箱入りの魔法使い

ジュリ

歯が進む

「見たところ、中々の手練とお見受けする」

「あ？そんな大層なモンじゃねぇ、でも巷じゃ有名だぜ。そこら辺の国を潰し回る破壊神だって。その巷すらもぶっ壊してるんだがなぁ」

「こ、コイツ...コンクルードさん、コイツはマズイです。国を破壊って情報が回ってこないのは跡形もなく消し去るからです。コイツにはそれほどの力がある！」

ネロが丁寧に解説してくれた。

「まぁ目的は達しましたし、我々は荒事を好みませんよ」

そう言ってスタスタと山道に戻ろうとしたところをプレリュードが止めた。

「遊んでけよ、今は俺が言ってんだ」

「帰さないと？」

「言わなくても分かってるじゃねぇか、痛い目見せてやるよ！」

プレリュードは腰にあったナイフを出して、コンクルードは指揮棒のような棒でそれを防いだ。

コンクルードの固有魔法は複数人いる相手に有効。

単体の敵となると、幻覚を見せても意味が無いのだ。

それに比べプレリュードの固有魔法は鎖案山子ザ·チェーン。

自由自在に鎖を操り、距離を詰めたり、また離したり、多種多様だ。

実際、固有魔法がある者対無い者のような構図になっている。

助けなきゃ...コンクルードさんを助けないと。

だが何だ？この無気力感は。

戦っているあの男が憎いはずなのに、コンクルードさんを助けたいはずなのに、体が動かない。

俺が...体を動かそうと思わない。