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第一章 白狼騎士団
11話 心優しき暗殺者と劣等の王子
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ラスさんは私の方を向いて口を開く。
「次にルカ。君は王宮兵としてかなりの訓練を積んできたと見える。魔力操作による素早い動きに的確な状況判断。そして魔双剣から放たれる強力な斬撃。どれも目を見張る物がある」
「でも……仕留めきれませんでした。結局テオのフォローがあって、なんとかなりました」
私は一気に落ち込んでいく。
「俺にはわざと急所をそらしていたように見えたんだけど、気のせいかな?」
「っ!」
そう言われて先輩方との模擬戦を振り返ってみると、無意識に軌道をズラしてしまったような気がしてくる。
「そうかも……しれません……」
「君は優しいんだね。この訓練場は特別な結界が張ってあって、攻撃を食らっても傷を負わない設計になってるって、最初に説明したよね」
「はい……」
「だから、たとえ相手が同じ騎士団の仲間でも、この訓練場の中では遠慮しなくていいんだよ」
「はい、すみません……」
「マジか、ルカ、あれで手加減してたってことか」
と、ブラッド。
「ブラッドがあんな一生懸命守ってくれてたのに、ごめんね……」
私は罪悪感で泣きそうになってくる。そんな私の表情を見て、ブラッドはあわあわしていた。
「ちげーって、俺は本当はもっと強いんだなって思ってすげーって思ったの!」
「ブラッド……ありがとう」
ラスさんは最後にテオへ語りかける。
「テオバルトは、すごい魔力と正確な魔力操作のセンスがある」
「そう、でしょうか……」
テオは困惑気味にそう返した。
「自分では、そう思ってないの?」
と、ラスさん。
「俺の国では、魔道士は力がなく落ちぶれた者がなるものですので……父上や兄たちにはいつも非力って馬鹿にされていました」
「はぁ~、なるほどね、そういうことかぁ。君のお父様、つまりシュタイン国王陛下からは、その腐った根性を叩き直してくれって言われてんだよ。俺からしたらどこが腐ってるんだろうって思ってた訳よ」
「文化の違い……」
私はそうボソッと呟く。
「そう、シュタイン王国は魔道よりも武力に力を入れている国なんだね。確かにそう言われてみれば君のお父様は筋肉隆々だわ」
と、ラスさん。
「俺は、てっきり国を追放されたものだと思っていましたが……」
「いやいや、君に強くなってほしくてウチに入れてくれたみたいよ」
「そうですか。僕は……魔道士を辞めるべきなんでしょうか」
「オーウェンはそう思ってはないみたいだけどね」
「団長が……?」
テオは驚いた表情を見せる。
「この最強の壁、ブラッド君を採用した時点で、残り2枠は必然的に後衛から中衛となる。正直誰を軸に考えたかは俺には分からないけど、君たちはそのスタイルを貫いていくのがいいと、オーウェンは考えたみたいだよ」
「テオは、魔法嫌い?」
私はそう尋ねてみる。
「いえ、俺は……魔法は好きです。でも、ダメな物だと思っていたので、その気持ちを抑えてきました」
「なら、もっと魔法を伸ばしていこうぜ!」
と、ブラッド。私も彼に続く。
「そうだよ。テオの中にはものすごい量の魔力を感じる。それをもっと極めて、シュタイン国王に魔法のすごさを見せつけよう」
「2人とも……はい、ありがとうございます! 俺、頑張ってみます」
テオはそう言ってグッとやる気を見せた。
「うんうん、良いパーティだぁ……」
ラスさんはそう言って、しんみりしながら私たちのやり取りを見守っていた。
「次にルカ。君は王宮兵としてかなりの訓練を積んできたと見える。魔力操作による素早い動きに的確な状況判断。そして魔双剣から放たれる強力な斬撃。どれも目を見張る物がある」
「でも……仕留めきれませんでした。結局テオのフォローがあって、なんとかなりました」
私は一気に落ち込んでいく。
「俺にはわざと急所をそらしていたように見えたんだけど、気のせいかな?」
「っ!」
そう言われて先輩方との模擬戦を振り返ってみると、無意識に軌道をズラしてしまったような気がしてくる。
「そうかも……しれません……」
「君は優しいんだね。この訓練場は特別な結界が張ってあって、攻撃を食らっても傷を負わない設計になってるって、最初に説明したよね」
「はい……」
「だから、たとえ相手が同じ騎士団の仲間でも、この訓練場の中では遠慮しなくていいんだよ」
「はい、すみません……」
「マジか、ルカ、あれで手加減してたってことか」
と、ブラッド。
「ブラッドがあんな一生懸命守ってくれてたのに、ごめんね……」
私は罪悪感で泣きそうになってくる。そんな私の表情を見て、ブラッドはあわあわしていた。
「ちげーって、俺は本当はもっと強いんだなって思ってすげーって思ったの!」
「ブラッド……ありがとう」
ラスさんは最後にテオへ語りかける。
「テオバルトは、すごい魔力と正確な魔力操作のセンスがある」
「そう、でしょうか……」
テオは困惑気味にそう返した。
「自分では、そう思ってないの?」
と、ラスさん。
「俺の国では、魔道士は力がなく落ちぶれた者がなるものですので……父上や兄たちにはいつも非力って馬鹿にされていました」
「はぁ~、なるほどね、そういうことかぁ。君のお父様、つまりシュタイン国王陛下からは、その腐った根性を叩き直してくれって言われてんだよ。俺からしたらどこが腐ってるんだろうって思ってた訳よ」
「文化の違い……」
私はそうボソッと呟く。
「そう、シュタイン王国は魔道よりも武力に力を入れている国なんだね。確かにそう言われてみれば君のお父様は筋肉隆々だわ」
と、ラスさん。
「俺は、てっきり国を追放されたものだと思っていましたが……」
「いやいや、君に強くなってほしくてウチに入れてくれたみたいよ」
「そうですか。僕は……魔道士を辞めるべきなんでしょうか」
「オーウェンはそう思ってはないみたいだけどね」
「団長が……?」
テオは驚いた表情を見せる。
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「テオは、魔法嫌い?」
私はそう尋ねてみる。
「いえ、俺は……魔法は好きです。でも、ダメな物だと思っていたので、その気持ちを抑えてきました」
「なら、もっと魔法を伸ばしていこうぜ!」
と、ブラッド。私も彼に続く。
「そうだよ。テオの中にはものすごい量の魔力を感じる。それをもっと極めて、シュタイン国王に魔法のすごさを見せつけよう」
「2人とも……はい、ありがとうございます! 俺、頑張ってみます」
テオはそう言ってグッとやる気を見せた。
「うんうん、良いパーティだぁ……」
ラスさんはそう言って、しんみりしながら私たちのやり取りを見守っていた。
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