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停戦破棄
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停戦が決まった日から2日がたった。
両軍の間の見える位置にて停戦協定が結ばれる。
ハインリッヒは代表として調印に出発する。
「では、行ってくる。ランスロットさま、いざと言う時は軍の指揮をお願いします。」
「うむ、任してくれ。」
ハインリッヒはランスロットに軍を託し、調印に向かう。
アベルはまだ目覚めていなかった・・・
「これはよくお越しくださりました。私がサクソン国、遠征軍代表ロキと申します。」
「これは丁寧に、私はユグドラシル王国、公爵、ハインリッヒ・フォン・ローエン、此度の防衛軍の責任者です。」
両者挨拶のあと調印書にサインするため、互いに書類を読む。
そんな中、ロキが話を始める。
「ローエン公、援軍の将、アベル将軍の具合は如何か?」
「うむ、貴公の軍を相手にした疲れは中々とれんみたいでな、まだ休養させておるわ。」
「そうでしたか、是非にお会いしたかったのですが・・・今だにお目覚めにならないのですね?我が軍ではもう目覚めないのではと噂になってますよ。」
「なっ!何を言うかと思えば、戯れ言は止めていただきたいものですな。」
ハインリッヒの顔に動揺がはしる。
「くくく、その反応が全てを語っていますよ。そうですか、アベル将軍は動けないのですか・・・」
「何が言いたい?」
「いえ、今回の戦争で私が勝てなかった理由は全てアベル将軍にあると考えました。アベル将軍が動けないのであれば・・・」
ロキが手を上げ、サクソン軍に指示を出す。
「ロキ殿、まさかこの状況で停戦を覆すおつもりか!」
「騙し討ちになるので気が引けますが・・・勝てばいいんですよ。」
「くっ!後悔することになりますぞ!」
ハインリッヒは急ぎ馬に乗り町に戻ろうとする。
「ローエン公、貴方が町に入るまではお待ちしましょう。それがせめてもの情けです。」
ロキの言葉に返答もせず町に戻った。
時は少し戻り、ハインリッヒが出発した時。
「あ~よく寝た・・・やべ!寝過ごした。今日、ランスロットさまと戦いに出る約束してるのに!」
俺は慌てて飛び起きた。
グー
お腹が盛大な音をたてる。
「あれ、めちゃくちゃ腹減ってる。」
服を着替えているとメイドさんが来る。
「あっ、ちょうど良かった、何か簡単な食べ物ない?お腹すいちゃって。」
メイドさんは驚きの表情を浮かべて。
「アベルさま!みなさんアベルさまがお目覚めになりました。」
声を張り上げる、するとたくさんのメイドさんがやってきた。
「アベルさま、良かった。」
「無理はなさらず、横になってください。」
「すぐに食事を持ってきますから。」
「いやいや、今起きたばかりなのに横にならないよ、それに食事をとるならちゃんと食堂に行くからね。」
メイド達は心配そうな顔をしながら、
「本当に大丈夫なのですか?無理をなさってませんか?」
「してないよ、それよりお腹すいたから早く行こ。」
「わかりました、さあ、こちらに。」
俺はメイドに案内され食堂に席に座るとすぐにお粥が出てきた。
お粥を食べながら。
「ねぇ、なんでお粥?美味しいけど何故?」
「アベルさまは長くお休みになられていたのです。いきなり固形物はお身体に悪いと思いまして、お粥を用意さしてもらいました。」
「長くって大袈裟な、少し遅いだけでしょ?」
アベルの言葉にメイドは気付いた、
「アベルさま。アベルさまがお休みになられて3日がたっているのです。その間1度も起きられないから皆心配してたんです。」
「・・・3日?嘘でしょ?」
「本当ですよ。」
「えーーー!俺寝すぎだろ!何で・・・」
俺はふと思い出す、意識がなくなる前に聞いたスキルの声を。
「あーあれか!」
「アベルさま、心当たりが?」
「それね・・・」
俺が答えようとすると扉が開かれる。
「アベルさま!目覚められたと聞いて参りました!大丈夫ですか!」
「サイゾウさん、心配かけました。元気ですよ、今、3日寝てた事を聞いて驚いていたところです。」
「ご無事で何よりです。」
サイゾウは涙を流していた。
「アベルさん、目を覚まされましたか?」
ランスロットがやってくる。
「ランスロットさま、申し訳ありません。共に戦場にでる約束をしていながら・・・」
「なに、あのあとすぐに停戦の話になったからな、どちらにしても戦はなかったさ。」
「そうなんですか?」
「ああ、今、ハインリッヒ殿が停戦の為に両軍の間で調印している所だ。」
「へぇー・・・今、軍は誰が指揮を?」
「俺だが。」
「・・・何故此処にいるんですか!ハインリッヒさまが敵陣との間にいるのに。」
「し、しまった!アベルさんが目を覚ましたと聞いて慌てて来てしまった。」
「ほら、すぐに戻ってください。いや、俺も行きますね。」
俺が城壁に辿りついた時にはサクソン軍が動き出し、ハインリッヒが此方に逃げて来ているところだった。
「ハインリッヒさまを助けねば!サイゾウ、オウカの人は動けるか!」
「すぐに出れます!」
「ヨシモリ!お前達も行けるか!」
「仰せのままに・・・」
「オズマ!来てもらうぞ。」
「ヘイヘイ、起きた途端、人使いの荒い奴だ。」
「ジャック!お前は町を守れ!」
「かしこまりました。」
「ランスロットさまは如何になさいますか?」
「私も共に行こう、アベルさんとクツワを並べるとは光栄だ。」
「良し!出陣だ!約束を無視する蛮族どもを成敗するぞ!」
「「「おお!!アベルさま、万歳!!」」」
俺は兵士八千を率いて出陣する。
両軍の間の見える位置にて停戦協定が結ばれる。
ハインリッヒは代表として調印に出発する。
「では、行ってくる。ランスロットさま、いざと言う時は軍の指揮をお願いします。」
「うむ、任してくれ。」
ハインリッヒはランスロットに軍を託し、調印に向かう。
アベルはまだ目覚めていなかった・・・
「これはよくお越しくださりました。私がサクソン国、遠征軍代表ロキと申します。」
「これは丁寧に、私はユグドラシル王国、公爵、ハインリッヒ・フォン・ローエン、此度の防衛軍の責任者です。」
両者挨拶のあと調印書にサインするため、互いに書類を読む。
そんな中、ロキが話を始める。
「ローエン公、援軍の将、アベル将軍の具合は如何か?」
「うむ、貴公の軍を相手にした疲れは中々とれんみたいでな、まだ休養させておるわ。」
「そうでしたか、是非にお会いしたかったのですが・・・今だにお目覚めにならないのですね?我が軍ではもう目覚めないのではと噂になってますよ。」
「なっ!何を言うかと思えば、戯れ言は止めていただきたいものですな。」
ハインリッヒの顔に動揺がはしる。
「くくく、その反応が全てを語っていますよ。そうですか、アベル将軍は動けないのですか・・・」
「何が言いたい?」
「いえ、今回の戦争で私が勝てなかった理由は全てアベル将軍にあると考えました。アベル将軍が動けないのであれば・・・」
ロキが手を上げ、サクソン軍に指示を出す。
「ロキ殿、まさかこの状況で停戦を覆すおつもりか!」
「騙し討ちになるので気が引けますが・・・勝てばいいんですよ。」
「くっ!後悔することになりますぞ!」
ハインリッヒは急ぎ馬に乗り町に戻ろうとする。
「ローエン公、貴方が町に入るまではお待ちしましょう。それがせめてもの情けです。」
ロキの言葉に返答もせず町に戻った。
時は少し戻り、ハインリッヒが出発した時。
「あ~よく寝た・・・やべ!寝過ごした。今日、ランスロットさまと戦いに出る約束してるのに!」
俺は慌てて飛び起きた。
グー
お腹が盛大な音をたてる。
「あれ、めちゃくちゃ腹減ってる。」
服を着替えているとメイドさんが来る。
「あっ、ちょうど良かった、何か簡単な食べ物ない?お腹すいちゃって。」
メイドさんは驚きの表情を浮かべて。
「アベルさま!みなさんアベルさまがお目覚めになりました。」
声を張り上げる、するとたくさんのメイドさんがやってきた。
「アベルさま、良かった。」
「無理はなさらず、横になってください。」
「すぐに食事を持ってきますから。」
「いやいや、今起きたばかりなのに横にならないよ、それに食事をとるならちゃんと食堂に行くからね。」
メイド達は心配そうな顔をしながら、
「本当に大丈夫なのですか?無理をなさってませんか?」
「してないよ、それよりお腹すいたから早く行こ。」
「わかりました、さあ、こちらに。」
俺はメイドに案内され食堂に席に座るとすぐにお粥が出てきた。
お粥を食べながら。
「ねぇ、なんでお粥?美味しいけど何故?」
「アベルさまは長くお休みになられていたのです。いきなり固形物はお身体に悪いと思いまして、お粥を用意さしてもらいました。」
「長くって大袈裟な、少し遅いだけでしょ?」
アベルの言葉にメイドは気付いた、
「アベルさま。アベルさまがお休みになられて3日がたっているのです。その間1度も起きられないから皆心配してたんです。」
「・・・3日?嘘でしょ?」
「本当ですよ。」
「えーーー!俺寝すぎだろ!何で・・・」
俺はふと思い出す、意識がなくなる前に聞いたスキルの声を。
「あーあれか!」
「アベルさま、心当たりが?」
「それね・・・」
俺が答えようとすると扉が開かれる。
「アベルさま!目覚められたと聞いて参りました!大丈夫ですか!」
「サイゾウさん、心配かけました。元気ですよ、今、3日寝てた事を聞いて驚いていたところです。」
「ご無事で何よりです。」
サイゾウは涙を流していた。
「アベルさん、目を覚まされましたか?」
ランスロットがやってくる。
「ランスロットさま、申し訳ありません。共に戦場にでる約束をしていながら・・・」
「なに、あのあとすぐに停戦の話になったからな、どちらにしても戦はなかったさ。」
「そうなんですか?」
「ああ、今、ハインリッヒ殿が停戦の為に両軍の間で調印している所だ。」
「へぇー・・・今、軍は誰が指揮を?」
「俺だが。」
「・・・何故此処にいるんですか!ハインリッヒさまが敵陣との間にいるのに。」
「し、しまった!アベルさんが目を覚ましたと聞いて慌てて来てしまった。」
「ほら、すぐに戻ってください。いや、俺も行きますね。」
俺が城壁に辿りついた時にはサクソン軍が動き出し、ハインリッヒが此方に逃げて来ているところだった。
「ハインリッヒさまを助けねば!サイゾウ、オウカの人は動けるか!」
「すぐに出れます!」
「ヨシモリ!お前達も行けるか!」
「仰せのままに・・・」
「オズマ!来てもらうぞ。」
「ヘイヘイ、起きた途端、人使いの荒い奴だ。」
「ジャック!お前は町を守れ!」
「かしこまりました。」
「ランスロットさまは如何になさいますか?」
「私も共に行こう、アベルさんとクツワを並べるとは光栄だ。」
「良し!出陣だ!約束を無視する蛮族どもを成敗するぞ!」
「「「おお!!アベルさま、万歳!!」」」
俺は兵士八千を率いて出陣する。
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