」
「……貴様には関係ない」
ヴェイン団長が私の問いにそう素っ気なく答えると、巫女様はクスクスと笑って「ではこの1年先、今から16年前のビジョンです」と言い、場面がまたしても移り変わった。
⸺⸺
それは、誰かの結婚式の最中だった。
「あ、覚えてる、これ、クレア様の結婚式だ!」
私は思わずそう叫ぶ。
「あはは、アヴァリス、若いですね」
セシル皇帝陛下がそう言ってクスクスと笑っていたので、皆驚いて新郎の顔を見ると、とてつもなく柔らかい表情の若かりしヴェイン団長の姿がそこにあった。
「クレア様の旦那様って、ヴェイン団長だったの!?」
私は雷に撃たれたかのような衝撃に襲われる。
「マジかよ……ルカ、ヴェイン団長見たとき気付かなかったのか?」
と、ブラッド。
「だ、だってまだ2歳だったし……表情見て……別人……」
「確かに」
と、一同。
「あれ、でもヴェイン団長が奥さん連れてるところなんて一度も見たことないよ。奥さんいたのもビックリなんだけど」
と、ラスさん。
「魔女の森の民は、結婚をして子供ができるとすぐにまた魔女の森に戻ってきます。子供は男の子であればお父さんのもとで、女の子であればお母さんと一緒に魔女の森で暮らします」
私がそう説明をすると皆「だから女性しかいないのか……」と、納得をしていた。
「そしてルカ。先程一通り記憶を辿ったところ、あなたはあなたの母親が本当の母親ではないことを知っているはずです」
と、巫女様。
「はい、本当のお母さんは死んじゃったからって、シータ・エマーソンさんに育ててもらいました」
「そのようですね。ルカ、この島の平和のためにも、あなたはあなたの出生について知るべきなのです」
「私の出生が……この島のために?」
「はい。知る覚悟は、出来ていますか?」
「……大丈夫です。お願いします」
私の出生が一体何だって言うんだろう。私はドキドキしながら、次のビジョンを待った。
「帰ってきた……」
馬を森の入り口に留めて、12年ぶりに足を踏み入れる。
「立入禁止な件については……後で僕がクリスティア女王陛下へ謝罪に行きます」
と、セシル皇帝陛下。確かに、許可を取りに行ってる時間も惜しい気がする。後の対応は彼の言うとおり、彼にお任せしよう。
奥へと進むと、ボロボロに朽ち果てた家の残骸がポツポツと現われる。
「ここです。ここが魔女の森の民が住んでいた集落です」
私が巫女様に向かってそう告げると、巫女様は軽く頷き、持っていた数珠を両手で握りこの地への祈りを捧げた。
するとすぐに巫女様は淡い光を放ち始め、巫女様の中の魔力がこの地を包み込んでいくのを感じた。
「まずはこの辺りで良いでしょう。今から17年前のビジョンです」
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辺りがキラキラと光り、家々が透き通った形で元に戻っていく。
そして、懐かしい同胞の姿も透明な姿となって映し出された。
『お母様! どうして次の“大魔女”はアタシじゃなくてこんな血の繋がっていない女なの!?』
魔女の一人がそう言う。
『アイーダ。あなたは大魔女の器ではありません。大魔女の選定は血の繋がりは関係ないのです』
この人は前大魔女のヘーゼル様。あのアイーダって人はヘーゼル様の娘なんだ。
『そんなのおかしいわ! 今すぐアタシが大魔女だって訂正して』
と、アイーダ。
『お黙りなさい。あなたは大魔女どころかこの神聖な魔女の民である資格すらありません。わたくしは今この時をもってあなたを正式にこの森から追放します』
『そんな、酷い! 酷いわお母様!』
⸺⸺場面は少し先へと移り変わる。
『クレア、今日からあなたが大魔女です。その名に恥じぬよう、このイーラ島の平和を見守っていって下さい』
ヘーゼル様はそう言って大魔女の証であるペンダントをクレア様の首にかけた。
これは魔女の森の大魔女の継承の儀だ。このクレア様という人が最後の大魔女、つまり、魔女の民の長だ。
ここで巫女様が口を開く。
「ルカ。この大魔女というのが、森の外では“聖女”と呼ばれる存在の者です。ただ、森の民の長を務めるだけではありませんでした」
「大魔女様が……聖女……そっか、そうだったんだ……」
私はうんうんと納得する。
『はい、ヘーゼル様。このクレア、生涯を懸けてこのイーラ島の為に祈りを捧げます』
「クレア……」
ふと、ヴェイン団長が寂しそうにそう呟く。
「ヴェイン団長、クレア様のことを知ってるんですか?」
「……貴様には関係ない」
ヴェイン団長が私の問いにそう素っ気なく答えると、巫女様はクスクスと笑って「ではこの1年先、今から16年前のビジョンです」と言い、場面がまたしても移り変わった。
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それは、誰かの結婚式の最中だった。
「あ、覚えてる、これ、クレア様の結婚式だ!」
私は思わずそう叫ぶ。
「あはは、アヴァリス、若いですね」
セシル皇帝陛下がそう言ってクスクスと笑っていたので、皆驚いて新郎の顔を見ると、とてつもなく柔らかい表情の若かりしヴェイン団長の姿がそこにあった。
「クレア様の旦那様って、ヴェイン団長だったの!?」
私は雷に撃たれたかのような衝撃に襲われる。
「マジかよ……ルカ、ヴェイン団長見たとき気付かなかったのか?」
と、ブラッド。
「だ、だってまだ2歳だったし……表情見て……別人……」
「確かに」
と、一同。
「あれ、でもヴェイン団長が奥さん連れてるところなんて一度も見たことないよ。奥さんいたのもビックリなんだけど」
と、ラスさん。
「魔女の森の民は、結婚をして子供ができるとすぐにまた魔女の森に戻ってきます。子供は男の子であればお父さんのもとで、女の子であればお母さんと一緒に魔女の森で暮らします」
私がそう説明をすると皆「だから女性しかいないのか……」と、納得をしていた。
「そしてルカ。先程一通り記憶を辿ったところ、あなたはあなたの母親が本当の母親ではないことを知っているはずです」
と、巫女様。
「はい、本当のお母さんは死んじゃったからって、シータ・エマーソンさんに育ててもらいました」
「そのようですね。ルカ、この島の平和のためにも、あなたはあなたの出生について知るべきなのです」
「私の出生が……この島のために?」
「はい。知る覚悟は、出来ていますか?」
「……大丈夫です。お願いします」
私の出生が一体何だって言うんだろう。私はドキドキしながら、次のビジョンを待った。
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