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第四章 平和への軌跡

43話 オーウェン団長の覚悟

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⸺⸺白狼騎士団 宿舎⸺⸺

「なるほど、彼らは噂を聞いたのではなく、実際にお二人が話している現場を目撃したのか」
 私たちの報告を聞いて、オーウェン団長はうーんと考え込む。

「『先手を打たれる前にこちらから行くべき』っつーのはさ、皇帝陛下も何か情報を手に入れてるって事だよな」
 と、ラインハルト団長。

「帝国もメドナ王国へスパイを送ってるんすかね?」
 ブラッドが難しい顔をしながらそう言った。それに対しオーウェン団長は首を横に振る。
「この文言だけだと相手はメドナ王国とは限らないぞ」

「ま、まさか俺の故郷シュタイン王国が……!?」
 テオはそう言ってサーッと青ざめる。
「こればかりは俺らで考えてもしょうがないな。それぞれ直接確かめてみるしかない」
 と、オーウェン団長。

「直接って?」
 ラスさんが尋ねる。
「まずは皇帝陛下にそれとなく、今後のビジョンを聞いてみる」
「その事ヴェイン団長に悟られるなよ。うちのアベルとチェスターが告げ口したのバレんだろ。ヴェイン団長は皇帝陛下の側にいる確率が高いからな……いると思ったほうがいい」
 ラインハルト団長が即座に口を挟む。

「あぁ、分かってる。いざとなったら12年前の魔女の森の事を話題に出してそっちが本題だと思わせるつもりだ」
 と、オーウェン団長。
「ん、頼むぜ」

「その後、テオバルトの里帰りを称してシュタイン国王陛下へ挨拶に行く」
「やっぱり……そうなりますか……」
 テオはシュンと落ち込む。
「テオバルトは気が重いだろうが、お前は立派に成長した。その姿を見せる良い機会でもある。なんとか両国の平和のために協力をしてくれ」
「はい、そうですよね。皆この島の国々の平和を願っているんです。俺も覚悟を決めますよ」
 テオは自分を鼓舞するようにそう返した。

「メドナ王国のクリスティア女王陛下へは、メルヴィン、頼めるだろうか。女王陛下にはこのありのままを話してもらって構わない」
「承知した」
 メルヴィンさんは短く返事をし、軽く頷いた。

「さぁ、俺も覚悟を決めるぞ。12年前の決着を付けることになるかもしれんからな」
 オーウェン団長はそう言ってふぅっと吐息を吐く。そんな彼に私はこう進言した。
「オーウェン団長、その件、私も同行させて下さい! 私が居れば12年前の事を探っている信憑性も増します」

 彼はしばらく悩んだ末「分かった、俺の側を離れるなよ」と、了承してくれた。

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