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手掛かりは人との親交
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今日のシャーロックパーティーの集合場所は大学キャンパス内の売店。売店と言われても店の中なのか店の前なのかよく分からなかったのでとりあえず店の中に入って驚いた。先輩がレジ前に立っていたからだ。
「先輩?今日の集合場所って…?」
「ああ、羽矢くん。ここであってるよ。今日はね、ボランティアで売店のおばちゃんのお手伝いしてるの。」
「本当に助かったわ~!ありがとうね、要さん。」
このシャーロックパーティーは学校非公認のサークルだからツテもなければ明確な活動内容もない。あくまで先輩の趣味を追い求めたものなのでそれは問題ないんだけど、先輩は常に謎を追い求めてる。そのために色々なところに顔を出したりたまにこうやってボランティアに参加したりで人脈を広げてるらしい。
「ふふん、これはいつものように困ってる人が居たから人助けをしてた訳なんやけど、その中で!私は有益な情報を手に入れたんよ!羽矢くん!」
「有益な情報?とは?」
「もちろん謎だよー!」
先輩は嬉しそうに僕にピースサインを向ける。嬉しそうに笑うその顔が可愛くてつい見惚れてしまう。と、ずっと先輩を見ていたい気持ちはあるけどグッと堪えて話を進める。
「どんな謎ですか?」
「それはおばちゃんから話してもらおうかな。」
「私でいいのかい?なら…コホン。実は最近ね、割り箸がすごく売れるの。」
「割り箸、ですか?」
確かに売店で売れるものが偏っていれば違和感は覚えるかもしれないけど、割り箸は結構実用的なものだし売れるのも納得がいく。そんなに謎になるような事だろうか。
「そうなのよー、しかも50本入りとか大容量のやつ!ご飯食べるためとかで買うなら分かるんだけど、そんなにいる?って量のセットのやつが売れるの。」
「うーん…友達の分もまとめて買うから、とかですかね。」
「いやそれがね、数人のグループの子たち全員が50本セット買ったり、とかなのよー。しかもそれが数グループ。」
「しかもこの大学キャンパスの食堂は一食食べる時に自由に使っていい割り箸が置いてあるんよ。つまり、ご飯を食べる時用に割り箸を買う必要は一切無いんよ。」
「じゃあそもそもなんでそんな大容量の割り箸が売ってるんですか?」
「いやねー、要さんが言ったでしょ、食堂に割り箸が置いてあるって。それを用意する側の人がここで買うのよ。」
「なるほど…。確かにそれは謎ですね…。」
「でしょ!?」
割り箸を買う目的といえば食事が1番に思いつくけど、大学キャンパスの食堂には備え付けの割り箸が元々あるから買う必要は無い。買う必要がないのにわざわざ大容量のものを買う生徒が何人もいるというのは確かに不可解だ。これは推理で真実を導けるだろうか。
「羽矢くんはこの謎解ける?」
「いや僕には無理ですよ。先輩は分かりました?」
「んー…さすがの私も情報が足りないねぇ…。おばちゃん、その割り箸買った人ってどんな人達?共通点とかある?」
「そうねぇ、ほとんど女の子よ。」
「ほとんどってことは男の子もいたの?」
「いたわよ。割り箸買ったのは全部で10人くらいいたかしら?もうちょっと居たかもしれないけど…男の子は1人だけ買ってたわ。」
「んー…女子だけって訳じゃないのかー…。」
さすがの先輩もちょっと手こずってるみたいだ。僕にはとっかかりすら見つけられないけど、今回の謎はそれ程難しいってことか。なにか僕もヒントになれたらいいのに、と僕は売店のおばさんにもう少し質問してみる。
「他になにか共通点とかないですか?」
「さぁー…制服じゃないから大学生よね。大学生の女の子ってくらいしか…。」
「そうですか…。」
余談だけど、この学園の大学キャンパスは幼小中高等部全ての生徒が出入り自由だから食堂もこの売店も当然全生徒が利用する。それぞれのキャンパスに食堂も売店もあるけど、なんだかんだ1番広い大学キャンパスに人は集まる。小等部から高等部までは制服が決められていて、大学生だけ私服だからその辺の装いをみて学年を見分けている。
「あ!そうだ、何となく思った事なんだけど。」
「なになに!?おばちゃん!」
「爪がね、短いなーって思ったの。」
「爪?」
「そうそう。大学生の女子って大体伸ばして、ネイル?をしてたりするじゃない。でも割り箸買った子達はみんな爪が綺麗に切られてたの。1人くらいは長い子いたかもしれないけど…これじゃ参考にはならないかしら。」
「いや、おばちゃんいい情報だよ。」
先輩はそう言うとニヤッと笑った。爪が短いっていう情報だけで何が掴めたんだろう。僕には分からないけど、先輩は確信めいたものがあるんだろう。
先輩が何か閃いてからさっそく真実を求めに行くのかと思っていたら、先輩は真面目にボランティアを最後までやり遂げてからとある場所に向かいだした。先輩のボランティアが終わるまで暫く時間があったから僕も色々考えてみたけど全然分からなかった。ここまで焦らされるとモヤモヤしてくるので、僕も一刻も早く真相が聞きたい。とはいえ先輩が何も言わずに歩き出したので「早く真実を話してくれ」なんて野暮なことは言わずに着いて行くと、先輩は大学キャンパスの乳児保健実習室という部屋の前で足を止めた。
「先輩、なんですかこの部屋。」
「ここは大学キャンパスの保育学科の人が使う実習室だよ。乳児保健実習室。その専門の人しか使わない部屋だけどね。この部屋にいるってメールもらったんよね。ミカ先輩ー?」
先輩は恐らく先輩にあたるであろう人の名前を呼びながらガラッと扉を開けた。そんな先輩の声に反応して、1人の女性が扉前までやってきた。
「夕陽ちゃーん、いらっしゃいです。」
「ミカ先輩!お久しぶりですー!急にすみません。」
「いいですよ~!それで?私に確認したいことがあるんでしだっけ?なんでしょうか?」
話の流れ的にこの女性は先輩のさらに先輩に当たる人で、今回の謎のキーになる何かを知っているらしい。どうして割り箸の謎がこの人に繋がるのかは分からないけど、僕はとりあえず会釈だけして話を聞くことに集中することにする。
「最近売店のおばちゃんが、割り箸がすごく売れるって不思議に思ってるみたいなんですよ。で、私はその謎の真相は先輩たちにあると踏んでまして。」
「おお~、さすが名探偵の姪っ子ちゃんですね。多分それは私たちが深く関わってるやつで合ってますよ。」
「やっぱり。」
先輩は楽しそうな笑みを浮かべる。僕は先輩たちのやり取りの意図をイマイチ理解出来てないので、ここで先輩の話に入ってみる。
「先輩、やっぱりってどういうことですか?」
「ふふん。じゃあここで個人的ヒント。共通点はほとんど女性で爪が整えられてるってこと。」
「…?それだけじゃ僕にはさっぱりなんですけど。」
「10人単位で全員爪が整えられてるってことは結構限られてくると思うんよ。医療系とか、美容系とかの科の人かなーって。加えて男女比が1:9くらいの割合で女子が多いとなれば他の選択肢が無いわけじゃないけど可能性が高いのは保育系。」
「なるほど、じゃあこの方はその…」
「うん。初めまして、暁学園大学教育学部保育学科の覚方ミカです。保育士になるべく勉強中。よろしくです。」
「あ、はいよろしくお願いします。」
覚方ミカさんは朗らかに笑いながら僕に自己紹介をしてくれる。この人は先輩のさらに先輩あたることになると思うのだけど、ずっと敬語で話してるのはとても丁寧な人なんだろうか。紹介されたからと言う訳では無いけれど、無邪気で人の良いその笑顔は保育士にとても向いていると思う。直感でそう思った。
「ミカ先輩、早速確信をつくこと聞いちゃうけど、近々何か制作課題が出てるんじゃない?」
「うん、出てます。童話を題材にするペープサートを各グループで考えなさいってやつですね。」
「ペープサート?」
「えーっと、人形劇というか…。なんて言えばいいですかね。棒の先に人形がついてて、それを動かして物語を進行させるあれです。」
「あ、なるほど!だから割り箸なんですね。」
ここまでヒントが出ればさすがの僕でも真相に近づける。つまり、保育学科の人は今ペープサートを作る課題が出てて、そのペープサートを作るために割り箸が必要だったんだ。分かってみればシンプルな話だ。課題として出されているなら何人もの人が大量に割り箸が必要になるんだから、そりゃあ割り箸も売れるはずだ。
「ちなみに、ミカ先輩とは前に同じように制作課題が出てた時にちょっとお手伝いをすることになったのが出会いなんよ。それからもちょくちょくお話したりお手伝いしたりしてる。」
「そうなんですね。本当に先輩の人脈は広いなぁ。というか、そうだろうなと思っていましたけど、ミカさんは先輩のさらに先輩にあたるわけですよね。」
「うん?そうだけど?」
「いえあの、ずっと丁寧な敬語で話されてるので…。」
「あぁ、先輩はね、コッテコテの関西弁なんよ。それが恥ずかしいから咄嗟に出ちゃわないように敬語で話してるんだって。つねに方言出ちゃう私からしたらちょっと分かんないけどね。」
「夕陽ちゃんみたいに可愛い方言じゃないからですよ。まあ何はともあれこれで謎は全て解けた、のかな?」
割り箸の謎は無事に解けた。今回も先輩が綺麗に解決したわけだけど、先輩にはミカさんという以前から交友のある知り合いがいた事が今回の謎の解決に大きく関わっていると思う。専門的なことはその道に踏み入っている人にしか分からない。だからこそそういった色々な分野に興じている人との親交が色々な物事への解決に繋がるんだ。
「はい、ミカ先輩のお陰で謎が解けてスッキリです~!」
「なら良かった。そうだ、せっかくならそのペープサート、見てかない?練習中だったの。」
「いいんですか?それならせっかくやし!羽矢くん、見ていこうよ。」
「先輩がそう言うなら。」
この後、覚方ミカさんは数人のグループで『おおきなかぶ』のペープサートを披露してくれた。割り箸の先に登場人物のイラストが貼られた可愛らしい人形を使って表現力たっぷりに進んでいくそのお話は、童心を思い出させてくれてとても楽しかった。そして僕の横で同じように笑顔でおおきなかぶに聞き入っている先輩の表情は、無邪気な子どもみたいだった。
「先輩?今日の集合場所って…?」
「ああ、羽矢くん。ここであってるよ。今日はね、ボランティアで売店のおばちゃんのお手伝いしてるの。」
「本当に助かったわ~!ありがとうね、要さん。」
このシャーロックパーティーは学校非公認のサークルだからツテもなければ明確な活動内容もない。あくまで先輩の趣味を追い求めたものなのでそれは問題ないんだけど、先輩は常に謎を追い求めてる。そのために色々なところに顔を出したりたまにこうやってボランティアに参加したりで人脈を広げてるらしい。
「ふふん、これはいつものように困ってる人が居たから人助けをしてた訳なんやけど、その中で!私は有益な情報を手に入れたんよ!羽矢くん!」
「有益な情報?とは?」
「もちろん謎だよー!」
先輩は嬉しそうに僕にピースサインを向ける。嬉しそうに笑うその顔が可愛くてつい見惚れてしまう。と、ずっと先輩を見ていたい気持ちはあるけどグッと堪えて話を進める。
「どんな謎ですか?」
「それはおばちゃんから話してもらおうかな。」
「私でいいのかい?なら…コホン。実は最近ね、割り箸がすごく売れるの。」
「割り箸、ですか?」
確かに売店で売れるものが偏っていれば違和感は覚えるかもしれないけど、割り箸は結構実用的なものだし売れるのも納得がいく。そんなに謎になるような事だろうか。
「そうなのよー、しかも50本入りとか大容量のやつ!ご飯食べるためとかで買うなら分かるんだけど、そんなにいる?って量のセットのやつが売れるの。」
「うーん…友達の分もまとめて買うから、とかですかね。」
「いやそれがね、数人のグループの子たち全員が50本セット買ったり、とかなのよー。しかもそれが数グループ。」
「しかもこの大学キャンパスの食堂は一食食べる時に自由に使っていい割り箸が置いてあるんよ。つまり、ご飯を食べる時用に割り箸を買う必要は一切無いんよ。」
「じゃあそもそもなんでそんな大容量の割り箸が売ってるんですか?」
「いやねー、要さんが言ったでしょ、食堂に割り箸が置いてあるって。それを用意する側の人がここで買うのよ。」
「なるほど…。確かにそれは謎ですね…。」
「でしょ!?」
割り箸を買う目的といえば食事が1番に思いつくけど、大学キャンパスの食堂には備え付けの割り箸が元々あるから買う必要は無い。買う必要がないのにわざわざ大容量のものを買う生徒が何人もいるというのは確かに不可解だ。これは推理で真実を導けるだろうか。
「羽矢くんはこの謎解ける?」
「いや僕には無理ですよ。先輩は分かりました?」
「んー…さすがの私も情報が足りないねぇ…。おばちゃん、その割り箸買った人ってどんな人達?共通点とかある?」
「そうねぇ、ほとんど女の子よ。」
「ほとんどってことは男の子もいたの?」
「いたわよ。割り箸買ったのは全部で10人くらいいたかしら?もうちょっと居たかもしれないけど…男の子は1人だけ買ってたわ。」
「んー…女子だけって訳じゃないのかー…。」
さすがの先輩もちょっと手こずってるみたいだ。僕にはとっかかりすら見つけられないけど、今回の謎はそれ程難しいってことか。なにか僕もヒントになれたらいいのに、と僕は売店のおばさんにもう少し質問してみる。
「他になにか共通点とかないですか?」
「さぁー…制服じゃないから大学生よね。大学生の女の子ってくらいしか…。」
「そうですか…。」
余談だけど、この学園の大学キャンパスは幼小中高等部全ての生徒が出入り自由だから食堂もこの売店も当然全生徒が利用する。それぞれのキャンパスに食堂も売店もあるけど、なんだかんだ1番広い大学キャンパスに人は集まる。小等部から高等部までは制服が決められていて、大学生だけ私服だからその辺の装いをみて学年を見分けている。
「あ!そうだ、何となく思った事なんだけど。」
「なになに!?おばちゃん!」
「爪がね、短いなーって思ったの。」
「爪?」
「そうそう。大学生の女子って大体伸ばして、ネイル?をしてたりするじゃない。でも割り箸買った子達はみんな爪が綺麗に切られてたの。1人くらいは長い子いたかもしれないけど…これじゃ参考にはならないかしら。」
「いや、おばちゃんいい情報だよ。」
先輩はそう言うとニヤッと笑った。爪が短いっていう情報だけで何が掴めたんだろう。僕には分からないけど、先輩は確信めいたものがあるんだろう。
先輩が何か閃いてからさっそく真実を求めに行くのかと思っていたら、先輩は真面目にボランティアを最後までやり遂げてからとある場所に向かいだした。先輩のボランティアが終わるまで暫く時間があったから僕も色々考えてみたけど全然分からなかった。ここまで焦らされるとモヤモヤしてくるので、僕も一刻も早く真相が聞きたい。とはいえ先輩が何も言わずに歩き出したので「早く真実を話してくれ」なんて野暮なことは言わずに着いて行くと、先輩は大学キャンパスの乳児保健実習室という部屋の前で足を止めた。
「先輩、なんですかこの部屋。」
「ここは大学キャンパスの保育学科の人が使う実習室だよ。乳児保健実習室。その専門の人しか使わない部屋だけどね。この部屋にいるってメールもらったんよね。ミカ先輩ー?」
先輩は恐らく先輩にあたるであろう人の名前を呼びながらガラッと扉を開けた。そんな先輩の声に反応して、1人の女性が扉前までやってきた。
「夕陽ちゃーん、いらっしゃいです。」
「ミカ先輩!お久しぶりですー!急にすみません。」
「いいですよ~!それで?私に確認したいことがあるんでしだっけ?なんでしょうか?」
話の流れ的にこの女性は先輩のさらに先輩に当たる人で、今回の謎のキーになる何かを知っているらしい。どうして割り箸の謎がこの人に繋がるのかは分からないけど、僕はとりあえず会釈だけして話を聞くことに集中することにする。
「最近売店のおばちゃんが、割り箸がすごく売れるって不思議に思ってるみたいなんですよ。で、私はその謎の真相は先輩たちにあると踏んでまして。」
「おお~、さすが名探偵の姪っ子ちゃんですね。多分それは私たちが深く関わってるやつで合ってますよ。」
「やっぱり。」
先輩は楽しそうな笑みを浮かべる。僕は先輩たちのやり取りの意図をイマイチ理解出来てないので、ここで先輩の話に入ってみる。
「先輩、やっぱりってどういうことですか?」
「ふふん。じゃあここで個人的ヒント。共通点はほとんど女性で爪が整えられてるってこと。」
「…?それだけじゃ僕にはさっぱりなんですけど。」
「10人単位で全員爪が整えられてるってことは結構限られてくると思うんよ。医療系とか、美容系とかの科の人かなーって。加えて男女比が1:9くらいの割合で女子が多いとなれば他の選択肢が無いわけじゃないけど可能性が高いのは保育系。」
「なるほど、じゃあこの方はその…」
「うん。初めまして、暁学園大学教育学部保育学科の覚方ミカです。保育士になるべく勉強中。よろしくです。」
「あ、はいよろしくお願いします。」
覚方ミカさんは朗らかに笑いながら僕に自己紹介をしてくれる。この人は先輩のさらに先輩あたることになると思うのだけど、ずっと敬語で話してるのはとても丁寧な人なんだろうか。紹介されたからと言う訳では無いけれど、無邪気で人の良いその笑顔は保育士にとても向いていると思う。直感でそう思った。
「ミカ先輩、早速確信をつくこと聞いちゃうけど、近々何か制作課題が出てるんじゃない?」
「うん、出てます。童話を題材にするペープサートを各グループで考えなさいってやつですね。」
「ペープサート?」
「えーっと、人形劇というか…。なんて言えばいいですかね。棒の先に人形がついてて、それを動かして物語を進行させるあれです。」
「あ、なるほど!だから割り箸なんですね。」
ここまでヒントが出ればさすがの僕でも真相に近づける。つまり、保育学科の人は今ペープサートを作る課題が出てて、そのペープサートを作るために割り箸が必要だったんだ。分かってみればシンプルな話だ。課題として出されているなら何人もの人が大量に割り箸が必要になるんだから、そりゃあ割り箸も売れるはずだ。
「ちなみに、ミカ先輩とは前に同じように制作課題が出てた時にちょっとお手伝いをすることになったのが出会いなんよ。それからもちょくちょくお話したりお手伝いしたりしてる。」
「そうなんですね。本当に先輩の人脈は広いなぁ。というか、そうだろうなと思っていましたけど、ミカさんは先輩のさらに先輩にあたるわけですよね。」
「うん?そうだけど?」
「いえあの、ずっと丁寧な敬語で話されてるので…。」
「あぁ、先輩はね、コッテコテの関西弁なんよ。それが恥ずかしいから咄嗟に出ちゃわないように敬語で話してるんだって。つねに方言出ちゃう私からしたらちょっと分かんないけどね。」
「夕陽ちゃんみたいに可愛い方言じゃないからですよ。まあ何はともあれこれで謎は全て解けた、のかな?」
割り箸の謎は無事に解けた。今回も先輩が綺麗に解決したわけだけど、先輩にはミカさんという以前から交友のある知り合いがいた事が今回の謎の解決に大きく関わっていると思う。専門的なことはその道に踏み入っている人にしか分からない。だからこそそういった色々な分野に興じている人との親交が色々な物事への解決に繋がるんだ。
「はい、ミカ先輩のお陰で謎が解けてスッキリです~!」
「なら良かった。そうだ、せっかくならそのペープサート、見てかない?練習中だったの。」
「いいんですか?それならせっかくやし!羽矢くん、見ていこうよ。」
「先輩がそう言うなら。」
この後、覚方ミカさんは数人のグループで『おおきなかぶ』のペープサートを披露してくれた。割り箸の先に登場人物のイラストが貼られた可愛らしい人形を使って表現力たっぷりに進んでいくそのお話は、童心を思い出させてくれてとても楽しかった。そして僕の横で同じように笑顔でおおきなかぶに聞き入っている先輩の表情は、無邪気な子どもみたいだった。
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