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襲われる、なんで?

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「なぁ、帰っていいか?俺は別に礼が欲しくて来たわけではないし、殺されるつもりもない。そもそも、兵士に無理やり連れてこられたんだが、騎士長さんと話がついてないなら呼ばないでもらえるか?」
「そ、それは・・・」
「貴様!ユリウス様に不敬である、皆その者を取り押さえろ!」
マルクスの声に騎士が動き出す。
「ならん!止めないか!」
ユリウスが制止をかけるが騎士は俺を取り押さえようとする。
「来るなら斬るぞ。」
俺は空間収納にしまってあった剣を取り出す。
「貴様、馬脚を表したな!皆のものヤツを討ち取れ!」
騎士はマルクスの号令の元、剣を抜いた。
「ま、待て!止めないか!」
「ユリウスさまはお下がりを!皆逃がすなよ、確実に始末しろ!」
騎士が周囲を取囲み間合いを詰めてくる。

「戦う気の無いものは剣をしまえ、それ以外は斬る。」
「くくく、この数をきれるとでも?殺れ」
マルクスは笑いながら攻撃命令をくだした。

俺は神速を発動させる。検証はしていないが鑑定結果だと、息を止めて入られる時間だけ目にも止まらぬ早さで動けるらしい。

そして、俺は全員の剣を持っている腕を切り落とす。
「はあ、はあ、はあ、」
スキルの反動で息が苦しく、床に座り込んでしまったが、騎士の囲みから抜けきり、惨劇が起こる。
俺が息を始めた事により、神速の効果が切れ、俺が斬った物が落ちる。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ、腕が俺の腕が!」
剣を持っていた者は全員腕が床に転がっており広間に悲鳴が木霊する。
それはマルクスも同じだった。
「だ、誰か止血を頼む!」
他の騎士は片腕だけ切り落とした為に慌てて片手で止血を始めていたが、俺はマルクスだけ両腕を切り落としていた。
「誰か早く止血を!」
しかし、誰も動かない、先程までの求心力は失われていた。
「お、おまえのせいだ・・・おまえの命令のせいで俺達は腕を失ったんだ、どうしてくれる!」
「な、なに?」
「そうだ、ユリウスさまは止めていたのにお前が命令をくだすからだ!」
騎士達は見苦しく言い合いを始めた。

そんな中、ユリウスは一般兵士を集めてきた。
「アベルさん、御無事ですか、今お助け・・・こ、これは。」
ユリウスは部屋の様子に戸惑っていた。
「ユリウスさま、この平民が我々を攻撃してきました。どうか重い罰を!」
マルクスはユリウスの元に行き懇願するが・・・
「お前は私の命令を無視し、私の恩人に危害を加えようとしたのだろ?何故お前の言うことを聞かねばならん、兵士よ、此処にいる騎士を全員捕縛し、牢にぶちこんでおけ!」
「はっ!」
兵士はユリウスの命令の元に騎士を全員縛り上げ、牢に連行していった。

「アベルさん、誠に申し訳ありません。当家の失態にございます。」
ユリウスは深く頭を下げる。
「いえ、お顔をお上げください。悪いのはあの騎士達でしょう。願わくばこの件で私が罪に問われないようにだけしてもらえませんか?」
「それは勿論です。あの者達は公爵家に逆らった反逆者として扱う事を約束いたします。」
「そうですか、ならそれで充分にございます。では、私はこれでおいとまさせてもらいます。」
「ど、どうか御待ちを、このような失態をする家にいたくないのは解りますが、どうか、挽回の余地をいただきたい。」
「しかし、騎士を大量に斬った者がいるべきではないのでは?」
「あの者は反逆者です。斬ったことに何の問題があるのですか、それよりは斬ってくれた事で公爵が助かったのです。どうか、暫しの滞在をお願いします。」
ユリウスが懇願してくる。
身分のあるかたの断り方を考えていると、
ユミナが震えながら俺の手を握り・・・
「アベルさま、どうか少しでいいんです。一緒にいて頂けませんか。」
「ユミナさま?」
「お願いします。まさか、騎士が兄さまの言うことを聞かずに反乱を起こすなんて・・・一体この屋敷で誰を信じたらいいのか・・・私が今信じれるのはアベルさまだけなんです。どうかお願いします。」
俺の手を握る力が増す。
「わかりました。ユリウスさま、ユミナさま、暫く滞在さしていただきます。」
「ありがとうございます。現在父は出掛けておりますが改めて父からも謝罪があると思います。」
「誰か、アベルさんに客室を用意しろ、最大限のもてなしを行うように。」
メイドが頭を下げ、俺を部屋に案内してくれる。
ユミナは手を握ったまま、ついてきたが・・・
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