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エピクロスと双葉
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初めまして、私の名前は双葉と言います。とある探偵事務所でちょっと変わった探偵をしています。今日もいつも通りちょっと変わった依頼のためにこの「メゾン・ド・エシクス」に同期と一緒にやって来ました。
「双、遅い。置いてくよ。」
この無表情で淡々としゃべるのが私の相棒、空です。空はショートカットを雑に伸ばしたような髪にすらっとした白い手足、とにかく整っているとしか形容しがたい超絶美人で性別不詳。いつも全身黒くてストレートな物言いをする空ですが、困った時は私を助けてくれて、分かりにくいけど笑うと可愛い私の大事な相棒なのです。
「双?もういい、置いてく。」
「うわぁ、待ってください、くーちゃん。」
あ、私は空のことを”くーちゃん”と呼んでいます。呼び始めた頃はやめろと睨まれもしたものですが、今では完全に諦められました。粘り勝ちです。対抗してなのか分かりませんがその時くらいから私のことを”双”と呼ぶようになりました。あだ名度同士で呼び合うって、親密度高くなったみたいで嬉しいです。
「くーちゃん、さっきから私を置いていくかのようにスタスタ歩いてますけど、私には目的地が見えないのですが...。」
「そりゃそう。結界みたいなの張ってあるし。」
「結界!?」
話が遅れてしまいましたね。今日、というか長期任務になりそうですが、今回の依頼は『”ソートスキル”と呼ばれる異能力を持つ人が暮らしているメゾンの調査』です。この「メゾン・ド・エシクス」に住む人たちは皆ソートスキルを保有し、事件に首を突っ込んだり、巻き込まれたりしているそうで、私たちの所属する探偵事務所にそれ関連の案件が立て続けに舞い込むのです。さすがにしびれを切らした社長が、メゾンの住民がどんな奴らなのか調査してこいと申し付けたのが今回の依頼です。その調査員に私とくーちゃんが選ばれたのには理由があるのですがその前に、行って来いと言われた住所に来てみるとそこに建物なんてものはなく、実は結界が張られていて建物が見えていないだけという事実で、すでに私はお腹いっぱいです。
「とりあえず行く。」
「行くって...。結界があるならそれこそ入れないじゃないですか。」
「調査の許可は取ってんだから普通に入ればいい。」
「私結界こじ開けて中に入る方法なんて検索したこともないんですけど...普通ってなんですか?」
「結界の入り口を開けて入る、これが入り方。念のため手を繋いでおく。」
くーちゃんはそう言うと私の手を左手で握り、おもむろに右手をまっすぐ前に突き出すと、まるで掌紋認証するかのようにその場で手を止めました。そして、
「ただいま、ドアを開けて」
と唱えると、目の前が目を開けられないほど眩しく光り、私は思わず目を閉じていました。何秒ほど経ったのでしょうか、私が次に目を開けたのはくーちゃんが私のまぶたを強引に開けようとしたときでした。
「うわぁ!くーちゃん、人間のまぶたは強引に開けてはダメです!繊細なんですから!」
「呼んでも目開けない双が悪い。それより着いた。」
「え?」
くーちゃんの言葉に私は目の前に広がるその空間を初めて目にしました。そこにあったのはとにかく綺麗で大きな建物。よくドラマやアニメで見る”秘密企業のアジト”って感じの雰囲気があります。でもアジトと呼ぶには緑がいっぱいで暮らしやすそうな印象も。とにかくそこに広がるのは秘密基地の様にわくわくが広がる建物でした。
「うわぁぁ!」
「そんなに顔キラキラさせるほどのもの?」
「君たちが探偵事務所の人?」
建物や庭の風景にわくわくしていると、背後から急に話しかけられてびっくりしてしまいました。驚いて振り返るとそこにいたのは身長155㎝くらいの私よりさらに小さい女の子。長い黒髪を無造作に伸ばしていて、大きめの白いシャツの下に黒タイツを履いているだけというラフすぎる格好をしている可愛らしい子です。
「はい、私は双葉と言います。よろしくお願いしますね。えっとこの人は...」
「知ってる。エピクロスでしょ?まさか戻ってくるとは。お帰り、エピ~。」
「...エピはやめて。」
そう、何を隠そう実はくーちゃんはこのメゾンの元住民なのです。事情があって今はメゾンを出て探偵事務所の社宅に住んでいますが、元住民と言うこともあり、内部をより詳しく調べられるだろうということでこの以来の調査員として白羽の矢が立ったのでした。ちなみに私はくーちゃんの相棒なので同行させられました。巻き添えです。
「エピはエピでしょ?久しぶり~。私ソクラテス。覚えてる?いえ~い。」
「覚えてるから。やめて恥ずかしいから。」
くーちゃんはこのメゾンにいた時はどうやら”エピクロス”という名前だったようです。それにしてもここまで顔を赤くして照れ隠しに手で顔を覆うくーちゃんは久々に見ました。珍しいので写真でも撮っておきましょうか。
「やめろって...!~~!異能力『隠れて生きよ』。」
「あ、消えた。」
くーちゃんはメゾンの元住民なので、現住民同様ソートスキルが使えます。能力は人それぞれだそうですが、くーちゃんの場合は”姿を消す”もの。いわゆる透明人間ですね、姿は見えないけれどそこにはいます。
「遊び過ぎたかな...。まあいいや、案内するから着いてきて。エピも、見えないけどいるんだよね。メゾンの人には探偵さんが調査しに来るよって言うのは回覧板で伝えてあるけど、もしかしたら読んでない人もいるかも。...頑張って。」
「分かりました、頑張ります!」
「うん。」
ソクラテスと名乗ったのんびりした口調で話す彼女は私たちをメゾンに案内してくれるようです。これからここに住む何十人の方一人一人を調査するのです。元住人現相棒のくーちゃんと一緒に頑張りますっ!
「双、遅い。置いてくよ。」
この無表情で淡々としゃべるのが私の相棒、空です。空はショートカットを雑に伸ばしたような髪にすらっとした白い手足、とにかく整っているとしか形容しがたい超絶美人で性別不詳。いつも全身黒くてストレートな物言いをする空ですが、困った時は私を助けてくれて、分かりにくいけど笑うと可愛い私の大事な相棒なのです。
「双?もういい、置いてく。」
「うわぁ、待ってください、くーちゃん。」
あ、私は空のことを”くーちゃん”と呼んでいます。呼び始めた頃はやめろと睨まれもしたものですが、今では完全に諦められました。粘り勝ちです。対抗してなのか分かりませんがその時くらいから私のことを”双”と呼ぶようになりました。あだ名度同士で呼び合うって、親密度高くなったみたいで嬉しいです。
「くーちゃん、さっきから私を置いていくかのようにスタスタ歩いてますけど、私には目的地が見えないのですが...。」
「そりゃそう。結界みたいなの張ってあるし。」
「結界!?」
話が遅れてしまいましたね。今日、というか長期任務になりそうですが、今回の依頼は『”ソートスキル”と呼ばれる異能力を持つ人が暮らしているメゾンの調査』です。この「メゾン・ド・エシクス」に住む人たちは皆ソートスキルを保有し、事件に首を突っ込んだり、巻き込まれたりしているそうで、私たちの所属する探偵事務所にそれ関連の案件が立て続けに舞い込むのです。さすがにしびれを切らした社長が、メゾンの住民がどんな奴らなのか調査してこいと申し付けたのが今回の依頼です。その調査員に私とくーちゃんが選ばれたのには理由があるのですがその前に、行って来いと言われた住所に来てみるとそこに建物なんてものはなく、実は結界が張られていて建物が見えていないだけという事実で、すでに私はお腹いっぱいです。
「とりあえず行く。」
「行くって...。結界があるならそれこそ入れないじゃないですか。」
「調査の許可は取ってんだから普通に入ればいい。」
「私結界こじ開けて中に入る方法なんて検索したこともないんですけど...普通ってなんですか?」
「結界の入り口を開けて入る、これが入り方。念のため手を繋いでおく。」
くーちゃんはそう言うと私の手を左手で握り、おもむろに右手をまっすぐ前に突き出すと、まるで掌紋認証するかのようにその場で手を止めました。そして、
「ただいま、ドアを開けて」
と唱えると、目の前が目を開けられないほど眩しく光り、私は思わず目を閉じていました。何秒ほど経ったのでしょうか、私が次に目を開けたのはくーちゃんが私のまぶたを強引に開けようとしたときでした。
「うわぁ!くーちゃん、人間のまぶたは強引に開けてはダメです!繊細なんですから!」
「呼んでも目開けない双が悪い。それより着いた。」
「え?」
くーちゃんの言葉に私は目の前に広がるその空間を初めて目にしました。そこにあったのはとにかく綺麗で大きな建物。よくドラマやアニメで見る”秘密企業のアジト”って感じの雰囲気があります。でもアジトと呼ぶには緑がいっぱいで暮らしやすそうな印象も。とにかくそこに広がるのは秘密基地の様にわくわくが広がる建物でした。
「うわぁぁ!」
「そんなに顔キラキラさせるほどのもの?」
「君たちが探偵事務所の人?」
建物や庭の風景にわくわくしていると、背後から急に話しかけられてびっくりしてしまいました。驚いて振り返るとそこにいたのは身長155㎝くらいの私よりさらに小さい女の子。長い黒髪を無造作に伸ばしていて、大きめの白いシャツの下に黒タイツを履いているだけというラフすぎる格好をしている可愛らしい子です。
「はい、私は双葉と言います。よろしくお願いしますね。えっとこの人は...」
「知ってる。エピクロスでしょ?まさか戻ってくるとは。お帰り、エピ~。」
「...エピはやめて。」
そう、何を隠そう実はくーちゃんはこのメゾンの元住民なのです。事情があって今はメゾンを出て探偵事務所の社宅に住んでいますが、元住民と言うこともあり、内部をより詳しく調べられるだろうということでこの以来の調査員として白羽の矢が立ったのでした。ちなみに私はくーちゃんの相棒なので同行させられました。巻き添えです。
「エピはエピでしょ?久しぶり~。私ソクラテス。覚えてる?いえ~い。」
「覚えてるから。やめて恥ずかしいから。」
くーちゃんはこのメゾンにいた時はどうやら”エピクロス”という名前だったようです。それにしてもここまで顔を赤くして照れ隠しに手で顔を覆うくーちゃんは久々に見ました。珍しいので写真でも撮っておきましょうか。
「やめろって...!~~!異能力『隠れて生きよ』。」
「あ、消えた。」
くーちゃんはメゾンの元住民なので、現住民同様ソートスキルが使えます。能力は人それぞれだそうですが、くーちゃんの場合は”姿を消す”もの。いわゆる透明人間ですね、姿は見えないけれどそこにはいます。
「遊び過ぎたかな...。まあいいや、案内するから着いてきて。エピも、見えないけどいるんだよね。メゾンの人には探偵さんが調査しに来るよって言うのは回覧板で伝えてあるけど、もしかしたら読んでない人もいるかも。...頑張って。」
「分かりました、頑張ります!」
「うん。」
ソクラテスと名乗ったのんびりした口調で話す彼女は私たちをメゾンに案内してくれるようです。これからここに住む何十人の方一人一人を調査するのです。元住人現相棒のくーちゃんと一緒に頑張りますっ!
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