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第二章 真実と恋の探求
25話 空白の歴史
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「1714年前後の資料、これで全部目、通したよね?」
私は2人の顔を順番に見る。大きくうなずく2人。
「何で……どういうことなの……」
私はガーンと項垂れる。
「この1714年8月以降、1715年までの記録がゴソっとないですね」
と、テオ。
「この8月の出撃記録が魔女の森のやつか?」
そのブラッドの問に対し、私は首を横に振る。
「あれは9月のことだったから、それじゃないと思う」
「その先の2月の記録が、もう5人の騎士団での活動記録になっていますね」
「抜き取ったりとか、塗りつぶされたりとか、そういう感じじゃなさそうだしね……まるで“初めから何も書いていない”みたい」
私は記録の用紙を擦りながら言う。
そう、私たちの見つけた驚きの事実とは、その魔女の森の前後の記述が全くないことだった。
「そう言えばオーウェン団長、当時の記録は何も残されていないって言ってたよな」
と、ブラッド。
「そうですね、でも残されていなかったのは、魔女の森の事件の前後だけです。つまり、オーウェン団長は、ルカが12年前の中でも魔女の森の事を知りたがっているのを知っているってことですね」
「しかも、8月までは特に何もなかったのに、翌年の2月は既に5人。これって……魔女の森で白狼騎士団の1万人が一気に亡くなったって事だよね……」
私はそんなのありえないと思いながらも、状況証拠的にそう推測するしかなかった。
「魔女の森って、何人くらい住んでたんだ?」
と、ブラッド。
「うーん、まだ6歳だったし正確な数は分からないけど、200人くらいかなぁ」
「例えばですけど、1万人の白狼騎士団が攻めてきたとして、魔女の森の200人の戦力で相討ちになりそうですか?」
と、テオ。
「うーん……とても太刀打ちできなくて、白狼騎士団が全滅することなんてないと思うけどなぁ」
私は頭を抱えながらそう答える。
「そう言えば、オーウェン団長とラスさんはなんで助かったんだ?」
と、ブラッド。
「確かに。ってか、12年前ってラスさん16歳だよね。まだ騎士団にいなかったんじゃない?」
私がそう言うと、テオがこう反論した。
「でも、オーウェン団長は『俺とラスを残して全滅した』っていう言い方をしていました。ラスさんも騎士団に入っていたと考えるのが自然だと思います。必ずしも18歳である必要はないので、何か特例で入れていたのかもしれません」
「もう、直接聞いてみるか?」
と、ブラッド。
「うーん、そうだなぁ……でも、その前にもう1つ自分で確認したいことがあるの」
「何ですか?」
と、テオ。
「あのね、城内にある書庫でも12年前の記述の確認をしたいの」
「なるほど」
「城って、勝手に入っていいのか?」
と、ブラッド。
「確か3等級騎士から立入禁止エリアを除いて自由に歩き回れるよね?」
私は『騎士の心得』という冊子の中身を思い出しながらそう答える。
「そうですね。そう『騎士の心得』に書いてあったような気がします」
「だよねだよね。だから、今度のオフの時、お城の書庫に行ってみたい」
「よし、決まりだな」
「では、今日はこれで終わりにしますか~」
テオはそう言いながら、うーっと伸びをした。
「うん、みんなこんな時間まで付き合ってくれて本当にありがとう!」
「いいってことよ」
ブラッドがニッと笑う。
こうして、次のオフの日に3人でお城の書庫へと行くことになった。
私は2人の顔を順番に見る。大きくうなずく2人。
「何で……どういうことなの……」
私はガーンと項垂れる。
「この1714年8月以降、1715年までの記録がゴソっとないですね」
と、テオ。
「この8月の出撃記録が魔女の森のやつか?」
そのブラッドの問に対し、私は首を横に振る。
「あれは9月のことだったから、それじゃないと思う」
「その先の2月の記録が、もう5人の騎士団での活動記録になっていますね」
「抜き取ったりとか、塗りつぶされたりとか、そういう感じじゃなさそうだしね……まるで“初めから何も書いていない”みたい」
私は記録の用紙を擦りながら言う。
そう、私たちの見つけた驚きの事実とは、その魔女の森の前後の記述が全くないことだった。
「そう言えばオーウェン団長、当時の記録は何も残されていないって言ってたよな」
と、ブラッド。
「そうですね、でも残されていなかったのは、魔女の森の事件の前後だけです。つまり、オーウェン団長は、ルカが12年前の中でも魔女の森の事を知りたがっているのを知っているってことですね」
「しかも、8月までは特に何もなかったのに、翌年の2月は既に5人。これって……魔女の森で白狼騎士団の1万人が一気に亡くなったって事だよね……」
私はそんなのありえないと思いながらも、状況証拠的にそう推測するしかなかった。
「魔女の森って、何人くらい住んでたんだ?」
と、ブラッド。
「うーん、まだ6歳だったし正確な数は分からないけど、200人くらいかなぁ」
「例えばですけど、1万人の白狼騎士団が攻めてきたとして、魔女の森の200人の戦力で相討ちになりそうですか?」
と、テオ。
「うーん……とても太刀打ちできなくて、白狼騎士団が全滅することなんてないと思うけどなぁ」
私は頭を抱えながらそう答える。
「そう言えば、オーウェン団長とラスさんはなんで助かったんだ?」
と、ブラッド。
「確かに。ってか、12年前ってラスさん16歳だよね。まだ騎士団にいなかったんじゃない?」
私がそう言うと、テオがこう反論した。
「でも、オーウェン団長は『俺とラスを残して全滅した』っていう言い方をしていました。ラスさんも騎士団に入っていたと考えるのが自然だと思います。必ずしも18歳である必要はないので、何か特例で入れていたのかもしれません」
「もう、直接聞いてみるか?」
と、ブラッド。
「うーん、そうだなぁ……でも、その前にもう1つ自分で確認したいことがあるの」
「何ですか?」
と、テオ。
「あのね、城内にある書庫でも12年前の記述の確認をしたいの」
「なるほど」
「城って、勝手に入っていいのか?」
と、ブラッド。
「確か3等級騎士から立入禁止エリアを除いて自由に歩き回れるよね?」
私は『騎士の心得』という冊子の中身を思い出しながらそう答える。
「そうですね。そう『騎士の心得』に書いてあったような気がします」
「だよねだよね。だから、今度のオフの時、お城の書庫に行ってみたい」
「よし、決まりだな」
「では、今日はこれで終わりにしますか~」
テオはそう言いながら、うーっと伸びをした。
「うん、みんなこんな時間まで付き合ってくれて本当にありがとう!」
「いいってことよ」
ブラッドがニッと笑う。
こうして、次のオフの日に3人でお城の書庫へと行くことになった。
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