またですか

めい

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第一章 千代

救世主

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『千代・・・ちよ、返事をして』

遠くで自分を呼んでいる声がする

『千代、しっかりして……』
 
母の泣き声

『ねぇーちゃん、起きてよ、なぁ……』

大樹の声も





「もぉー、ダメでしょ。家族に心配をかけては………」
真っ白い空間に腕組をしている。
黒髪にすみれ色の瞳の美女がいる。

「あなたは?」

「あら、わかんない?私はあなたよ」

妖艶な笑いを浮かべて、クルっとその場で回る。
スカートが広がり、キラキラと光を発する。

「もしかして?」

「はい、リリアーヌ・フランドロンと申します。はじめまして??」

美しいカティシーを披露してくれた。

「ごめんなさいね。本当は、出てくるつもりもなかったの。あなたの中にずっと微睡んでたのだけど………
あー、塚本くん??あれと同じイヤな経験をしていてね。ついつい本音というか、自分が外に出ちゃったのよね。」

そういえば、最初に思い出したのが

「「またか」」

声がハモってしまった。

リリアーヌが、吹き出す。

「あははは、ホントそれなのよ!!思わず出ちゃったのよね。
で、引っ込もうとは思ったのだけど……
お父さんの病気ね。あれが心配で魔法まで出しちゃったの。」

そう言うと、真剣な顔に戻った。

「私の父も同じように、頭に黒いモヤモヤを感じてたんだけど、それが何かわからなかったし、治すこともできなくてね。
で、冬の寒い日に玄関から帰ってきて、倒れたと思ったら、そのまま亡くなってしまったの。
だから、ごめんね。この世にはない力だって知ってたのに、どうしても伝えたくて」

「ありがとう!!」

悲しい顔になるリリアーヌ。

ごめんなさい。
結局、私はいつも自分のことばかり。

そう、お父さんが助かった。

この事実が何より大事だったんだ!!

「私こそ……ごめんなさい。
お父さんを助けてくれて。ありがとう。」

リリアーヌの手を両手で握る。

「千代、ごめんなさい。伝えておくね。
魔法の力。一度感知してしまって、使えるようになってしまたから、封印することは、私にも出来ないの………
本当にごめんなさい………」

「私の方こそ、酷いこと思ってごめんなさ



「ねぇ、そろそろいいかな??
お互い謝ってばかりで先に進まないんだけど。」

急に男性の声が私の謝罪を遮った。

声の方を向くと、男性が立ってる。

人目をひく容姿だが、リリアーヌとは違い日本人?アジア系だ。

「千代、もう戻らないと、みんな大変そうだよ。」

彼は、そう言うとリリアーヌの手を握っていた私の手ごと大きな手で包み込んできた。

『千代……起きて……』

父の私を呼ぶ声が聞こえてくる。

「「あっ」」

リリアーヌと、また声がダブル

そして、お互い見つめあい

「リリアーヌ、今までありがとう。これからも、よろしくね」

「千代。ありがとう。いつも一緒にいるよ


彼女はそう言うとスーッと消えた。

いや、私の中に染み込んだ。

「ほら、ボゥーとしてないで、行くよ。
わかる??声がする方。あっちに意識を持っていくんだ。
そう、上手だ………」

「ありがとう。あなたは??誰?」

声の方に意識が引っ張られながら尋ねる。

「オレ?うーん。
もう少ししたら、会えるし………
夏休み、楽しみにしててよ。じゃ」

そこまで言って、彼も消えた。

消えたのを見届けると、
なぜか安心できた。
そして引っ張られる力に
抗わず、身を任せた。


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