箱入りの魔法使い

ジュリ

耕地

ネロはフミヤと同じ時期に入院した孤児だ。

孤児は強力な固有魔法に目覚める可能性が高い。

それが目的でコンクルードは孤児院を開いていた。

しかしそこに愛はあった。

それはコンクルードの愛ではなく、フミヤやネロ、その他の孤児にとっての愛だった。

寒い日は暖かい毛布を買ってくれた。スープを作ってくれた。火を炊いてくれた。

暑い日もプールを作ったり、デカいアイスを作ったりもしていた。

あの孤児院は幸せだった。

コンクルードには初めから何か裏があったようだけど、彼らは幸せであるならそれはどうでもよかった。

大学にも入れさせてくれた。

入学頃だろうか、コンクルードが包み隠さなくなったのは。

元々金がなく、大学に行かせてくれるのもこの野外学習があったからだ。

あの人はただ金に蝕まれたただの普通の人だった。

だがそれでも嫌うことなく、形の無いものを、温かいものを俺たちは信じ、愛し続けた。

だから目の前でコンクルードが死んでしまった時、咄嗟に体が動いたんだ。

何かを叫びながら白衣の男に向かって走った。

死ぬ、とも覚悟した。

「プレリュードさん！」

それは気絶していたリッカだ。

彼らは知り合いなのだろうか。

「もう...やめてください」

「ちと冷めたな」

白衣の男、プレリュードは三つ目の子とどこかへと飛んでいってしまった。