【完結】隣国にスパイとして乗り込み故郷の敵である騎士団長様へ復讐をしようとしたのにうっかり恋をしてしまいました

るあか

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第一章 白狼騎士団

5話 同期

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 帝都へ戻り宿屋で数日過ごして、ついに今日が騎士団入団の日。

 私は少し緊張しながら、ヴァルトーマ城の敷地内にある白狼騎士団の宿舎へとやってきた。

⸺⸺白狼騎士団 宿舎⸺⸺

「失礼します、今日からお世話になりますルカ・エマーソンです」
 私は宿舎のロビーで深くお辞儀をする。すると、赤茶色の長髪を後ろで1つに束ねたイケメンが出迎えてくれた。

「はいはい、いらっしゃい。もう既に君の同期君が1人来てるから、その子とそっちの応接室で待ってて」
「は、はい、分かりました……!」
 緊張で思わず声が裏返ってしまう。

「あはっ、そんな緊張しなくていいよ。みんな優しい先輩ばっかだから、気楽に行こ?」
 イケメンはニコッと微笑む。

「すみません、ありがとうございます……」
 私は自分の頬が熱くなるのを感じながら、応接室へ逃げるように入った。

 宿屋の女将さんの言う通りだ。騎士団長といい、入り口の人といい、イケメンばっかり……。
 気付けば今までの人生、復讐のことばかりを考えていて、異性となんてあんまり絡んだことがなかった。
 あんなイケメンばっかりで私、大丈夫かな……。

「あっ、同期の人ですか? よろしくお願いします」
 応接室へ入るなり、華奢なアイドル顔の男子に声をかけられる。銀の短髪にクリッとした緑の瞳。
 それはそうと、この人小柄で女の子みたいだ。これは私のカモフラージュになってちょっと助かるかも。

「ルカです、よろしくお願いします」
「俺はテオバルト、テオでいいですよ」
 彼はそう言ってニコッと微笑む。うわ……可愛い。
「うん、分かった。僕もルカでいいから」
「はい、ルカ」

 彼の隣に腰掛ける。それにしても、テオはきっと貴族だ。身だしなみに気品を感じる。それでも上からな感じは全然なくて、むしろ親しみやすそう。
 同期の中では絶対当たりだ。仲良くしておこう。

「他の同期の人、全然来ないね……もう、集合の時間になるのに」
「少しだけ聞いたのですが、俺たちの同期はあと1人らしいですよ」
 そうテオが答えてくれる。

「え、ホントに? 3人かぁ、少ないね……」
「でも俺は、あまり多いと会話に入れないので、ちょうどいいな、なんて思ってます」
「あ、それは僕もそうかも……」

 そんな会話をしていると、入り口にいた赤髪のイケメンが部屋へと入ってくる。
「うーん、もう1人来ないねぇ……先、君らだけでも仲間に紹介しちゃおうか」

「「分かりました」」
 私とテオは声を揃えて返事をして立ち上がる。
「お、早速統率が取れててイイ感じ」
 と、赤髪イケメン。

 そして彼は戸を開けてくれて、私は1番最初に廊下に出た。

⸺⸺その瞬間。

 誰かがものすごい勢いで私へと覆い被さって来た。
「うおぉぉっ!?」
「うわぁっ!」

 何今の、ビックリした……!
 って、この人、私が背中打たないように抱きとめてくれてる!

「すいません……! 大丈夫っすか?」
 彼は少しだけ起き上がり、至近距離で私を見つめてくる。わっ、この人もイケメン……。焦げ茶のオールバックが倒れたせいでちょっと乱れてるのがまたカッコいい……。

「大丈夫……です……」
 私はそう言いながら自分の顔が熱くなるのを感じる。すると、なぜか目の前の彼も顔を真っ赤にして驚いた表情をしていた。

「お、女!? わりぃ……! いや、すみませんでした……!」
 彼は慌ててその場を飛び退く。っていうかヤバいもういきなり女だってバレた!?

「僕は、男ですよ……」
 そう悪あがきをしてみる。
「へ? あ、なんだぁ男かビックリしたぁ……!」
 彼はそう言ってホッと安堵あんどの吐息をついた。

「あっ、君、まさか残りの1人の?」
 赤髪イケメンが応接室から顔を覗かせてそう尋ねる。
「はい! ブラッド・ハンクス20歳です! 遅れて申し訳ありませんでした!」
 オールバックのイケメンはそう言って鋭角に頭を下げた。

 このイケメンが残り1人の同期!? ちょっと待って、私さっき気配感じ取れなかったんだけど……。
 でも今の時点で彼は気配を隠してる感じもなく、それくらいのスピードで廊下を突っ切っていたことが推測出来た。

 さすが3人に選ばれるだけのことはある……。同期、なかなか強者つわもの揃いっぽい……。


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